肉食性のアミメフエダイでも、サンゴがないと生きていけない

Nanami A. & Yamada H. (2008b)

Foraging rates and substrate selection in foraging activity of checkered snapper Lutjanus decussatus

(Lutjanidae) in an Okinawan coral reef.

Journal of Fish Biology 73: 1484-1488

生物が生存していく上で,餌を獲ることは必要不可欠です。十分な餌を獲得することは生存率を上げるだけにとどまらず,繁殖投資へも影響することから,その個体の適応度の大小に大きく関わってきます。

フエダイ科魚類は,南西諸島や東南アジアで食用とされている非常に重要な魚の仲間です。胃内容物調査によって,フエダイ科魚類はエビ・カニ類や魚類などを食べることがわかっています。しかし,実際の摂餌行動を調べた研究はほとんどありません。本研究では,八重山諸島に普通にみられるアミメフエダイという種類に着目して,彼らの摂餌行動を調べました。

観察にあたっては,尾びれ付け根にある黒い斑紋を元に個体識別をし,同じ個体について時間帯別に観察しました。そして,以下のことが明らかになりました。

(1)全長15cm未満のアミメフエダイ(N=10)は,日中(9:00-17:00)餌を獲っている。全長15cm以上の個体(N=10)は,時間帯によらず一定の摂餌率であった。

(2)アミメフエダイは,生きた枝サンゴ(枝状ミドリイシ・ユビエダハマサンゴ)を摂餌場所として選んでいる。(Manlyの選択係数:design II, Sampling protocol A)。一方,砂地・礫地などはあまり利用しない。これは,複雑な形状のサンゴの内部に多くの餌生物が潜んでいるためと考えられた。

本研究では,

①一般に夜行性といわれるフエダイ類でも,種によっては昼行性である(夜間は眠る。下の写真をご覧ください)。

②アミメフエダイにとっては,「餌を獲る場所として生きた枝サンゴが必要であること」が明らかになりました。

サンゴ礁域の水産資源を守っていくうえで,健全なサンゴ礁を守っていく必要があることを,本研究は直接的に示しています。

アミメフエダイは泳ぎながら餌をさがします 生きた枝サンゴの中にいる小さな動物(カニや小魚)を食べている。

生きたサンゴがないと、アミメフエダイは生きていけない。




   眠るアミメフエダイ(夜間に撮影)