アメリカには政府が提供している子供の早期介入プログラム「Early Intervention program」があり、5歳未満であれば誰でも(ビザの種類に関係なく)受けることができます。ピッツバーグではEIはキンダー入学する前の5歳児までを指して言うようで、3歳未満のプログラムはInfant/Toddler(以下IT)、3歳~5歳までのプログラムはEarly Intervention – Pre-K(以下EI)というように区別しています。このプログラムは、早期に子供の発育発達に気になるところ、不安なところがある場合、専門家と親がチームを組んで、良い方向に向かっていこうというもので、受けられるサービスは以下の通りです。
Physical Therapy(理学療法)
Occupational Therapy(作業療法)
Speech Therapy(言語療法)
Nutritionについてのカウンセラー(栄養士)
子供の発達発育について何か気になるところがあったり不安な時、かかりつけ医師に相談し、サービスを受けたい場合は、医師、または親自身が連絡を取り、 サービスコーディネーターと問題点について話し合いをします。実際にプログラムの提供を受けた方が良いかもしれないと判断されると、evaluation(専門家による子供の評価)を受けます。そして今後どのよう にしていきたいか(例えば、家でサービスを受けたいのか専門機関で受けたいのか、子供が最終的にどのようなゴールに到達すればよいか、週に何回のサービスなのかなど)を親も含めて話し合い、その子供と家族に適したプログラムを組んで、実際にサービスを受けます。
Infant/Toddler(3歳未満)【体験談1】
子供が4ヶ月健診のときに筋性斜頚と診断され、子供病院で受診、Children’s InstituteでPhysical Therapyを受けて いましたが、そこの理学療法士にこんなサービスがあるよと教えてもらい、実際にサービスを受けています。変形性斜頭症も評価の結果、治療したほうが良い ということでヘルメットを装着しています。
向き癖だろう、成長に伴い治るだろうと思っていましたが、身体や視力への発達に影響が出るかもしれないという説明を聞き、日本とは違うんだなあと思いました。
このEarly Intervention Programのサービスを受けてよかったと思うところは、専門家がきめこまかく子供を診てくれる(理学療法を受けた後、セラピーで何をしたか、今後どうしたらよいか、現在の子供の状態など書いてくれます)、子供が一番なれている場所=家でサービスを受けられる、サービスコーディネーターが随時詳しく説明&チェックしてくれるということです。大変なところは、親もチームの一員なので、積極的に話し合いに加わり、どうしたいか伝えていかなければいけないところです。
【体験談2】
知り合いの娘さん(2-3歳)でSpeech Therapy(言語療法)のサービスを受けている子を知っています。泣くとき以外はほとんど何も声を出さないので小児科医に相談したら、紹介してもらったとのことでした。テラピストのお姉さんが週に1-2回自宅に来て、一緒にゲームで遊んだりして
言葉を発する練習をさせていました。1回1時間。毎回、どんなことをして、どんなことが進歩したか、いくつかのチェック項目が付いたレポートをくれて、家でどうやって言葉を話させる練習をするかなどのアドバイスを受けていました。ちなみに、その子の母国語は英語ではないのですが、テラピストは英語で話しかけていました。
【体験談3】
子供が12ヵ月でピッツバーグに来て、13ヵ月の時に重病にかかり、Children’s Hospital に入院しました。
ちなみにこの時点で(病気とは関係なく)、つかまり立ちはできていましたが、両手を離して1人で立つということがまだできませんでした。
その病気は、後遺症が残る可能性があったため、入院中に、Physical Therapistの人が何度も来て、体の動きや反応をよく診てくれました。そして退院する時点で、体の動きは問題なく、おそらく後遺症も残らないでしょうと言われました。しかし、後になって問題が出てくる可能性もあること、13ヵ月で1人で立つことができないのは、やはり発達が遅れているということで、Early Intervention Program を受けたらいいのではと紹介されました。
まず、evaluation(専門家による子供の評価)を受けました。そして今後のプログラムを決めました。実際やったことは、Physical Therapist に家に来てもらい、子供の体(特に足)を鍛える運動や遊びをしながら、歩けるようになるまでサポートしてもらうという内容でした。
リハビリや訓練といったイメージのものではなく、おもちゃやゲームをして楽しく遊んでいる感じです。実際子供が歩けるようになったのは、1歳6カ月。それまでの間、週に一回来ていただいて子供もとても楽しんでいました。実際に家でやってもらうと、こういう遊びや動きが歩くのに有効なんだということが良く分かり、とても良かったです。Physical Therapistに来てもらってなかったら、もっと歩くのが遅くなっていたのでは、と思います。
ちなみに子供は、その後後遺症が出ることもなく、今はとっても元気に過ごしています。でもやはり発達はいろんな面でゆっくりペースです。歩くのもおむつがとれるのもとっても遅かったです。発達はその子のペースなので、早い子も遅い子もいます。でも、もしも何か心配がある方は、直接連絡とるのは勇気がいると思いますが,かかりつけ医師に相談し、Early Intervention Program の連絡の仕方など聞いてみると、スムーズに行くと思います。
Early Intervention – Pre-K:(3~5歳)
ピッツバーグ・パブリック・スクールには120ほどのPre-Kクラス(Early Childhood Class以下EC)があります。入学に際し、保護者は認知、運動、言語、社会性・情緒、聴覚、視覚など各種の発達スクリーニングを行うことに同意するかどうか学校に知らせます。同意した場合、各分野の専門家が学校を訪れ、その子どもの発達程度を測るための簡単なテストを行います。パブリックスクール以外のプリスクールやデイケアでも要請があれば、スクリーニングを行います。スピーチ・セラピストは年齢に見合った「音」がきちんと発音できるか(articulation screening)、言われていることを理解することができるか(receptive language)、言いたいことをきちんと伝えることができるか(expressive language)についてテストします。スクリーニングに通らなかった子どもは、保護者の同意のもと、より詳しい査定を受け、同じ年齢層の子どもと比べてどんなところがどれくらい遅れているのかを調べます。査定の結果ある一定レベルの遅れが認められた場合、査定に関わった専門家たちによりその子どものための教育プランが作成されます(Individualized Education Plan = IEP)。そしてIEPに従い必要なセラピーが施されます。頻度や時間は子どもによって違いますが、スピーチの場合一週間に30分~1時間が一般的です。
ピッツバーグのEIチームには30人前後のスピーチ・セラピストが常勤しており、市内各地の公私立プリスクール、デイケア、ナーサリーなどあらゆるセッティングでセラピーを行っています。学校に通っていない子どもにはホームケアを行うこともあります。
なお、バイリンガル・マルチリンガル児の言語発達レベルをはかるにはその子どもが一番得意とする言語で行うことが原則です。子どもの母語を話すセラピストがいた場合はその言語で、いない場合でも通訳をたててスクリーニングや査定を行います(セラピーとなると毎回通訳をたてるのは難しいため英語で行われることが多いです)。母語では遅れは見られないが、外国語として英語を学んでいるため年齢レベルよりも英語力が拙いという場合はESLの対象になります。母語でも遅れが見られる場合は、全般的な言語発達が遅れている可能性が高いため、スピーチ・セラピーの対象になります。
(nov. 2010)