エアロゾルってなに?
エアロゾルとは、空気中に漂っている微粒子とその周囲のガスを含めた系の全体を表していました。近年では、微粒子を中心に据えた見方が定着し、「エアロゾル」といえば微粒子のことを指すようになりつつあります。
大きさはナノメートルから0.1ミリメートルくらいまで、1時間くらいは空中に浮いていて観測できるようなサイズのものが研究対象の中心です。
例えば、名古屋大学の環境総合館・屋上から西の方角(関ヶ原方面)を見た時の様子と、乗鞍岳でみたかすみを以下に示します。
空気が綺麗なとき
黄砂飛来時
乗鞍岳から御嶽山を見たところ:左側がエアロゾル、右側が雲海
一粒ずつでは目に見えないような黄砂粒子も、光学顕微鏡や電子顕微鏡で拡大して見ると こんな感じです。
光学顕微鏡(透過光)による黄砂粒子の写真
撮影:李 静敏
電子顕微鏡による黄砂粒子の写真
撮影:李 静敏
日本でも太平洋の真ん中でも、南極でも、地球上どこにでも浮かんでいます。
でも濃度や質がちょっとずつ違います。
一粒のエアロゾルは目に見えないほど小さいのですが、大気中に数多く存在すると、以下のような種々の影響や環境中での役割があります。
■雲の種になる(気候影響)
そらに浮かぶ雲は、数~数十ミクロンの水滴(雲粒)や氷の粒(氷晶)でできています。その粒ができるには、芯となる「核」が必要です。エアロゾルが存在しなければ、いくら水分があっても自然には雲ができ難いのです。一方で、酸性雨と、雨(雲)種になるエアロゾルにはふか~い関係があったりします。
■日射を散乱する(気候影響)
エアロゾルがたくさん空中に浮かんでいると、光(日射)を散乱して遠方が見えにくくなったり、太陽のエネルギーを宇宙の方へともどしてしまったりします。
■塵も積もれば山となる(環境影響)
黄砂のような砂埃が長い年月(千年単位?)かかって積もることで、山にはならなくとも、窪みが埋まり遺跡が隠れるくらいにはなります。風で運ばれてくるだけでも、けっこうたくさん物質を運んでいることになります。
■栄養を運ぶ(環境影響)
黄砂に含まれるリンや鉄、黄砂が大気中でくっつけてきた硝酸態窒素、あるいはアンモニウム態窒素などは、海洋に運ばれると栄養塩類として働きます。陸地の近くでは河川によりこれらの成分が海洋に運ばれていますが、陸地から遠く離れた遠隔海洋域では風にのってエアロゾルが運ばれる現象は栄養塩の輸送経路として重要です。
■鼻水やくしゃみ、呼吸器系疾患の原因にも(健康影響)
花粉症はよく知られていますが、花粉以外にも黄砂や、PM2.5濃度が高くなると、鼻水やくしゃみがでたりします。呼吸器系疾患の原因にもなりますから、高濃度になる要因は少ない方が良いです。
雲の種になるかどうか、どのくらい日射を散乱したり、大気を暖めるかなど、エアロゾルは気候変化にも関わっています。また、酸性雨や黄砂のように、大気を介した物質循環を担うという意味でも地球環境にとって重要です。さらに、健康影響についても研究が進められています。
エアロゾルが及ぼす3つの影響
エアロゾルの大きさ概略
海水の飛沫も海塩粒子として存在します
黄砂として飛来した鉱物粒子
花粉
a:スギ、b:ヒノキ、c:ブタクサ、dとe:松