日時:10月8日(土)14時00分~17時00分
場所:18号館2階院生作業室
発表者・発表題目:
1. 貝原伴寛(地域文化研究専攻修士課程 フランス科)
「フランス革命期の演劇における過去の表象—マリ゠ジョゼフ・シェニエ『シャルル9世』をめぐって」
フランス革命期には、王国の歴史が破棄され、古代社会や自然状態がシンボル等で繰り返し参照された、と指摘されてきた。この「過去との断絶」テーゼを再検討するため、本報告は、マリ゠ジョゼフ・シェニエの悲劇『シャルル9世』における「サン゠バルテルミの虐殺」の表象を分析した。結論として、革命初期の王権や教権との闘争においては、フランスの過去は破棄されずにむしろ想起されることで、闘争の武器となった、と示した。
2. 安度炫(地域文化研究専攻外国人特別研究生 アジア科)
「植民地台湾の台湾人治安組織ー『壮丁団』の背景と設置過程を中心にー」
台湾総督府が激しい抗日武装運動に悩んでいることを知った郷紳たちは自分の地位を守るための保良局の設置を建議した。しかし彼らを信じなかった総督府が他の権限を与えなかったゆえ、保良局はうまく機能できずに芝山巌事件をきっかけとして廃止になった。しかし雲林事件が欧米に知らされることで軍事行動に制約が掛かれた総督府は、自分の村を守ろうとする台湾民衆の請願に応じ、新たな治安対策として聯庄自衛組合を設置した。これが植民地台湾の最初の台湾人治安組織の誕生であった。
3. 河野亮(地域文化研究専攻博士課程 アジア科)
「植民地化のなかの国民化という逆説―戸籍制度からみた韓国併合」
大韓帝国で1909年に制定された民籍法をめぐっては、戸籍の整備状況の飛躍的「改善」によって国民創出を達成したとする評価と、併合前年に日本警察の主導下で制定されたことを強調する見解が並列状態にあり、両者を統合する体系的な理解が示されてこなかった。本報告では、法制定の経緯を考察することで、民籍法による国民創出が民衆からの自治・自衛の権限剥奪と不可分であり、それが韓国併合の過程と軌を一にしていたことを示した。