第37回地域院生研究フォーラム
日時:2021年5月8日(土)14:00~17:20
会場: オンライン(Zoom)
報告者(敬称略)・題目・要旨:
1)鈴木健吾 (地域文化研究専攻アジア科博士課程)
題目:模索する文化財保存運動…乙訓の文化遺産を守る会の安定成長期
高度経済成長期の列島開発の中で展開された社会運動である文化財保存運動は、文化財保護行政未発達の中での乱開発という状況に対して一定の役割を果たした。一方、1975年以降の法制度の整備もあり、保存運動は「冬の季節」を迎えたとされるが、運動団体自体は現在まで存続するものも多い。
本報告では京都府乙訓地域(向日市・長岡京市)の保存運動団体「乙訓の文化遺産を守る会」(1966~)の運動を高度成長期から安定成長期まで通覧する。高度成長期の課題解決を目的にした運動体の運動目的の建て直しを含む模索について考えていきたい。
2) 清野真惟(地域文化研究専攻地中海科博士課程)
題目:歴史家マキァヴェッリにおける「イタリアの自由」の概念––『フィレンツェ史』分析を中心に––
16世紀初頭にフィレンツェで外交官として活躍したニッコロ・マキァヴェッリ(1469-1527)は、最初の著作『君主論』(1513)で「蛮族からイタリアを解放し防衛せよとの勧告」を主張した。この「イタリア解放」は、マキァヴェッリ以前にも様々な場面で現れた「イタリアの自由」を求める主張の類型として扱うべきものである。「イタリア解放」を「イタリアの自由」の諸言説に位置づけるため、本報告はマキァヴェッリの歴史書『フィレンツェ史』(1525)を分析し、「イタリア解放」が武力的劣位の克服を目指して点でそれまでの言説と一線を画すことを明らかにする。
司会:林優来(地域文化研究専攻地中海科博士課程)