Nanami A, Kawabata Y, Sato T, Yamaguchi T, Kawabe R, Soyano K (2014)
Spawning migration and returning behavior of white-streaked grouper
Epinephelus ongus determined by acoustic telemetry.
Marine Biology 161: 669-680
サンゴ礁にすむ沿岸性魚類には、卵を産む季節になると特定の海域に集まり産卵する習性をもつ種類がいくつか知られており、「産卵集群」とよばれます。
産卵集群の漁獲は、世界各地のサンゴ礁域でみられますが、集中的な漁獲による影響が心配されています。
西海区水産研究所亜熱帯研究センターと長崎大学環東シナ海環境資源研究センターは、「バイオテレメトリー」という方法でナミハタの産卵移動に関する生態を調べました。「バイオテレメトリー」とは、魚の体内に超小型の超音波発信器を取り付け、発信される信号を受信することで、魚の行動をリアルタイムで追跡できる画期的な方法です。
今回の調査では、ナミハタの産卵場から5km離れた場所に、発信器を付けたナミハタを30匹(オス9匹、メス21匹)放流し、行動を追跡しました。
その結果、ナミハタは産卵が近づくと産卵日数日前に5km離れた産卵場に移動し、産卵を終えた後、再び5km泳いで、元の場所に戻ってきていることがわかりました。この帰巣性(元の場所に戻ってくる能力)の精度はかなり高いこともわかりました。また、「オスはメスより早く産卵場に来て、産卵した後もしばらく産卵場に留まる」という生態についても、科学的に実証することができました。
この研究は新聞で紹介されました。
バイオテレメトリのしくみ
調査の方法を簡単に示したもの
オスのデータの一例
メスのデータの一例