第36回地域院生研究フォーラム
以下の通り、第36回研究会「院生交流会」を開催しました。地域文化研究専攻所属の学生だけでなく、他専攻・他大学ご所属の方も含めて20名近くの方が参加してくださいました。初めてのオンラインでの開催でしたが、研究対象地域、ディシプリンを超えた活発な議論が展開されました。
第36回地域院生研究フォーラム
日時:2020年12月5日(土) 14時より17時まで
zoomにて開催
発表者・発表題目:
1.佐藤章太(東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程)
「現代ベトナム語における漢語由来語彙に見られるベトナム語的特徴」
〈報告要旨〉
歴史的にベトナムは漢字文化圏に属し、その歴史的過程の中で、現在に至るまで非常に多くの漢語由来語彙を受容してきた。その中でも書き言葉を通して受容され、体系的な漢字音で読まれる漢越語が、概念語や専門用語などの高級語彙を中心に、膨大な量を有する。本発表では、現代ベトナム語において、漢越語がベトナム語固有の特徴の影響をどのように受け、どのように変化しているのかについて、実例とともに発表する。具体的には、ニュアンスの付与、意味内容の変化(縮小、拡大、同音語による意味の最解釈(大幅な変化))、文法的変化(名詞修飾を含む漢越語の語順逆転)について、発表者の研究成果とともに紹介した。
2.大室元(東京大学大学院総合文化研究科国際社会学専攻博士課程)
「マレーシア・サラワク州のイバン人都市移住者をめぐる研究動向」
3.閑野祐介(東北大学大学院法学研究科修士課程)
「近代中国における政軍関係―野戦軍派閥人脈の形成過程を中心に―」
〈報告要旨〉
中国人民解放軍内に存在していた「野戦軍」という軍事組織の解明を通して、近代中国における政軍関係(正式には党軍関係)の実態とはどのようなものであったのかを明らかにする。その際、改革開放政策を主導した鄧小平の権力基盤であったとされる第二野戦軍という部隊に注目し、この第二野戦軍という部隊が中華人民共和国建国以前においてどのような経緯で形成され、また鄧小平個人とどのような関わり合いを持ったのかについて実証的に研究を行う。本研究においては、主に中華人民共和国建国以前の時期を取り扱うが、その考察を通して建国以後の中国の政軍関係(正式には党軍関係)を概観する事も可能であろうと思われる。
4.橋本誠浩(東北大学大学院法学研究科博士課程)
「現代中国における都市ガバナンスのA面とB面:社区居民委員会の管理とバーゲニング」
〈報告要旨〉
現代の中国政府・共産党は、社区居民委員会という「住民自治組織」を通じて、都市の末端まで管理統制権力を浸透させている。先行研究は、政府・党が社区居民委員会幹部の選挙に介入してきたことを指摘してきた。本報告は、その選挙を切り口として、社区居民委員会での参与観察の成果をもとに、政府・党の同委員会に対する人事管理の制度メカニズムと運用実態を説明した。
司会 河合玲佳(地域文化研究専攻博士課程)