黄砂粒子に含まれる水溶性成分の割合

個別大気エアロゾル粒子の水溶性成分含有率(ε)は、粒子の吸湿性や雲粒、氷晶への活性化プロセスに関わる重要なパラメーターである。

2010年5月と2011年5月に名古屋へ飛来した黄砂粒子について、粗大ダスト粒子の個別εを、水透析法と共焦点レーザー顕微鏡とを用いて計測した。

名古屋大学構内で、黄砂時にインパクターを用いて粗大粒子を採取し、上記の手法で個別粒子解析した。

発生源でのεは、場合(場所)によっては最大で30%程度を示すこともある。Fig. 2の左側(黄砂の初期の例)の試料は、εが30%よりも高い。輸送途中での雲過程や、汚染物質との混合などにより、水溶性成分量が増える(生成・付着した)可能性がある。1回の黄砂イベントでも、初期段階と終盤とでは、輸送途中の雲過程や汚染物質との混合状態が異なるのかもしれない。

このほかにも、黄砂粒子にはかなりの量の水溶性成分が内部混合しているケースが多かった。このことは、黄砂粒子が、巨大凝結核として機能する可能性を示唆しており、氷晶核としての作用機構も、気温によっては一端水滴を形成してから氷晶化することを暗示している。 スーパーミクロンサイズのダスト粒子について、従来の手法ではεを測定しにくかったので、本研究でのデータはとても貴重である。