Nanami A (2025) Species-specific and size-related spatial distribution, and feeding substrates of goatfishes (family Mullidae) in relation to environmental characteristics on an Okinawan corral reef. Marine Biodiversity 55:27
ヒメジの仲間は、あごひげのような器官でエサを探すユニークな魚です。英語では「ゴートフィッシュ」とよばれ、これは「ヤギのような顔つき」を表現しているのでしょう。サンゴ礁ではあまり目立たない魚ですが、食用になる種類もおり、ヒトとの関わりがあります。
この研究では、八重山諸島に生息する7種のヒメジの仲間について、好みの生息海域をサイズ別に詳しく調べました。また、「どんな場所でエサを捕るのか」を明らかにするため、エサを捕る行動を一匹ずつ観察しました。
5種(インドヒメジ、オオスジヒメジ、リュウキュウヒメジ、モンツキアカヒメジ、オジサン)の生息数は、内湾で多いことがわかりました。一方で、残りの2種(マルクチヒメジとアカヒメジ)は、はっきりとした傾向はみられませんでした。
エサを捕る行動を観察すると、4種(インドヒメジ、オオスジヒメジ、リュウキュウヒメジ、モンツキアカヒメジ)は、エサを捕る場所として砂を(有意に)好んでいました。一方で、オジサンは、エサを捕る場所として岩場とサンゴ瓦礫を(有意に)好んでいました。(なお、アカヒメジは、エサを捕る行動を観察することができませんでした。)
サンゴ礁には、色とりどりの魚たちが暮らしています。ヒメジの仲間は、姿形が鮮やかでなく、砂が混じる内湾域に多いため、あまり目立ちません。しかし、彼らの暮らしぶりを調べると、サンゴ礁がつくる様々な環境(内湾の静穏域、砂地、サンゴ瓦礫など)がヒメジたちの生活を支えていることがわかりました。サンゴ礁の生物多様性を守るためには、サンゴだけでなく、サンゴ礁がつくる「地形特性」にも配慮する必要があるでしょう。