水の表情

水が見せるさまざまな表情は、川の魅力のひとつである。

早朝の水面に白く立った川霧。真夏の太陽を受けキラキラと光る川面。秋の快晴に真っ青に冴える水面。早瀬を駆け下り、波立つ水面。本当に水の表情は豊かである。

河川の水面は風や流れにより波が生じ、水平でないのが一般的である。波があると水面は局所的に傾いている。したがって、水面の角度はいろいろで、空を映す場合もあれば、水の中が見える場合もある。これが水面の見え方を複雑にまた美しくしている要因の一つである。水がキラキラと光るのは、水面が波立ち、太陽を反射する小さな水面があちらこちらに出来るためである。小さな子供たちが、競技場のスタンドに集まり、手に小さな鏡を持って頭上にかざし、それを反対側から眺めている状況を想像してみればよい。いくつかの鏡は太陽を反射してキラキラと光る。水のきらめきは、子供たちの鏡よりももっと変化に富んでいる。波の一つ一つは移動し、消長し、角度を変え、きらめきの強さや位置は刻々と変化する。快晴時に真っ青の水面を見ることがあるが、これは水面が空を反射しているからである。深い緑色の水面は、水自体の色が緑の場合もあるが、意外と周辺の森林を反射している場合も多い。

水自体の色は、水に含まれる物質やイオン、川底の状態、周りの景色の反射など、いくつかの現象が重なり合わさって見える。水中の光は水の分子によって吸収される。純粋な水では水深が10mで明るさが46%、100mでは7%になる。深い水が青く見えることはしばしば経験するが、これは水が赤い光をよく吸収し、青い光は吸収しにくいことによる。赤い光は1mで50%に低減するが、青い光は100mでも50%しか低減しない。また水に含まれているイオンも光を吸収する。イオンの種類によって色が異なり、イオンにより色がついた水は火山性の湖などで見られる。汚濁物質、植物プランクトン、土粒子なども光を吸収・反射する。植物プランクトンがあると緑色を帯び、土粒子が多いと茶系になる。細かい粒子が多いと光を乱反射し、白っぽく見える。

また流れも水に表情を与える。流れの遅い瀞は、周りの風景をよく映し、流れの速い瀬は表面が波立ち場合によっては白濁する。

このように水はさまざまな表情を示す魅力的な物質である。天気の良い日に近くの川に行って水の見え方を観察するのも楽しいものである。