2024年街歩きセミナーの結果

 2024年7月13日(土)に実施した環境学フィールドセミナー「街歩き現地調査」の結果です。出発時刻や歩いたコースは例年とほぼ同じ(納屋橋を9時半出発~市制資料館でお昼~主税町公園~橦木館~川上邸~佐助邸で解散)です。この観測は、ディーゼル車からの排出ガスなど、燃焼に伴って排出・生成されたばかりの小さなエアロゾル粒子(>10 nm)が、交差点の近傍で局所的に高濃度となる様子を捉える狙いがありました。午前中はほぼ狙い通りにトラック・バスが続けて通る条件でスパイク的に濃度が高くなっていました。しかしお昼ご飯後は、大気の様子が大きく変わってしまい、2~4万ヶ/ccが続いており、ごく近くの自動車排ガス以外の大気汚染の影響を受けていたようです。同様の「ディーゼル車以外の要因が大きい」事例は、23年5月27日、22年5月29日、18年などに観測されています(15年のうち7年分)。幹線道路の交差点で濃度が高くなる「わかりやすい事例」は、22年5月28日や21年6月26日、16年6月26日などの例を参考にしてください。ディーゼルエンジンからの排ガスを綺麗にするディーゼル・パーティキュレイト・フィルターの装着と軽油中硫黄分の低減、アイドリングストップ、電気自動車・ハイブリッド車の増加により、自動車由来の大気汚染が減りつつある事は喜ばしいことです。一方、今日の結果からは、他にも大気汚染の原因が残っていることを示しています。


【使用した機器】

エアロゾル粒子数濃度(TSI:3007、直径10nm以上の粒子数濃度を測定): ディーゼル排気ガスや線香の煙など、燃焼により排出・生成されて間もない小さなエアロゾル粒子の濃度を測定しました。1秒毎に計測し、1分間の平均値として記録しています。

温度・湿度(チノー、MR-6662): 気温・湿度は、センサーが観測者に体に近いため、体温の影響や日射の影響を受けています。逆に言えば、通風管理された気象台での観測値にくらべて、その場所で人が感じる温度・湿度に近いということになります。


【当日の気象状況と結果概要】

天気概況:朝から昼過ぎまで良い天気(晴れ~薄曇り)で、気象台のアメダスでは10~11時頃を境に、1~2 m/sと弱いながら北よりから南よりの風へと風向が変化していました。13時ころから南よりで4 m/s程度と少し風速が強くなりました。歩きながら体感できたように、本町交差点から三の丸のあたりでは、気温が低めで相対湿度が高めの様子が数値にも表れています。市役所に向かって歩いて大津通に出た途端に暑くなっていました。木立があるため地表が日陰になるのと、植物からの蒸散の影響でしょう。このクールアイランドは、天気が良い条件では過去にもほぼ毎年観測されています。

エアロゾル粒子数濃度:納屋橋ではセミナーの開始前から交差点の反対側でも測定していました。トラックとバスが時折通過していたので、短時間に高い値が観測されてヒゲみたいに見えています。午前中はその傾向が続いていましたが、昼食後はなぜか1ccあたりの個数濃度が2~3万ヶ台が続き、D車の交通量とほぼ無関係な濃度変化を示していました。最寄りの大気汚染常時監視局「若宮大通公園」の様子を見ると、PM2.5濃度が11時までは10 µg/m3以下ですが、13時に18 µg/m3へ、SO2濃度も3 ppbへと上昇しているので、南風(海風)にのって港湾部の大気汚染が運ばれてきたためにエアロゾル濃度が上昇したと考えられます。PM2.5濃度は15時には7  µg/m3と低下していました。佐助邸で観測していた数値もどんどん下がって驚いていたのですが、PM2.5濃度の低下と同時だったようです。南風は続いていたので、一時的に酷くなった大気汚染が流れてきたのかもしれません。

・PM2.5 濃度やオキシダント濃度など、大気汚染常時監視データは名古屋市のHPで見ることやダウンロードができます。

  名古屋市の大気環境状況

  名古屋市が行っている大気汚染常時監視局のうち、歩いたコースに近いのは、「若宮大通公園」の常時監視局(自排局)です

「そらまめくん」という全国の様子を知ることのできるサイトもあります。過去データはここでダウンロード可能です。

・名古屋気象台での気象データは「過去の気象データ検索」で見ることができます。ここで地点や日付等を選択してダウンロード可能です。


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