立山・室堂平で観測された微細粒子体積濃度の年々変化

東アジアは近年、急速な経済成長を遂げており、その結果、SO2などのガス状大気汚染物質の排出量も増加している。ガス状大気汚染物質の一部は大気中で粒子化し、エアロゾル粒子として風下の太平洋へと輸送される。ガス状大気汚染物質の排出量が増加すれば、結果として生じるエアロゾル粒子濃度も増加するだろう。

中部山岳地帯の立山・室堂平(標高2450m)において、光散乱式エアロゾル計測装置を用い、1999年から粒径別大気エアロゾル数濃度を観測している。 2009年2月までの10年間の観測結果は、大気中の微細粒子(0.3~1.0ミクロン)体積濃度が①5~7月に高く11~2月に低い季節変化と、②冬~春季に年々上昇する傾向を示した。これらの変化をもたらす要因について、立山周辺での気象条件(降水量や気温)の年々変化との関係を検討したが、有意な関係は得られなかった。

一方、排出量の年々変化を考慮した排出量インベントリを用いた化学輸送モデルによるシミュレーションをおこなったところ、観測結果に類似したエアロゾル濃度の季節変化と、冬~春季にエアロゾル濃度が増加する傾向が示された。シミュレーション結果の解析から、中国での人為的ガス状大気汚染物質の排出に起因するエアロゾル粒子の影響を、冬~春季に強く受けることがわかった(立山での人為的汚染由来のエアロゾル濃度の60~80%に相当)。