ナミハタが好きなサンゴの種類は?
Nanami A, Sato T, Takebe T, Teruya K & Soyano K (2013)
Microhabitat association in white-streaked grouper Epinephelus ongus:
importance of Acropora spp.
Marine Biology 160: 1511-1517
ナミハタはサンゴ礁にすむハタの仲間で、重要な水産資源です。ナミハタの数を減らさないよう上手に獲るために、様々な調査が必要とされています。
サンゴ礁の魚は、サンゴを住処としてくらしていますが、彼らの住処としてどのようなサンゴが最も適しているのか、その実態がよくわからない種が数多くいます。この研究では、「ナミハタがどのような形のサンゴを住処として好むのか」、潜水調査と実験で調べました。
[潜水調査](結果だけを簡単に説明します)
子供のナミハタ(稚魚)は、ブラシの形をしたサンゴ(ブラシ状ミドリイシ類)を好んでいました。
大人のナミハタ(成魚)は、枝の形をしたサンゴ(枝状ミドリイシ類)を好んでいました。
ダイビングスポットとして好まれる「きれいなサンゴが多い場所」というより、地味なサンゴが多い場所が、ナミハタの子供と大人にとって大切なようです。人間の価値観だけでどのようなサンゴを守るべきかを考えるのではなく、様々な魚たちの好みも考えたサンゴ礁の保護が必要と考えられます。
ナミハタの子供(この写真の子供は7cm)
子供のナミハタが好むブラシ状サンゴ
大人のナミハタ(この写真の大人は25cmぐらい)
大人のナミハタが好む枝状サンゴ(左側のサンゴ)
[実験]
ナミハタは、卵から産まれた直後の「赤ちゃん」の時期は、しばらく海中を漂っています。そして、ある程度大きくなると、海底にある棲み場所に住み着きます(「着底」といます)。
それでは、海中を漂っていたナミハタの赤ちゃんが「着底」するときに、棲み場所を選ぶ能力があるのでしょうか?それを確かめるために、①枝状のサンゴ、②ブラシ状のサンゴ、③サンゴの瓦礫を水槽にセットして、ナミハタの赤ちゃんの能力を調べました。
その結果、枝状サンゴとブラシ状サンゴには好んで着底するが、サンゴの瓦礫にはほとんど着底しないことがわかりました。
ナミハタは、沖縄では大切な水産資源として扱われています。ナミハタの数を減らすことがないように、彼らが好むサンゴをしっかり守り育てる事が大切といえます。
実験につかったナミハタの赤ちゃん。まだサンゴに住みつく前の段階。
実験のデザイン。セットするのはかなり大変なんです!同じ実験を60回くりかえしました!