バッテリバックアップ回路について

リチウムイオン電池の取り扱いについて

リチウムイオン電池の運用に際しては、必ず過充電と過放電を防止する保護回路が必要です。また、すべてのセルにおいて出荷時にバランス充電された信頼性の高いメーカーの新品を使用することと、容量の均一性を保つためのバランス充電回路が組み込まれたシステムが必要になります。取り扱いを誤ると破裂・発煙・発火等の恐れがあり大変危険です。

バッテリバックアップ回路というのは、外部電源と内臓電源の切り替えをシームレスに行うための制御回路です。動画Part2のCG演出のアレです。

例えば、ACアダプタ接続時にはACアダプタから直接電源を取りつつ、同時にバッテリの充電を行います。ACアダプタが抜かれた時、つまり外部電源が切断された際には、即座に内蔵バッテリから電源を取るように切り替えます。一般的にこの切り替えには電磁リレーやMOS-FETなどのスイッチが使われます。しかしスイッチである以上、一瞬の無電源時間が発生してしまいます。この瞬間停電時の電力を補う制御も含めてバッテリバックアップ回路は成立するわけです。

え?だってPS2Uでもバッテリバックアップ回路を使っていたでしょ?何を今更・・(動画Part2でくっさいCG演出までして)

PS2Uに使われたバッテリバックアップ回路は簡易的

PS2Uのバッテリバックアップ回路は左図のような簡易的なものでした。電圧の高い外部電源と電圧の低いバッテリ電源をダイオードのみで制御しています。この「負荷」とは電気で動かす装置などのことです。(※5Vと3.7Vは例えであり、実際の電圧と異なります)

上:外部電源接続時(5V)は電圧の低いバッテリ(3.7V)は抑え込まれる形になり、「負荷」には外部電源からの電流が流れます。

下:外部電源未接続時(0V)は電圧の高いバッテリ(3.7V)からの電流が「負荷」に流れます。

この回路では、常にバッテリがスタンバっているため、スイッチ切り替え時の無電源時間が発生しません。とても簡単です。

バッテリバックアップ回路は代表的なところで言うとゲームカートリッジの基板などにも使われています。セーブデータを保存するためには常時、メモリICへの電源供給が必要です。そのためコイン型電池でメモリICに電源供給をしていますが、ゲーム機からの電源供給があるときはコイン型電池を消費しません。

ゲーム機の電源が切れた時は、スタンバっていたコイン型電池からの電源にシームレスに置き換わるためセーブデータは保護されるわけです。このコイン型電池と回路が充電式だったりすると、ゲーム機稼働中は電池に充電されるため、より長くセーブデータを保存しておくことが可能になります。

昔はゲームソフトのパッケージに「バッテリバックアップ内蔵」などと誇らしげに記載されているものもありましたが、それはこんな回路のおかげでゲームの続きに必要だったパスワード入力などが必要なくなった、というわけだったのです。

さて、PS2Uの外部電源にはPS2に内蔵されていた電源を別のケースに入れて(ACアダプタとして)使用しています。

ところがこの電源。PS2に負荷がかかると電圧が下がります(これを電圧降下と呼ぶこともあります)。定常時7.5Vのところ、6V台になります。それでもPS2自体は何ら問題なく動くので設計的にはこの電圧降下も織り込み済みなのかもしれませんが、ともかくまずいのはバッテリの電圧を下回ってしまうことです。

すると、上図のように電圧の高い方の電流(今回はバッテリ)が「負荷」へと流れます。つまり、外部電源を接続しているのにバッテリから電源を供給している状態になります。ただその時、外部電源は「負荷」から解放され電圧降下は収まり、その瞬間バッテリの電圧よりも高くなるため再びこちらから供給されるようになります。すると、また電圧降k(略)

・・と、いうループに陥ります。

「外部>バッテリ」と「外部<バッテリ」のループ。

「外部<バッテリ」の時間自体は極々短いため、バッテリの消費自体はわずかですが、外部電源接続時にバッテリを消費してしまうのは欠陥と言わざるを得ません。PS2Uの解説ページにも記載はありますが、PS2Uはこのような問題を抱えていました。

なので、今回のPS4Uでは動画Part2のように、MOS-FETとSSRによるバッテリ配線の完全切り離しを行うことにしたわけです。