自然の表情
<レンズでのぞいた増尾の自然>
第六回 「ツユクサ」
畑の中や水田の畦で、よく見かける草である。花が露を含んで開くことから、
名づけられたという。花びらは、上の大きな2枚が濃い青色で、下の小さな花びらは、
白の半透明である。その間に、鮮やかな黄色の雄しべがあり、そのコントラストが美しい。
花は早朝だけ咲くので、そのはかなさに思いをはせる人も多い。 まさに「つゆ草」である。
ツユクサのユニ-クさは午後にある。花弁の中はドロドロに溶け、栄養分は
吸収されて次の花に回される。まさにリサイクルの花である。
昔は染料に使われていたが、水に弱く色あせてしまうので使われなくなったと言われているが、
今でも友禅染の下絵に使われているが、これはその水に溶けやすい性質を利用している。
薬草の文献によると、花が咲いているときに地上部を切り取り、干したものを「オウセキソウ」
と呼び、あせも、草かぶれ、湿疹に効果があるという。
また、扁桃腺炎などに、1日5グラムを煎じて、うがいをすると効果があると記されている。
自然観察指導員 篠崎 将 記
第五回 「フキノトウ」
フキは「牧野新日本植物図鑑」によると、「山地や平野の道端に生える
雄雌異株の多年草で、根茎は非常に短くて地上には出ず、周囲に地中枝を出す。
葉は花後に出て、多肉質で長く、その先に腎臓型の葉身がある。
葉は薄く幅15~30cmで、早春に根から花茎を出し、次第に伸びて花後は長さ
30 cmになる。」とある。
フキは漢名で「蕗」、日本では古くから「布布岐」といい、のちに「ふき」
と呼ばれるようになったと言われている。秋から地中で膨らんでいた花蕾は、
暖気を先取りして地上に顔を出し、そのもえぎ色は、早春の息吹きであり、
ほろ苦さは春の味わいである。冬眠から覚めて熊は真っ先に食べて目覚めるという。
フキに雄株と雌株蛾あることを知る人は少ない。雌株の花は白く、
雄株は花粉を作るので、やや黄色っぽいから、遠方からでもわかる。
雄のフキノトウは間もなく枯れ、雌のフキノトウは数10cmも伸びて果実を結ぶ。
酒の肴に、これほど季節を感じるものはない。
この花をはじめて見るひとは、一見「らん」の一種かと思うほど美しい花である。
千年以上昔の文献に出てくるというから、日本人にはなじみ深い花である。
いろいろな料理に添えた一切れのミョウガが、どれほど料理を引き立てることだろうか。
ミョウガの花は、咲かないうちに摘み取られて食用に供されるので、
花を見たことのない人も多い。また、庭の片隅の日の当たらないところに植えられているので
花が咲いても人に見られないことが多い。 ランのように美しいこの花も、花の命は1日しかない。
ミョウガをたくさん食べると、物忘れがひどくなるという言い伝えがある。
成分を調べた結果では、その様なことはなく俗説らしい。このように美しい花を
よく観察しないで、がつがつ食べることへの戒めではないかと思われるほど、
美しい花である。
総務広報部 自然観察指導員 篠崎 将 記
第四回 「ミョウガの花」
全長約90cmで、日本における白いサギの仲間では、最大のサギである。
全身が白色で、嘴と首の長いのが特徴である。日本では関東から九州の各地で
見ることが出来る。小魚やアメリカザリガニなどを食べている。
餌を見つけると、S字型の長い首を瞬時に伸ばして捕える。足が長いので
深い水の中でも歩くことが出来る。嘴は黄色だが、夏になると黒色になる。
目は黄色だが、繁殖期には赤色になる。婚姻色と言われ、文字どうり目の色
を変えて結婚相手を探す。ハクチョウやアホウドリは生涯添い遂げるが
ダイサギは毎年相手を変える。
ダイサギは留鳥であるが、季節によって個体数に大きな差がある。手賀沼
では4~7月にかけて個体数は減少するが、8~10月にかけて増加する。
これは樹上で営巣する環境が手賀沼付近にはなく、他の場所に移動して営巣
しているためと思われる。
一般にシラサギと呼ばれるのは、白いサギ(ダイサギ、チュウサギ、コサギ)
の総称で、シラサギという鳥はいない。大きな羽を広げ、ゆっくりと羽ばたく
姿は優雅である。ダイサギは環境省の保護種に指定されて数は少ないが、
増尾城址公園の水辺、大津川、名戸ヶ谷ビオト-プなどで観察することが出来る。
ダイサギの夏姿
H28-10-12 総務広報部 自然観察指導員 篠崎 将 記
第三回 「ダイサギ」
ダイサギの冬姿
H28-6-26 総務広報部 自然観察指導員 篠崎 将 記
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第二回 「ハナイカダ」
花が筏に乗っているような樹木である。高さ1~1.5mで、葉は長さ6~10cmの
長楕円形で互生し、鋸歯がある。 雄雌異株で雌花は4弁から成り、葉っぱの筏に
1つだけ咲く。雄花は3弁で数個が相乗りしている。
花は淡緑色で、それほど目立つ花ではないが、葉の上に花が咲いたり、
実がなったりするところが珍しい。この形からハナイカダと呼ばれている。
これは花柄が、葉の中央脈と合致したもので、葉から直接花が咲いたわけではない。
雄雌異株で、雌花は葉の筏が1つだけ咲き、雄花は数個が束生する。
方言も多く、ヨメノナミダ、アズキナ、イボナ、ママコナ、ママッコなど
と呼ばれる。果実は7~10mmの黒色球形で甘い。若葉も山菜として食用に供される。
また、珍しいので庭木としても利用される。 ハナイカダは、東アジア固有種で、
日本からヒマラヤにかけて分布している。
数は多くないが、増尾のキツネ山や、中原小付近の山林内でも見ることが出来る。
ハナイカダ
篠崎 将
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四季折々の身の回りのありふれた野草や樹木、生きものの表情を、写真と文章で
紹介いたします。 普段身の回りにある自然を、レンズをとうして再認識して
いただければ幸いです。
第一回 「オオイヌノフグリ」
西アジアからヨーロッパ原産の2年草で、明治初期(1870年頃)帰化植物とし
日本に入ってきた。 柏市内でも早いところでは年が明けた1月中旬には、
陽だまりの畑や道で見ることが出来る。春一番に咲く可憐で美しい花である。
花は晴天の朝開き、虫が止まると花は虫の重みで下向きに垂れる。
虫は急いで左右のオシベに抱きつくので、花粉が虫の横腹になすりつけられる。
日が傾くと花はしぼむので、左右に離れていたオシベは、内側に曲がり、
受粉が行われる。花は直径 8~10mmのコバルト色で美しいが、名前が良くない。
「フグリ」とは、広辞苑を見ると、「ふくらみがあって垂れているもの----陰嚢」とある
。種子の形が睾丸に似ているので名づけられたと言われている。
これでは可愛そうだということで、千葉県では「星の瞳」という美しい名前が付けられたが、
これでは美し過ぎる。
観察会でご婦人方から、名前の由来を聞かれると困る草である。
総務広報部 自然観察指導員 篠崎 将