サンゴ礁の魚の形と餌の興味深い関係

Nanami A & Shimose T (2013)

Interspecific differences in prey items in relation to morphological

characteristics among four lutjanid species

(Lutjanus decussatus, L. fulviflamma, L. fulvus and L. gibbus)

Environmental Biology of Fishes 96: 591-602

生き物たちを見ていて、「どうしてこんな形をしているんだろう?」と思ったことはありませんか?

生き物の形は、生き抜くことや、子孫を残すことと密接に関係しています。

ここでは、「餌をとる」ということに着目してみましょう。生物にとって「餌を捕まえる」ということは、生き抜いていくために欠かせません。餌を効率よく捕まえるために、生物は実に様々な形をしています。例えば、ダーウィンフィンチの嘴や、コウモリの羽の形は、種類によって実に様々で、餌を効率よく捕えるために進化した結果です。

「サンゴ礁の魚でも、同様な現象がみられないだろうか?」

この問いを明らかにするため、4種類の魚に着目して研究してみました。ここで着目したのは、体形の多様性(さまざまな形をしていること)と餌利用の多様性(さまざまな餌がいること)の関係です。

魚類が餌を捕るには、①餌との間合いを詰める、②餌を捕獲する、③餌を保持して飲みこむ、の3つのステップを踏まなければなりません。

①餌との間合いを詰める→泳ぐ素早さが関係します。体形の特徴が反映されます。

②餌を捕獲する→口の開閉スピードが関係します。下あごの形態によって、口の開閉スピードが変化します。

③餌を保持する→歯を使って保持します。歯の長さが反映されます。

この研究では、4種類のフエダイ類を選びました(アミメフエダイ、ニセクロホシフエダイ、オキフエダイ、ヒメフエダイ)。写真にあるように、体形は4種類で異なっています。前者の2種類は細長くシャープですが、後者の2種類は体高があり、ずんぐりしています。

まず、餌を調べました。下の図にあるように、細長い体形をもつ2種類は魚を主に食べており、ずんぐりした体形をもつ2種類はカニを好んで食べていました。

サンゴ礁には、様々な色や形をした魚がすんでいます。

一般に「多様性」というと、一定面積にすんでいる生物の「種類数」を用いて示します。しかし、魚の種類の数値だけを扱うことは、サンゴ礁の魚の本当の魅力、すなわち、色や形の多様性については触れることができません。

私は、サンゴ礁の魚の多様性について、単なる数値ではなく、いわゆる「生き様」の多様性を明らかにしたいと思ってきました。本研究によって、サンゴ礁の魚たちの「生き様」の多様性について、その一端が垣間見えたといえます。

4種類のフエダイの仲間

4種類の主要な餌を調べた結果。「%IRI」という指標で調べた

下アゴを調べることで、口の開閉スピードと噛む力がわかる

下アゴについて、計測した部分を示した図

4種類のフエダイの仲間の「歯」の様子