Toshiyasu Shinmen
新免 歳靖 

私たち人類は、様々な道具を作り、それを使って生活を営んできました。石器や土器、木器、金属器のような素材に応じた実用品だけではなく、絵画や彫刻のような美術品など、実に多様なものが、人の手によって創り出されてきました。今日、そのように古くて大切なものを文化財・文化遺産として保護しています。

私の研究室では、過去に作られた文化遺産が、どこで、どのような原材料を用いて、どのような技術によって作られたのかを、科学的な分析装置によって材質や製作技法を調査・研究し、過去のものづくり技術の解明に取り組んでいます。 

Check!
いま研究していること

江戸時代の遺跡から出土した「肥前磁器」という佐賀県の有田町を中心とした地域で作製された「やきもの」の研究を行っています。このやきものは朝鮮半島や中国南部の工人が17世紀前半から中ごろに製作技術を日本に伝えたと考えられています。その技術の中に「色絵」という赤色や黄色、緑色などの色ガラスを磁器の表面に焼き付ける技術があり、「鍋島焼」や「柿右衛門焼」といった高級品が作られるようになります。しかし、この有田の色絵磁器の製作技術については、どのような技術が日本に伝えられ、どのように広がったのかなど不明な部分が多くあります。そこで、遺跡から出土した当時の色絵磁器を科学的に調査して、その製作技術の解明を行っています。

また近年は旧石器時代や縄文時代の黒曜石、縄文土器、江戸時代の金属生産、近代の七宝製品、ウズベキスタンのイスラームガラス、伝統的および近代的な絵画材料、洪水で被災した土器類に発生した物質などの研究も行なっています。 

Interest
特に興味があるのは、染色文化遺産

私の研究対象は、ガラスや陶磁器、顔料といった無機物で作られたものでしたが、現在は染織品、特に染色品に興味があります。数年前からですが、我々の生活に不可欠な「衣食住」の中から「衣」に着目し、学生が身近な染色文化遺産を体系的に学べるような学習プログラム作りをはじめたことがきっかけでした。

伝統的な染色植物(藍や紅など)を実際に大学の農園で育てて、その植物を用いて伝統的な染色技術を科学的な視点で学ぶとともに、地域の伝統的な染色産業の歴史の調査や染色工房の見学も行っています。まだ、道半ばのプロジェクトではありますが、専門家方々や学生などの協力を得ながら、実際のものづくりを通して身近な文化遺産を学べる場づくりを目標としています。 

Books
おすすめの本と理由

文化財や文化遺産を学ぶには対象となるものそのものを学ぶことも重要ですが、製作者である職人や技術者に注目して、彼らが持つ技術を見ていくことも大切です。現代の職人の方々への調査をまとめた本を中心に、中世職人絵図、民藝、近代以降のテクノロジーなどに関する本も挙げておきました。

関美穂子『古建築の技 ねほり、はほり―文化庁選定保存技術保持者14人の記録』理工学社 2000

日本工芸会近畿支部編『工芸の博物誌-手わざを支える人ともの―』淡交社 2001

吉田光邦『日本の職人』講談社学術文庫 2013

網野善彦『職人歌合』平凡社ライブラリー 2012  

柳 宗悦『工藝の道』講談社学術文庫 2005

橋本毅彦『「ものづくり」の科学史 世界を変えた《標準革命》』講談社学術文庫 2013

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