第3章 生き物を見分ける(1):種類を見分ける

3-1 図鑑で種類を覚える

生き物の種類を見分けることを、同定といいます。カラー写真の図鑑で、生き物が生きている状態の写真を使っているものが一番良いです。色や形が似ている種類の見分け方を記した図鑑もあり、とても役にたちます。また、同じ種類でも色にバリエーションがある場合があり(色彩変異といいます)、そのような情報を詳しく記した図鑑もあります。

図鑑には、生き物の名前だけではなく、大きさや分布域についての記述があり、このような情報も大変役に立ちます。自分が調べている海域に、その生き物が分布しているのか確認できるからです。もし、ある海域で分布が確認されていない生き物を見つけた場合、少なくとも①本当にその海域に分布している、②誤った同定をしている、という2つの可能性があると思います。①の場合、それは分布域の新しい知見となります。②の場合は、似た種類と比べてみて、もう一度調べなおすと良いでしょう。

図鑑によっては、標本の写真を使っている場合があります。標本の色が生きている時と違う場合があるので注意が必要です。

3-2 水中で見分ける

図鑑で予習をしたら、今度は水中で種類が見分けられるか試してみましょう。生き物を水中でみて、図鑑で覚えた種類が頭に浮かんでくるでしょうか?図鑑でみた印象と違う種類がいるかも知れません。データを取る前に、何度か下調べをしておくと良いでしょう。

図鑑のカラーコピーをラミネートして水中に持ち込めば、役にたちます。あるいは、種類のわからない生き物の写真を撮るか、水中で特徴を記録しておくと、後から図鑑で調べることができます。記録をとる場合は、色•形•模様•大きさなどを記すようにします。詳しいスケッチは必要ありません。自分が理解できる程度で十分です。

3-3 水中で記録する時のポイント(私の場合)

海の生き物の名前は、まともに記すと結構長い場合があります(例えばタテジマキンチャクダイ)。潜水しながら効率よく記録していく場合、私の場合は名前の略号を自分で決めて記録しています。例えば、ルリスズメダイはR、ネッタイスズメダイはNEなど。後でデータを整理する時に混乱しない限り、どのような略号を使っても構いません(Rをル、NEがネでも構わない)。工夫して効率よく記録できれば、潜水時間の節約にもなります。

また、3-2で触れた生き物の特徴を記録する場合ですが、私の場合、カタカナと漢字を気の向くままに併用します(下の写真の場合:黒 = クロ、青 = アオ、黄は漢字)。記録しやすく読みやすいのであれば、どんな表記でも問題ないと思います。

私が記録した魚の特徴のメモ。ずいぶんヒドいイラストです。テンジクダイ科の一種が水中で同定できず、色と模様の特徴を記録しました。図鑑をみた結果、同定ができました。

私が記録した魚の特徴のメモ(2つ目の例)。イトヒキテンジクダイでした。