里山ある記

第8回

「増尾の森」

平成24年8月、柏市は「増尾の森 生物多様性活用方針」を策定し、その後、管理活用方法を検討してきましたが、平成27年6月、市民団体である仮称「増尾の森と水辺の会」を発足させました。現在この団体が生態系調査やホタル観察会を行っています。この地域は山林と湧水と湿地から構成されて、豊かな生態系になっております。

樹木ではクヌギ、コナラ、シラカシ、サワラ、トウカエデ、マユミ、ウグイスカズラ、コブシ、イヌシデをはじめとして、低木のヤブコウジ、マンリョウも多く、野草では、キンラン(D)、ギンラン(C)、ササバギンラン(C)、イヌアワ(D)、

キツネノカミソリ<写真1>などが観察できます。キツネノカミソリはヒガンバナ科で、8月半ばには葉が枯れ、その後に赤褐色で、長さ35~45cmの質の柔らかい花茎を出し、その先端の包葉の中から、長さ5~7cmの小花柄を出し、黄褐色の花が咲きます。一つの花茎に3~5個の花が少々傾いて咲き、種子は球形で有毒です。

<写真1> キツネノカミソリ

湧水の流れの中には、モノアラガイ、ヒメタニシが生息していすが、これは人工的にヘイケボタルの幼虫を放流しているため、その餌となっています。 トンボ類では、シオカラトンボのほか、ナツアカネ、アキアカネ、マイコアカネ、ウスバキトンボ<写真2>、クロスジギンヤンマ(D)オニヤンマが観察できます。この中で海外から渡ってくるのはウスバキトンボで、東南アジア方面から北上して沖縄、九州をめざし、更に日本列島を世代を繰り返しながら北上していく唯一のトンボです。

<写真2> ウスバキトンボ

夏の間林の中では、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシの合唱が聞こえますが、最近はクマゼミが加わるようになりました。クマゼミは伊豆半島が生息の南限であったが、最近では温暖化の影響で柏まで来ているようです。

その他草原では、蝶類やバッタ類も多く見かけ、森は、夜になると鳥たちのねぐらになっています。

注:( )内は千葉県指定の保護種で、C:要保護種 D:一般保護種

自然観察指導員 篠崎 将 記

第7回

「つばめ池」

「つばめ池」とは、県道市川柏線に接した増尾3丁目にある雨水調整池である。

周りはフェンスに囲まれて人は中に入ることは出来ないので、 鳥をはじめ多くの生きものの生活の場となっている。

夏になると葦が両岸から水中まで密生するので、水面も僅かの面積しか見えなくなり、雨水の流れが悪くなるので、柏市が定期的に刈り取っている。このため離れたところからでも鳥の観察が出来る状態になっている。夏の早朝は、

真っ白いダイサギ(C)やコサギ(C)カルガモ、コガモ<写真①>などが来ている。

① カルガモの親子

また、カワセミ(C)も度々観察される。市川柏線に近い堰となっている石の上や、水面より1~2m高い護岸の上で獲物を狙っていて、魚の姿が見えると垂直に嘴から水中に飛び込む。獲物は最大5cmくらいになるカダヤシが多い。カダヤシは環境省の特定外来生物に指定されていて、捕まえること、飼うこと、移動することが禁止されている魚である。また、ダイサギは、アメリカザリガニを食べていることが多い。

このほか、日本のサギ類では最も大きいアオサギやゴイサギも見ることが出来る。また、6月になると、日本に夏鳥として渡来するオオヨシキリ(C)<写真②>の姿も見ることが出来る。葦の軸に垂直の姿勢で止まり、大きな口を開けて、

「ギョギョシ、ギョギョシ」と大声で縄張りを主張して鳴く。

② オオヨシキリ

小型の鳥では、カワセミ<写真③>も見られる。

③カワセミ

この他に、モズ、ツバメ(C)、アオジ、カワラヒワ等も来ている。観察には双眼鏡やフイ-ルド・スコ-プが有るとよい。

注:C→千葉県要保護種

自然観察指導員 篠崎 将 記

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第6回 「中原小学校のビオトープ」

千葉県では身近な自然を守り育てることを目的として、ビオト-プづくりを進めてきました。その趣旨は「生物多様性千葉県戦略」に引き継がれ、「生物多様性体験学習推進事業」として、学校ビオト-プづくりに反映されました。

