下記の通り地域院生研究フォーラムの第15回研究会を開催しました。
今回は、今年が日本の「終戦」から70年の節目にあたることから、「『戦後』を問いなおす」というテーマの下に研究会を行いました。
10名程の院生が出席し、発表者やコメンテーターと議論を行いました。
日時:2015年9月19日(土) 14時から17時
場所:東京大学駒場キャンパス18号館 コラボレーションルーム4
テーマ:「戦後」を問いなおす
発表者・発表題目:
1.閔東曄(地域文化研究専攻 アジア科 博士課程)
「『解放』と『戦後』のあいだー雑誌『民主朝鮮』を通してみる日本人と朝鮮人の『親善』ー」
<報告概要>
朝鮮人にとっての「解放」、そして日本人にとっての「戦後」という歴史的経験をつなぐものはなんだろうか。本報告では、在日朝鮮人が戦後直後に5年間刊行していた雑誌『民主朝鮮』に注目し、そのなかの日本人と在日朝鮮人のエッセイを通して、支配者-被支配者の関係(大日本帝国の時代)から解放されたあと、両者がどのように新たな関係を構築しようとしていたのか、また、両者の認識のあいだにどのような断層が存在していたのかについて考察を行った。在日朝鮮人にとって、新たな関係=対等な関係からはじまる日本の民主化のための共闘は、過去の反省が前提とされていたが、日本人は朝鮮人との新たな関係のために、過去を「空白」にしていたのであり、その背景には、日本の民主化のためにも「日本人民」の可能性を強調せねばならなかった当時の歴史的状況があったと考えられる。
2. 川崎聡史(地域文化研究専攻 ドイツ科 修士課程)
「西ドイツの学生運動ー1950年代から60年代初頭の 社会主義ドイツ学生同盟(SDS)」
<報告概要>
本報告は、西ドイツの社会民主党系学生組織である社会主義ドイツ学生同盟(SDS)の1950年から1961年の動向を扱った。この時期のSDSは、主に西ドイツの再軍備問題と核武装問題に取り組んだ。再軍備問題に関してのSDSの姿勢は概ね社会民主党の路線と調和したものであったものの、核武装問題における強硬な姿勢は次第に社会民主党の路線との乖離を生み、1950年代末からは路線対立の激化によって1961年には組織的関係の完全な断絶に至った。本報告ではこうしたSDSの動向は、当時の学生の世代としての経験によって影響を受けた政治的認識に基づくものとして観察し、その認識が当時の年配の社会民主党党員たちとはどのように異なっていたのかについての分析を行った。
コメンテーターの大下理世(地域文化研究専攻 ドイツ科 博士課程)からは閔氏の報告に対し、『民主朝鮮』と当時の政界との関係や交流等について質疑がなされ、同じくコメンテーターの林優来(地域文化研究専攻 地中海科 修士課程)からは川崎氏に対し、当時のドイツにおける大学や大学生の位置づけについて俯瞰的に考察することが重要であるとの問題提起がなされました。
司会:河野亮(地域文化研究専攻 アジア科 博士課程)