2022年街歩きセミナーの結果

2022年街歩きセミナーの結果

 2022年5月28日(土)と5月29日(日)に実施した環境学フィールドセミナー「街歩き現地調査」の結果を示ます。昨年に続き、今年も感染症対策でマスク着用のうえで実施しました。出発時刻や歩いたコースは例年と同じ(納屋橋~市制資料館~橦木館)です。ディーゼル車からの排出ガスなど、燃焼に伴って排出・生成された小さなエアロゾル粒子が、交差点の近傍で局所的に高濃度となる様子を捉える狙いがありました。が、今年は2日とも単純な濃度変化を示さず、移動観測だけでは解釈が難しい結果が続きました(ページ下部に続く)。同様の「D車以外の要因による変動が大きい」事例は、18年や13年、11年、09年に観測されています(13年のうち5年分)。それ以外の年では幹線道路の交差点で濃度が高くなる「わかりやすい」事例が観測されています。


【使用した機器

エアロゾル粒子数濃度(TSI、3007) (直径10nm以上の粒子数濃度を測定): ディーゼル排気ガスや線香の煙など、燃焼により排出・生成されて間もない小さなエアロゾル粒子に相当する粒子濃度を測定しました。1秒毎のデータから1分間の平均値を記録しています。

温度、湿度、CO2 濃度(T&D、TR-76Ui): 3パラメータともに1秒毎のデータから1分間の平均値を記録しています。気温・湿度は、センサーが観測者に体に近いため、その体温の影響や日射の影響を受けています逆に言えば、通風管理された気象台での観測値にくらべて、その場所で人が感じる温度・湿度ということになります。また、室内に入ったり、周囲を人が取り囲むとCO2 濃度が高くなります。絶対値は校正されていませんが、ある時間内の相対値の変化を知ることができます。


【当日の気象状況と結果概要】

5月28日(土)

天気概況:朝から良い天気(晴れ)で、西風でした。昼頃から風が強くなりました(気象台で7 m/s前後)。相対湿度は朝から50%以下で、過ごしやすい午前でした。昼頃から気温が上がり、湿度はさらに30%台まで低下し、汗をかいていても蒸し暑くはなかったので耐えられる暑さでした。温湿度センサーに日射が当たると気温が上昇し、風通しの良い日陰に入ると低下することを繰り返しているので、セミナーで観測した値は不規則にギザギザした変化を示しています。湿度も気温の増減に逆位相で上下しています。本町交差点から三の丸のあたりでは、気温が低めで湿度が高めの様子が伺えます。緑地で日陰になるのと植物からの蒸散の影響でしょう。

エアロゾル粒子数濃度:納屋橋ではセミナーの開始前から風下側で測定していました。トラックも時折通過していたので、高い値が観測されています。観測点で数値を読み上げていたときには低めの値の時がほとんどでしたが、幹線道路沿いを歩いているときに高い値がしばしば観測されていました。昼食の直前には蒲焼きの煙が漂っていましたが、数値的には大きな変化として記録されていませんでした。局所的に高くなった場所はありましたが、28日昼頃の濃度は3千~5千 / ccと、これまでになく低い濃度が続きました。午後も6千~8千 / ccと、1万 / ccを下回る濃度で、例年より低めでした。

CO2 濃度 濃度変化で目立つのは室内に入った時間帯の高濃度です。その他にも周囲を人が取り囲むとCO2 濃度が高くなりました。三の丸のように緑地帯で日射があれば、CO2 濃度が下がらないかなと期待していましたが、西風が強かったからか、前後と濃度は大差なかったです。ひょっとすると、室内時を除き、時別に見たCO2 濃度の低いところ結ぶと、昼に低濃度となる傾向を示しているのかもしれません。

図1 2022年5月28日(土)の観測結果


5月29日(日)

天気概況:29日も朝から日差しが強く、快晴が続きました。前日からの西風も続いていましたが、29日の方が弱め(3 m/s前後@気象台)でした。相対湿度は朝からさらに低くなり、30%台から20%台が観測されていました。気象台でも昼頃は25%まで下がっていました。昼頃から気温が昨日よりさらに上がり、センサーに日が当たると35度を超えていました。気象台でも最高気温は33℃を超えていました。湿度が低かったので、熱風でウッとなりつつも、汗が乾きやすくてなんとか耐えられました。今日も、本町交差点から三の丸の緑地帯で気温が低め+湿度が高めになっていて、クールアイランド化している様子が捉えられました。幹線道路に出た途端に路面からの照り返しで暑く感じました。

エアロゾル粒子数濃度:29日のエアロゾル濃度は、これまでになく大きな増減がありました。まず、セミナー開始時点で継続して3万ヶ / ccを超える濃度でした。納屋橋の交差点で風上・風下にかかわらず濃度が高くなっていました。その後、増減を経て三の丸のあたりで6千 / cc程度の最低値となり、午後はまた1~2万 / cc程度となりました。ちなみに近隣地域におけるPM2.5 濃度は10 µg / m3 前後で大きな時間変化はありませんでした。ですので、朝方になんらかの新粒子生成がおきていたのかなと想像しますが、粒径分布の時間変化を知りたいところです。 

 2018年度のセミナー朝方にも高濃度現象が観測されました。このときも昼に向かって濃度が低下していました。

CO2 濃度: 三の丸界隈でそれ以前に比べて濃度が低下してきたので、「植生がCO2を吸収したからか?」と思いましたが、三の丸を過ぎてからの濃度変化はそのような単純な解釈では説明が付きそうもありません。首にかけて簡易測定するだけでは、わかりやすい結果を得にくいことを改めて感じました。名古屋市の測定が継続されていれば、環境教育にとっても役立つのに・・・・過去データの残骸はこちら

 2022年5月29日()の観測結果

PM2.5 濃度やオキシダント濃度など、大気汚染常時監視データは名古屋市のHPで見ることやダウンロードができます。

  名古屋市の大気環境状況

  名古屋市が行っている大気汚染常時監視局のうち、歩いたコースに近いのは、「若宮大通」の常時監視局です

「そらまめくん」という全国の様子を知ることのできるサイトもあります。過去データはここでダウンロード可能です。

・名古屋気象台での気象データは「過去の気象データ検索」で見ることができます。ここで地点や日付等を選択してダウンロード可能です。

220528観測データ
220529観測データ