砂浜海岸の稚魚は、どれぐらいの速さで泳ぐ?

Nanami A (2007)

Juvenile swimming performance of three fish species on an exposed sandy beach in Japan.

Journal of Experimental Marine Biology and Ecology 348: 1-10

砂浜海岸は波浪による撹乱が常に生じている場所ですが、そこには多くの魚種の稚魚が成育場・隠れ家として出現することが明らかになりつつあります。しかし、「寄せては返す波に対して、稚魚がどのように振舞っているのか」ということはあまり明らかにされていません。本研究では、砂浜海岸に出現する稚魚3種の最大遊泳速度と定位能力を計測しました。

振動流水槽を用いて、ボラ9個体・コトヒキ7個体・コバンアジ3個体の遊泳能力を測定しました。

1)最大遊泳能力:流速を5分ごとに増加させ、泳ぎきれなくなる直前と直後の流速を記録しました。

2) 定位能力:周期8秒の振動流を発生させ、最大瞬間流速を段階的に増加させました。給試魚の様子をデジタルビデオカメラで録画し、給試魚の振幅(定義は本文献を参照)を計測しました。

3)体形の計測:①筋肉の割合・②推進系の割合・③体の縦横比・④尾柄高比・⑤尾鰭長の割合・⑥尾鰭のアスペクト比・⑦胸鰭面積の割合・⑧胸鰭付け根の長さの割合、を計測しました。

結果は以下の通りになりました。

1)遊泳能力:全長で基準化した最大遊泳速度は、ボラ=16倍/秒、コトヒキ=12.9倍/秒、 コバンアジ=12.7倍/秒であり、ボラの最大遊泳速度が大きいのは、①筋肉の割合・②推進系の割合・③体の縦横比が大きいことに由来しました。

2)定位能力:定位能力に3種間で有意な差はありませんでした。振動流の最大瞬間流速が給試魚の最大遊泳速度と等しい時、魚の振幅は全長の約8倍であり、砂浜海岸では稚魚は頻繁に振幅していると思われます。