保存科学 ゼミ

 Seminar
保存科学 ゼミ

文化財をなぜ残すのかそしてどう残すのか

文化財は良きにつけ悪しきにつけ、人類の道のりを有形無形に残しています。その評価は時代によって異なりますが、失ってしまえば後世その時代の評価ができなくなります。文化財は歴史の記録という人類共通の財産なのです。

しかし、文化財はただ放っておいただけでは後世に残してはいけません。その材料、材質、構造を見極め、必要な強化処置や場合によっては修復を行い、適切の保管環境の中、保存していく必要があります。

文化財は、時間経過に伴い劣化という問題が生じます。劣化には、紫外線などの物理学的劣化、湿度が影響する化学的劣化、カビなどの生物学的劣化があり、文化財は、これらの劣化因子と自身の多種多様な材料や構造が複雑に絡み合い、腐食、分解、風化、汚損などによりその存在や価値を失います。我々はそのような状態を未然に防止していく必要があります。

一方で、すでに劣化してしまった文化財は修復を行いその価値を取り戻す必要があります。しかし、十分な材料、製作技法などの解明なしでの修復は、間違った価値を与えかねません。

このような、劣化の予防や正しい修復方法の選択のためには、自然科学的調査研究が必要なのです。

Activities
こんなことを学んでいます

保存科学授業の風景

伝統製紙技術の比較調査

和装本の保存修復方法の調査

出土金属遺物の保存処理

大学図書館蔵書の保存状態調査

熊谷平戸大仏の修理方法調査


Seminar Student
ゼミ生たちからのひとこと

7つの異なる分析方法で見る紙繊維

保存科学研究室で学べること

先生のご専門は主に紙文化財の保存科学ですが、その他の素材に対して幅広く対応してもらえます。①⽂化財の劣化、②保存修復⽅法の改良、③保存修復材料の開発、④保存環境の評価、⑤保存修復理念と理論などについて理解を深めていきます。ゼミでは興味のある文献を調べ、自由にディスカッションを行い、時々、文化財関連施設の見学や現地調査にも参加できます。

保存科学実験室があり、卒業研究で実験系研究を目指す学生は先生と研究計画をしっかり組んだうえで基礎研究を行えます。文系か理系かは問いません。実験室ではいろんな試薬や分析機器を扱い、危険を伴うため、守らなければならないルールもありますが、全て指導してもらえます。

Message
教員からのメッセージ

保存科学のテーマの中で幅広く対応し、明確な到達目標を提示させたうえで自ら答えを探る力を養っていき、指導教員としてバックアップしていきます。新しい発見を目指すことも大事ですが、自ら研究を設計できる能力を育むように指導したいと思います。