第12回研究会
下記の通り地域院生研究フォーラムの第12回研究会を開催しました。今回は20名近くの院生が出席し、発表者の研究テーマに対して様々な意見や質問が飛び交いました。
日時:2015年5月16日(土) 14時より17時まで(終了後懇親会)
場所:新学生会館 2階 第1集会室
テーマ:アメリカ研究交流会
発表者・発表題目:
(1)加藤良哉(地域文化研究専攻 北米科 修士課程2年)
「アメリカにおけるアーミッシュの存続基盤:学校教育と社会保障に関する係争の検討を通じて」
<報告概要>
キリスト教宗教集団であるアーミッシュは、現代アメリカ社会で18世紀の生活スタイルを維持し、独特のコミュニティを形成している。彼らは、社会保障制度や義務教育等で例外措置を受けている。アーミッシュの特殊な法的地位を説明するものとして、これまでは「宗教の自由」というアメリカの伝統が重視されてきた。本報告は、それに加えて、「コミュニティ」を重視するもう一つのアメリカの伝統からの説明を試みた。
(2)西岡みなみ(地域文化研究専攻 北米科 博士課程2年・アメリカ合衆国キリスト教史)
「インディアン宣教と奴隷制」
<報告概要>
本報告では博士論文の構想を発表した。報告者はこれまで、アメリカ合衆国の南北戦争前の、キリスト教信仰や聖書解釈と、北部の聖職者の奴隷制理解との連関について研究してきた。博士論文では信仰や聖書解釈に加え、階級、文化、人種における重層的な対立が、キリスト教徒の奴隷制解釈に与えた影響を見たい。1840年以降の、南部に住むチェロキー、黒人奴隷、北部から派遣された宣教師たちとの間の、ミッション教会での交流を描き出すことは、この問いに一つの答えを提示する。
(3) 富田蓉佳(地域文化研究専攻 北米科 博士課程1年・アメリカ現代史)
「アメリカにおける尊厳死法−カリフォルニア州自然死法からオレゴン州尊厳死法まで−」
<報告概要>
本発表はアメリカ合衆国で初めて末期患者の生命維持装置の中止・取り外しを指示する書面に法的権限を与えたカリフォルニア州自然死法(California Natural Death Act)と、全米で初めて医師による末期患者の自殺幇助を合法化したオレゴン州尊厳死法(Oregon Death with Dignity Act)を取り上げ、生死や身体に関する価値観の対立を考察した。「死を選択する権利」をめぐる議論は個人の権利と命の尊さの対立に加え、個人の権利と国家の義務、自己決定権と宗教的規範など、多くの対立軸を持った問題であることを論じた。
コメンテーター:浜田華練(地域文化研究専攻 ロシア科 博士課程)
今回のシンポジウムでは、宗教や倫理といった何らかの価値をめぐる特定の集団間、あるいは個人と社会のあいだの衝突が共通のテーマであった。それを踏まえて、発表後の討論では、宗教・人種やジェンダー・生命倫理といった人類に普遍的に存在するともいえる諸問題に対する反応を通じて、アメリカという社会における独自性や固有の歴史的背景がどのように現れてくるかという観点から各発表者に対するコメント・質問を行った。
司会:相田豊(地域文化研究専攻 中南米科 博士課程)