サンゴ礁のニザダイ科魚類11種の分布特性と摂餌行動
Nanami A (2025) Spatial distributions and foraging substrates of 11 surgeonfish species (family Acanthuridae) in an Okinawan coral reef. Estuarine, Coastal and Shelf Science 326: 109540
Nanami A (2025) Spatial distributions and foraging substrates of 11 surgeonfish species (family Acanthuridae) in an Okinawan coral reef. Estuarine, Coastal and Shelf Science 326: 109540
ニザダイの仲間はサンゴ礁でよく見かける魚で、様々な種がいます。あまり注目されることはありませんが、美しい姿をしている種類や、食用になる種類が知られており、ヒトとの関わりがあります(映画ファインディング•ニモに登場するドリーは、ナンヨウハギという種類で、ニザダイの仲間です)。
ニザダイの仲間は、海底に生えている微細藻類(産毛のような姿をした海藻の仲間)やデトリタス(海底に積もっている泥のようなもの:栄養があります)を食べるため、「海底を掃除する」役割をもつと考えられています(諸説あります)。
この研究では、八重山諸島に生息する11種のニザダイの仲間について、好みの生息海域をサイズ別に詳しく調べました。また、「どんな場所でエサを捕るのか」を明らかにするため、エサを捕る行動を一匹ずつ観察しました。
好みの生息海域
① 6種(サザナミハギ、ナガニザ、ニジハギ、ナミダクロハギ、ミヤコテングハギ、ゴマハギ)の生息数は、波当たりの強い場所(リーフの外側)で多いことがわかりました。
② 1種(クロモンツキ)は、波当たりの弱い場所(リーフの内側)で多いことがわかりました。
③ 3種(ニセカンランハギ、テングハギ、ヒレナガハギ)は、小さいときは波あたりが弱い場所を好み、大きく育つと波当たりの強い場所へ移動すると考えられました。
④ コクテンサザナミハギは、はっきりとした傾向がみられませんでした。
どんな場所でエサをとるのか
岩、サンゴ礫、砂でエサをとることが頻繁に観察されました。このような場所は、エサとなる微細藻類やデトリタスが多いためと考えられます。
今回調べた11種の中で、ナミダクロハギ•ニジハギ•ヒレナガハギは、観賞魚として人気があります。また、テングハギ•ミヤコテングハギは、サンゴ礁に囲まれた世界中の国々で食用とされています。とりわけ、テングハギは大変美味な魚で、沖縄では「ツノマン•チヌマン」等の名前で販売されています。
多種多様なニザダイの仲間が生息するためには、種類ごとの好みの場所やエサをとる場所を守る必要があります。「生きたサンゴが多くの魚類の生息を支える」ことは知られています。一方で、ニザダイの仲間の暮らしぶりを調べると、サンゴ礁がつくる地形(内湾の静穏域、外洋に面した場所)や、サンゴではない場所(岩、サンゴ礫、砂など)が生息を支えていることがわかりました。サンゴ礁の生物多様性を守るためには、サンゴだけでなく、サンゴ礁がつくる様々な「地形特性」への配慮も必要と考えられます。