2023年街歩きセミナーの結果

2023年街歩きセミナーの結果

 2023年5月27日(土)に実施した環境学フィールドセミナー「街歩き現地調査」の結果を示します。出発時刻や歩いたコースは例年と同じ(納屋橋を9時半出発~市制資料館でお昼~橦木館で解散)です。この観測は、ディーゼル車からの排出ガスなど、燃焼に伴って排出・生成されたばかりの小さなエアロゾル粒子(数十 nm程度)が、交差点の近傍で局所的に高濃度となる様子を捉える狙いがありました。が、今回の結果は昨年の2日目と同様に単純な濃度変化を示さず、自動車排出ガスの影響を考えるだけでは解釈が難しい結果となりました。同様の「D車以外の要因による変動が大きい」事例は、22年5月29日や18年、13年、11年、09年に観測されています(14年のうち6年分)。幹線道路の交差点で濃度が高くなる「わかりやすい事例」は、21年や16年などの例を参考にしてください


【使用した機器】

エアロゾル粒子数濃度(TSI:3007、直径10nm以上の粒子数濃度を測定): ディーゼル排気ガスや線香の煙など、燃焼により排出・生成されて間もない小さなエアロゾル粒子濃度を測定しました。1秒毎に計測し、1分間の平均値として記録しています。

温度、湿度、CO2 濃度(T&D:TR-76Ui): 3つパラメータともに1秒毎のデータから1分間の平均値を記録しています。気温・湿度は、センサーが観測者に体に近いため、その体温の影響や日射の影響を受けています。逆に言えば、通風管理された気象台での観測値にくらべて、その場所で人が感じる温度・湿度に近いということになります。また、室内に入ったり、周囲を人が取り囲むとCO2 濃度が高くなります。絶対値は校正されていませんが、ある時間内の相対値の変化を知ることができます。


【当日の気象状況と結果概要】

5月27日(土)

天気概況:朝から良い天気(薄曇り~晴れ)で、気象台のアメダスでは北西⇒南西の風を観測していました。14時過ぎから風が少し強くなりました(気象台で5 m/s前後)。相対湿度はほぼ50%以下で、日陰は過ごしやすい一日でした。温湿度センサーに日射が当たると気温が上昇し、風通しの良い日陰に入ると低下することを繰り返しているので、セミナーで観測した値は不規則にギザギザした変化を示しています。相対湿度も気温の増減に逆位相で上下しています(絶対湿度はほぼ一定)。本町交差点から三の丸のあたりでは、気温が低めで相対湿度が高めの様子が伺えます。木立があるため地表が日陰になるのと、植物からの蒸散の影響でしょう。このクールアイランドは、天気が良ければ過去にもほぼ毎年観測されています。

エアロゾル粒子数濃度:納屋橋ではセミナーの開始前から交差点の風下側で測定していました。トラックも時折通過していたので、短時間に高い値が観測されてヒゲみたいに見えています。その後、なぜか1ccあたりの個数濃度が3~4万個へと、D車の交通量とはほぼ無関係な濃度変化を示していましたCN濃度形かかった原因は不明ですが、ビルがあちこちで建設されていましたし、マンションの大規模修繕も見ました。ひょっとすると溶剤からのVOCが微粒子の生成に寄与していたのかもしれません。越境汚染の影響は、PM2.5の予報から考えて、可能性が低そうに思います。一方、国設名古屋局(鹿子殿)では、昼にかけて風向がS系に変わると共にSO2やCO濃度が上昇しているので、伊勢湾の工業地帯に由来する大気汚染がCN濃度の上昇に影響していた可能性もあります。

CO2 濃度: グラフの濃度変化で目立つのは、室内に入った時間帯の高濃度です。その他にも周囲を人が取り囲むとCO2 濃度が高くなりました。三の丸のように緑地帯で日射があれば、植物の光合成によCO2 濃度が下がる可能性はありますが、観測データからははっきり見えませんでした。

PM2.5 濃度やオキシダント濃度など、大気汚染常時監視データは名古屋市のHPで見ることやダウンロードができます。

  名古屋市の大気環境状況

名古屋市が行っている大気汚染常時監視局のうち、歩いたコースに近いのは、「若宮大通」の常時監視局(自排局)です

「そらまめくん」という全国の様子を知ることのできるサイトもあります。過去データはここでダウンロード可能です。

・名古屋気象台での気象データは「過去の気象データ検索」で見ることができます。ここで地点や日付等を選択してダウンロード可能です。

230527観測データ