小城の祇園川

小城を流れる祇園川は嘉瀬川の支川で天山を水源とした扇状地河川である。扇状地を流れる河川は、流れが速いため、川は直線に流れようとする。川底は玉石で、伏流水が多く、きれいな水のところが多い。

都市を流れる扇状地河川の代表といえば京都の鴨川である。後鳥羽上皇に「朕の意にならぬもの、賽の目、法師、鴨川」と言わしめたほど、洪水はひどかった。祇園川も昭和24年に大洪水があり、どこが川かわからなくなるほど川が暴れた。扇状地は勾配が急で土砂が多いので、いったん氾濫すると被害は大きくなる。といっても鴨川は京都を代表する魅力的な川である。夏には川沿いに床と呼ばれるテラスが料亭から川に張り出し多くの人が食と涼を楽しむ。小京都と呼ばれる町には、鴨川を見立てた美しい川がたいていある。小城ではその川が祇園川であろう。

さて、今、祇園川は、ホタルの真っ盛りである。おそらく今週が最大の見頃であろう。祇園川以外にも、松浦川駒鳴、武雄保養村、基山宮浦など県内に多くのホタルの見所があるから8時から9時ごろに出かけるといい。ホタルの光はなんともいえない光である。オスがメスを誘うために、ゆっくりと水もを飛び明滅している。大変ロマンティックである。祇園川では、耳を澄ますとカジカガエルの美声を聞くこともできる。

小城源氏ボタル保存会の柴田会長さんに、興味深いお話を聞いた。保存会では川の中の浚渫工事は認めているそうである。川底を掘った翌年のホタルは減るが、2年後、3年後はかえって、増えるそうである。ホタルにとって洪水や人の手による、川底のかく乱は、川底に間隙をもたらし、生息環境が改善されるのだろう。しかし、一気に浚渫をしてはだめで、1kmのうち300mぐらい、虎刈りのようにやればよいそうである。ホタルの飼育は浚渫によってダメージを受けた場所への回復の手助けが中心だそうである。

佐賀に来て、水や自然との付き合いに人間の深い知恵が横たわっていることを日々強く感じる。祇園川のゲンジボタル保存の取り組みは、人と自然との共存、自然の仕組みと人の生活のかかわりについて、示唆深いとりくみである。祇園川のホタルは、見るものの心を奪うほど美しいが、その美しさは小城の人たちの自信を持った息の長いとりくみが支えている。