学校ビオト-プは里山の要素を再現したミニ里山タイプが多く、小さな池や水路、田んぼや畑、草地を含み、中原小学校のビオト-プもこの主旨に基づいて作られたものです。ビオト-プを作るに当たっては、事前に学校周辺の植物、生きものを春夏秋冬にわたって教師、児童、父兄で調査を行い、観察された動植物が生息できる空間を目指し、2010年に作られました。 特に児童から要望の強かったトンボの生息環境を

重視し、池や水路を流れる水は、雨水をためて循環させています。

2014年に観察された生きものは、トンボ類では、大型のオニヤンマ、クロスジギン

ヤンマの他、ウスバキトンボ、オオシオカラトンボ(写真①)、コシアキトンボ、

アオモンイトトンボ(写真②)など、早朝には、羽化するところも観察できます。

①シオカラトンボ(メス)の羽化

②アオモンイトトンボの交尾

蝶類では、保護種であるコムラサキをはじめ、温暖化で北上してきたツマグロヒョウモンも観察され、その他の昆虫では、コガネムシ類、バッタ類、セミ類など17種を数えます。鳥類では、モズ、ツグミ、コゲラ、ハクセキレイなど7種を数え、水中生物では、保護種であるメダカ、モツゴ、スジエビのほか、ドジョウも生息しています。

植物では、湿地性の保護種である、ガシャモク、アサザ、デンジソウ(写真③)、

ミクリ(写真④)をはじめ、イグサ、フトイ、サンカクイ、マコモなどが生育しています。樹木では、湿地性の高木であるハンノキをはじめ、鳥類の餌となる実のなる

マユミ、ウメモドキ、ムラサキシキブ、ナンテン、アオキなどがあるため、冬季も

鳥を観察することが出来ます。

③テンジソウ(重要保護種)

④ミクリ(要保護種)

この「中原小学校ビオト-プ」は、教師と父兄、児童から成るビオト-プ委員会により、管理、運営されていますので、観察を希望される方は、受付で許可を得てお入り下さい。

自然観察指導員 篠崎 将

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第5回 「きつね山」

「きつね山」は、万福寺の東側にある伊藤泰彦氏の屋敷林である。林の中には幹回りが 3mを超える、シイ、ケヤキ、スギの巨木もあり、夏でも鬱蒼としてエアコン要らずの空間である。 また、ツバキの1mを超える巨木もあり、冬には花をつけている。この林は森林ボランテイアの方々の協力により整備され、現在は遊歩道が設けられ、散策できるようになっている。 柏市のカシニワ制度にも登録され、どなたでも、いつでも訪れることが出来る

オ-プンガ-デンとなっている。

低木で珍しい木としては、緑の葉の中心に白い花を咲かせるハナイカダとか、春に出る新しい葉が、ビロ-ドのように厚い毛で覆われたシロダモとか、新芽から葉になったときは三つに裂けた葉形で赤色をしているアカメガシワは、後に葉が赤色から緑色に変わるだけでなく、成木では裂け目がなくなったり、長い葉型(不分裂葉)に変わる珍しい木である。

保護種になっている野草としては、キンラン(環境省、千葉県)、ギンラン、ジュウニヒトエ(千葉県)の3種がある。 キンラン、ギンラン林内の複数の場所で群生しておりジュウニヒトエは、日当たりのよい東側斜面で、今年の春は、46株を数えた。 今年初めてナンバンギセルが観察された。 これはススキやミョウガに寄生する植物で、葉はなく、7~8cmの花柄を立てて1個の花をつける。

生きものでは、爬虫類のアオダイショウ、ヤマカガシ、カナヘビ、ニホントカゲ(すべて千葉県保護種)を観察することが出来る。この他、トンボや蝶セミなども多く、子供たちにとっても絶好の観察場所である。

ハナイカダ

ギンラン

ジューニヒトエ

ナンバンギセル

自然観察指導員 篠崎 将