アミメフエダイがテリトリーをもつことを発見

Nanami A. & Yamada H. (2008a)

Size and spatial arrangement of home range of checkered snapper Lutjanus

decussatus (Lutjanidae) in an Okinawan coral reef determined using a

portable GPS receiver.

Marine Biology 153: 1103-1111

海洋保護区を設けることで健全な生態系を保全し,水産上有用な沿岸性魚類の資源量を回復させる試みが世界各地で取り組まれています。ある面積の海洋保護区を設定した場合,保護区内に生息できる魚の密度がどの程度か見積ることが大切です。あるいは,ある場所に設定された保護区が魚の行動圏よりも大きくないと,その魚は保護区の外側で漁獲されてしまう可能性があります。つまり,資源管理のために(あるいは健全な生態系を保全するために)海洋保護区を設定する場合には,対象とする魚種の行動圏の大きさを知っておく必要があります。

フエダイ科魚類は,南西諸島や東南アジアで食用とされている非常に重要な魚の仲間です。しかし,フエダイ科魚類については行動範囲や種内競争といった「行動」に関する知見はほとんどないのが現状です。本研究では,八重山諸島に普通にみられるアミメフエダイ(写真)という種類に着目して,彼らの行動範囲の大きさを調べました。

アミメフエダイは,体に網目状の模様があることと,尾びれの付け根に大きな黒い斑紋があるのが特徴です。この黒い斑紋はすべての個体で違っているため,個体識別が可能です。このことを利用して水中目視観察を行なった結果,以下のことがわかりました。

1. アミメフエダイは、各々自分だけの行動圏を持っている。体の大きい個体ほど,行動圏は広くなる。

2. 自分の行動圏の中に同じサイズの個体が進入してくると,攻撃やディスプレイをして追い出す。

3. 自分の行動圏の中に異なるサイズの個体が進入してくると(自分より大きい個体でも小さい個体でも)進入を許す。

本研究では,①アミメフエダイがはっきりとした境界線をもつ「なわばり」をもつこと,②なわばりは,同種同士の個体間干渉によって維持されていること,が明らかになりました。これらの知見は,フエダイ科魚類では世界で初めての報告例です。

         これがアミメフエダイだ!                なわばりの様子

                           (同じ場所になわばりが重なっているようにみえるけど...)


        同じ大きさの魚同士のなわばりは重ならない ! 違う大きさの魚同士のなわばりは重なる!