サンゴ礁に暮らすブダイのかじりとり能力と形態の多様性

Nanami A (2016)

Parrotfish grazing ability: interspecific difference in relation to jaw-lever mechanics and relative weight of

adductor mandibulae on an Okinawan coral reef.

Peer J 4: e2425

サンゴ礁に暮らすブダイの仲間は、色彩が美しく、体が比較的大きいため、とても目立ちます。

ブダイの仲間の特徴は、オウムのくちばしそっくりの口をもっていることです。この口でサンゴ礁の硬い海底をかじりとります。最近の研究では、ブダイが海底をかじることで、サンゴの子供が成長しやすくなったり、白い砂浜ができあがることがわかってきました。

しかし、ブダイの仲間にはさまざまな種類がいるため、

①種類によって、どの程度「かじりとり能力」が違うのか?

②種類ごとの「かじりとり能力」の違いは、ブダイの仲間の「形の違い」をどの程度反映しているのか?

ということは、よくわかっていません。

この問いに答えることは、サンゴ礁の魚たちの「形の多様性」と、その魚たちの暮らしぶりの関係を探るという、大変興味深いものです。

ブダイ5種の上アゴと下アゴの写真。種類によって形が違います。

この研究では,ブダイのかじりとり能力を定量化する方法を考案しました。

ブダイのかじりとり能力を定量化する方法を説明した図

この方法を用いて5種のブダイのかじりとり能力を比較したところ,種間で違いがあることがわかりました。

かじりとり能力を5種で比較したもの。

①かじりとり能力は,ハゲブダイが最も高く,イチモンジブダイは最も低い。

②成長に伴って,かじりとり能力は高くなっていく。

本研究では,海底をかじることに関わる,①アゴの形,②アゴを動かす筋肉の量,③歯の形も調べ,種間で異なることがわかりました。この3つの要素が種間で異なることが,ブダイ類のかじりとり能力に影響することを示すことができました。

本研究では,海底をかじる回数(5分間あたりのかじりとりの回数)についても,5種で比較しています。詳細は原著をご覧ください。