名戸ヶ谷 ビオトープ

投稿日: Apr 06, 2014 5:48:14 AM

======================================

日本自然保護協会自然観察指導員 篠崎 将氏に、地域の自然環境に恵まれた場所を

シリーズで紹介して頂いておりますが、今回、第二回 「名戸ヶ谷ビオトープ」 を書いて頂きましたので、掲載させて頂きます。 総務広報 Y.T.

======================================

◆里山ある記 名戸ヶ谷ビオトープ

名戸ヶ谷湧水周辺の地域は、谷津の面影を残し かつては、現在の新柏駅から名戸ヶ谷までは湿地や水田地帯でした。現在は開発が進み、 谷津の面影が残されているのは、湧水が豊富であった名戸ヶ谷ビオトープのみとなってしまいました。

このビオープは平成14年、柏市が環境省からの補助金を得てビオトープとして造成したもので、

(1)湿地の自然として多様な動植物が生息する場を育成する。

(2)生息、育成する動植物は、本来この地に生息していたものとする。

(3)他の地域の生きもの、外来種、栽培種は導入しない。

という原則に従って管理されています。ビオトープは人のための公園ではなく動植物のためにつくられた生息空間です。具体的には一般市民を対象とした自然観察会の開催、生態系調査、無農薬無化学肥料による不耕起稲作栽培などが行われ、小学校の環境教育の場ともなっています。

昨年の調査では、千葉県の絶滅危惧種に指定されている植物の、ヒメヘビイチゴ、

ヒメウキガヤ、イチョウウキゴケをはじめ、50種以上の湿地性植物が観察されて

います。

動物では、千葉県の最重要保護種であるニホンアカガエルをはじめ、トウキョウダルマガエル(重要保護種)アズマヒキガエル(要保護種)など両生類が多く生息するため、これらを餌とするシマヘビ(要保護種)、アオダイショウ(一般保護種)、ヒバカリ(一般保護種)や、昆虫を餌とするニホントカゲ(重要保護種)カナヘビ(一般保護種)なども多く生息しています。

ニホンアカガエル(最重要保護種)

トウキョウダルマガエル(重要保護種)

鳥類も、特に冬期にエサとなる生きものが多いため、コチドリ(重要保護種)、ダイサギ(要保護種)コサギ(要保護種)カワセミ(要保護種)などが観察されます。

カワセミ(要保護種)

昆虫類も平成25年には80種以上が観察されました。

また住宅地に近いため、困った問題も発生しています。環境省が特定外来生物、

要注意外来生物として指定している生きものが増えていることです。家庭で飼っていた生きものが増えたり、大きく成長したりして処分に困り、ビオトープに放す人が後を絶ちません。カダヤシ(メダカにそっくりの外来魚)、ミシシッピアカミミガメ(別名ミドリガメ)、ウシガエル、アメリカザリガニなどです。

例えばミドリガメは、購入したときは緑色で数cmのかわいいカメですが、成長すると褐色で30cm以上になります。これらの外来種が増えると、在来種が滅亡してしまいます。

ビオト-プは多様な生きものの生活空間であるとともに、市民が身近な自然に触れて生きものとの共生を考える場になってほしいと考えています。

篠崎 将 記