第34回地域院生研究フォーラム
日時:2019年7月21日(日)14:00~16:50
場所:18号館2階院生作業室
1. 清野真惟(地域文化研究専攻地中海科修士課程)
『『君主論』にみるマキァヴェッリの「イタリア」––夢見るリアリストによる「国」の構想』
本発表では、ニッコロ・マキァヴェッリ(1469-1527)の『君主論』(1513)において最終章で語られる「イタリア解放・統一」についての研究を報告したい。
イタリア半島の領土が諸外国に奪い合われる「イタリア戦争」の最中を生きたマキァヴェッリは、当時共和国であったフィレンツェ政庁で軍事外交を担当しながら自らの思想を錬成し、政治勢力争いで敗者側となってフィレンツェを追放されたとき(1512)、『君主論』を執筆した。これはメディチ家の人間でフィレンツェの実質支配者となっていたロレンツォ・ディ・ピエロ・デ・メディチ(1492-1519)に献呈された作品であり、最終章ではメディチ家に「イタリア」解放と統一が勧告されている。
この、国家として存在しなかった「イタリア」の解放と統一とは、具体的に何を指していたのかという問題にいち早く光を当てたのは18世紀のドイツ哲学・歴史学者たちであり、彼らによれば、マキァヴェッリが構想していたのは国民国家としての「イタリア」統一であったという。この見解は世界大戦期まで受け入れられ、イタリアでも統一運動であるリソルジメント期および統一後大いに称揚されていた。だが、戦後の研究者によってこの考え方がマキァヴェッリの思想理解としてあまりに時代錯誤であるという指摘がなされて以降、少なくとも研究者の間ではこのようなマキァヴェッリ理解は否定されている。だが一方で、それではマキァヴェッリの目指した「イタリア」解放と統一とはなんだったのか、という問いは未だ解決されていない。
そこで、発表者は、『君主論』のテクスト分析や歴史的背景、および私信の内容を分析することでこの問題に取り組み、マキァヴェッリの「イタリア」は古くから詩人たちが歌ってきた半島全体を「イタリア」とする考えに立脚した諸都市国家連合であったと解釈する。実体を伴わなかった「イタリア」と、各々がその「イタリア」に属すると自認する諸都市国家の危機という現実とを、マキァヴェッリがどのように結びつけようとしたのかについて論じる。
2. 山口陽子(西洋史学研究室修士課程)
『フランスからの旅行者によるドイツ第二帝政期アルザスへのツーリズム:1890年から1914年を中心に』
第三共和政下のフランスで愛国的なツーリズム活動を推進した市民団体Touring Club de France(T.C.F.)の月刊誌に注目し、独仏の国境地帯となったアルザス地方におけるツーリズムの実践を分析する。
司会:林優来(地域文化研究専攻地中海科博士課程)