持続可能な地域社会 (2014)

日本は少子高齢化を迎え、各地で人口の減少が起こり、地域社会の維持が難しい事態を迎える可能性が心配される。経済に関しては高度成長期型の大量生産大量消費型の経済から先進国型の付加価値の高い産業への転換が求められているが、なかなか旧来型の産業システムから抜け出せないのが現状である。

さらに、地球温暖化あるいは生物多様性の劣化など地球規模の環境変化の影響も顕在化してきており、これらにどのように対処するのかということも人類としての大きな課題である。

また、日本においては東日本大震災、それにつづく原発事故による悲惨な災害を経験したが、これは大震災時代の皮切りにすぎないという指摘もあり大災害への対処も大きな社会的な課題である。

このような課題を乗り切るためには、「地球規模でものを考え、地域で行動する」という(Think global, act local)考え方および「持続可能な社会」の考え方が重要である。

「地球規模でものを考え、地域で行動する」という考え方は、地域での地道な活動の積み重ねの重要性を説くものであり、これには多くの説明は必要ないと思う。ただし、物事には常に2面性があり、非常に大きな視点での取り組み(国際的な枠組みでの取り組み、あるいは国家レベルでの取り組み)も重要である。

「持続可能な社会」とは、将来にわたって健全に、豊かに継続できる社会のことである。短期的な利益のためだけに、資源を消費したり、環境を劣化させたりして、次の世代、次の次の世代、さらに将来の世代にツケを残さないことである。この概念は、1987年の国連の環境と開発に関する世界会議から出てきたもので、人間の力が強くなり、人類への持続可能性が失われる可能性が出てきたことがその背景にある。

「持続可能な社会」という概念を、地域社会にも適用し、「持続可能な地域社会」という考えかたを基本とした地域づくりを行っていこうという提案である。それぞれの地域で次世代、次々世代、将来にわたって地域社会が健全続くような努力、持続可能性を求める努力を行う必要がある。各地域の地道な積み重ねによって日本全体を持続的に発展させようという提案である。

3つの持続可能性

地域の持続可能性の3つの側面について簡単に説明する。

・コミュニティの持続可能性:人口、人間関係、地域が形成している文化・環境などの再生産が可能な社会

・地域基盤の持続可能性:自然、インフラ(分散、自立)、文化・歴史的遺構、エネルギー、災害に強い国土

・経済の持続可能性:地域での資金循環、他地域からの還流、高付加価値の産業育成、自然エネルギー産業

コミュニティの持続可能性とは、それぞれの地域の人口が維持され、それぞれの地域で暮らすことができる経済的な基盤があって、伝統的な文化や環境が維持・継承され、お互いにさあさえあえる円滑な人間関係営まれる地域の人間関係をベースとした持続可能性である。

地域基盤の持続可能性とは、国土の持続可能性、環境の持続可能性と言ってもよいもので私たちが暮らす大地の持続可能性である。自然環境、文化的な環境それからインフラも含まれる。

経済の持続可能性とは、地域で資金や資源が循環する社会であり、高付加価値な産業育成、自然エネルギーや自然資源を地域の経済の中に落とし込み、地域が持続的に自立できる経済のことである。

これら3者は相互に関連しており、3つの持続性が成り立ってこそ、それぞれの地域での持続可能性が達成されると考えている。持続可能性を求める地域づくりは短期的な視野では達成できず、それこそ持続的な取り組みが必要である。ビジョンを明確にし、時間とともに柔軟にそのビジョンを変更しつつ、さまざまな誘惑を排除し、粘り強く進むことが重要であると考えている。

持続可能性を達成するための方法

各地域において3つの持続可能性を達成するにはその方法論が重要である。

多くの人々の議論を踏まえたビジョンの作成、ビジョンに基づいたモデル的な実践、先端的な考え方を導入するための仕組み、全体的にものを進めるための実行計画、それを進めるための人材養成、柔軟に変更できる仕組みなどが重要である。

特に地域の住民が物事を考え、話し合い、決めていくというプロセス、および日本あるいは世界での先端的な考え方や技術を導入するための仕掛けは重要である。地域民主主義と先端性とを融合させ、魅力的な地域を作っていくことが必要である。

それらをまとめると

・それぞれの分野におけるビジョンの策定

・総合的な視点でのビジョンの包括

・ビジョン策定時で多くの人が関わり、多くの人の意見が反映させる仕組み

・住民・行政共働での地域での実践モデルの作成(細やかな配慮、優しさ、先端性)

・最先端の知識を集積させ、それを展開させるための研究機関

・コーディネート能力のある公平で公正で将来を見通せる高潔な沢山のリーダーなどの育成

・ビジョンなどを柔軟に変更する仕組み