下記の通り地域院生研究フォーラムの第16回研究会を開催しました。
約10名の院生、また学外からの参加者が出席し、発表者やコメンテーターと議論を行いました。
日時:2015年10月24日(土)9時から12時
場所:東京大学駒場キャンパス18号館 院生作業室
テーマ:社会とシステムへの批判
発表者・発表題目:
1.岡山誠子(地域文化研究専攻 アジア科 修士課程)
インド・グジャラート州における国民会議派の衰退 インド・グジャラート州における国民会議派の衰退
― 1980 年代のアフマダーバド市政を中心に
<報告概要>
本研究の目的は、「世界最大民主義国家」インドにおける少数派抑圧を検証する事である。民主主義は選挙を通じた多数派支配に強い正当性を与える側面がある。権力を獲得した多数派が少数派を弾圧する場合、民主主義はどのように少数派の権利を守ることができるのか。本研究では、2002年に多数派であるヒンドゥーが少数派であるムスリムを200人以上虐殺したインド・グジャラート州の事例に着目して、民主主義と少数派の抑圧の関係について解明したい。
<報告を終えて>
私は、修士論文執筆も佳境という時期に悩みが募り、客観的なアドバイスを求めて当フォーラムに参加させて頂きましたが、とても有意義な機会となりました。ほかの地域を専門とする院生のコメントを聞くことで大いに刺激を受けたと同時に、視野が広がりました。
具体的には、「聖地」をめぐる歴史論争と政治との関わりについてヨーロッパの類似事例を知ることができ、また、選挙分析中心の修士論文では後回しになっていた、民主主義やセキュラリズムといった理念についての深い考察の重要性を再認識しました。今回のフォーラムによって得られた様々な気づきを、今後の研究に生かしてゆきたいと思います。
2.山本千寛(地域文化研究専攻 フランス科 修士課程)
「自由」のための「計画」とはなにか
―アンリ・ルフェーヴルの社会‐哲学における官僚制の問題系
<発表概要>
アンリ・ルフェーヴル(1901-1991)は、20世紀フランスのマルクス主義の哲学者・社会学者である。日本では主著とされる『空間の生産 La Production De L'espace』(原著1974年)を中心として、主に『都市への権利』(原著1968年)以降の彼の都市・空間論の仕事がもっぱら注目を集めている。しかし、本報告及び修士論文では、ルフェーヴルの長い研究生活全体に一つの補助線―先取りすれば、それは彼なりの「社会‐哲学」とも呼べるようなもの―を導入することで、特定の学問分野(60年代の疎外論、彼の死後の空間論の盛り上がり)や時期に限定されない読み方を試みる。
コメンテーター:田中碧(地域文化研究専攻 ドイツ科 博士課程)
司会:林優来(地域文化研究専攻 地中海科 修士課程)