Hidaka Shin
日高 慎 

皆さんは考古学と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?遺跡?土偶?埴輪?ピラミッド?などなど、それぞれに思い浮かべるものは違うでしょう。それでも昔のモノといったことは共通したイメージとして持っていると思います。私は、大学に入って夏休みの期間に初めて発掘調査に出かけました。埼玉県行田市埼玉古墳群の調査でした。自らの手で土の中から遺物を掘り出す作業を通じて、その面白さにはまってしまったのです。最初は、特にこれといった目的があって大学に入ったわけではありません。単に日本の歴史を勉強したいといった漠然としたものでしたが、発掘にはまってからは、大学の授業の合間にも(あるいはサボって)発掘調査にいきました。

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今研究していること

古墳時代を中心に、埴輪の生産と流通、古代の船、古代の道、古代の祭祀・儀礼、渡来系文物などを研究しています。埴輪は粘土を焼いてつくられた焼きもので大きさはまちまちですが、かなりの重量物です。そのようなものを古墳にまで運ぶのは、おそらく船を使ったのだろうと思いますが、具体的にどのように運んだのはよく分かっていません。船の構造にも諸説あります。様ざまな調査事例から生産と流通に迫っていきたいと思っています。また、古代の祭祀・儀礼の痕跡が遺跡に残されている場合がありますので、当時の心性を理解したいと思っています。さらに、夏休みを利用して栃木県壬生町の国指定史跡である古墳の発掘調査をおこなっています。


Books
おすすめの本と理由

大学に入ってからの授業は、高校までとは違った授業スタイルで、教科書の内容を勉強するというよりは、自ら興味のあることを調べていく必要があります。考古学に関して最近の本では、①近藤義郎『前方後円墳の時代』岩波文庫、2020年、②和田萃『飛鳥』岩波新書、2003年、③関秀夫『博物館の誕生』岩波新書、2005年、川端裕人『我々はなぜ我々だけなのか』講談社ブルーバックス、2017年、文化庁編『日本人は大災害をどう乗り越えたのか』朝日選書、2017年などをあげておきます。難しい概説書や専門書と格闘することも必要になってきますが、新書や文庫等になっている本を読むことをお勧めします。それは、比較的読みやすく書かれていることと、トピックごとに読んでいけるので調べていくきっかけになります。

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文化遺産教育を学ぶことに向いている人

大学で学問に打ち込むためには、興味のあることを突き詰めていく必要があります。突き詰めていくのは、言うは易く行うは難しですが、大丈夫、根気さえあれば誰でもできます。また、色々なことに興味をいだいて、それを突き詰めてほしいと思います。私は、まともな就職をしたのは35歳でした。それまでは任期付きの職でしたが、「まあ、何とかなる」と楽観的に思っていました。もちろん不安はありましたが、その不安のなかで考古学ではない学問領域の本をむさぼる様に読んで時間を過ごしていました。今から考えれば、その時期は色々な知識を蓄積するための時間だったと思っていますし、その時に読んだ本が今になって役に立ったりしています。


Message
受験生に対してのメッセージ

是非、生涯学習・文化遺産教育コースで様ざまなことを学んでほしいと思います。漠然とした興味で良いのです。多くのことは入ってから考えればいいでしょう。私は文化遺産教育の担当ですが、東京学芸大学の強みは、私のような考古学だけでなく、保存科学、文化財科学の教員がいるということです。このような内容を教えている大学は、日本全国を探しても非常に珍しいのです。

今や文化財については、どんな素材のものでも保存や分析などを抜きにしては語れません。社会的にも、人材が求められている分野でもあります。

私たちと一緒に、大学での研究を進めていってみませんか。やる気のある皆さんの入学を、本当に待ち望んでいます。

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