レストア作業(内装編)

外装の塗装を乾かしている間に内部のレストアを行います。

内部のレストアとは言うものの、現実的に私のできる事と言えば簡単な清掃やメンテナンスと電解コンデンサや消耗品の交換くらいです。ただ、電解コンデンサについてはとっくに耐用年数を超えているので延命を考えるならば分解したついでに交換してしまうのが望ましいです。しかし、作業上の不手際などでPCを壊してしまっても誰も保証してくれないのは言うまでもないでしょう。

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ケーブル補修

ノート型PCの構造上、ヒンジの中を液晶モニタやスピーカの配線が通っています。液晶モニタの配線は金属メッシュのシールドが巻かれ、さらにその上からアセテートテープを巻き付けてあります。

液晶モニタ部分を開閉するたびにヒンジの中でこの配線はよじれてストレスを与えるわけですが、長年のストレスによりテープが剥がれてしまい、劣化したテープ糊がヒンジの隙間から外側までポロポロとこぼれ出てくるような状態でした。

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しかもこのテープ糊はブチルゴム系のようで、とにかく他の配線や部品を真っ黒に汚します。御多分に漏れず私のNxも酷い有様だったので、汚れた部分をきれいに清掃してアセテートテープを巻き直しました。

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電解コンデンサ交換

Nxのマザーボードは基板2枚を上下に重ねた構成です。

画像のものは下側の基板で、各スロットやインターフェイスのコネクタが実装されています。裏側にもマイクロICやその他の半導体があります。

事前に基板2枚の各裏表、計4面に点在する電解コンデンサの位置と極性、静電容量、電圧(耐圧)を一つ一つメモしておきます。おそらく必要な電解コンデンサを入手する際に、すべてチェックする事になるでしょうが、もしも電解コンデンサを外したタイミングで電話でも掛かってきて、その後いざ作業再開となった時にこれらの情報が分からなくなってしまうと悲惨です。

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この白い箱状のものも電解コンデンサです。

Nxの少し前のモデルまでは4級塩電解コンデンサという問題性のあるもの(詳しくは電解コンデンサ問題でググって下さい)が使われていたそうですが、Nxにおいてはその問題はクリアされているらしいです。

画像のように、容量(μF)、耐圧(V)、極性の順に箱にプリントされています。極性は「■」や「*」などの印がマイナス側として記されています。試しに一つこの箱を割ってみたところ、円柱状の一般的なアルミ電解コンデンサと同じようなものが入っていました。衝撃や振動、限りあるスペースなどの悪条件に対応した高級品という印象です。

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基板上に「1301」とプリントされた個所は電解コンデンサを外したところです。一見すると錆びているように見えたので液漏れによる腐食かと疑いましたが、これは接着剤の跡でした。接着剤が劣化していたのか分かりませんが、少し力を加えると小さな剥離音と共に電解コンデンサの箱を基板から剥離できます。40個以上のうち3割程はすでに剥離しており、足だけで基板上に付いている状態でした。

電解コンデンサの足をハンダごてで外す前に、あらかじめ電解コンデンサにほんの少しだけ力を入れて基板から剥がしておきました。接着されたまま無理に足だけをハンダごてで外そうとすると、基板のパターンを痛めてしまう気がしたからです。白い箱タイプは表面実装タイプのため、接着剤を剥離してしまえば足を外すのは簡単です。

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極性は基板にもプリントされているので間違えることは無いと思いますが、一部不明瞭な個所もありましたので、やはり必ずメモしておくべきだと思います。

特に注意が必要だと思った事は、同じ規格の電解コンデンサが手に入らず、やむなく耐圧を大きめにした場合などです。その場合、寸法が大きくなる事もあり、組み上げの際に他の部品やスルーホールと干渉する恐れがあります。また、多くの箇所で横倒しで付けることになるので、これらの事情を踏まえながら新しい電解コンデンサの足を曲げる加工が必要になります。この加工の時に電解コンデンサの足の付け根のシール(蓋)に負担の掛かる曲げ方をすると液漏れを誘発し、寿命を短くしてしまう可能性があります。

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画像は同じ規格の電解コンデンサを入手できなかったため、先述のように耐圧の大きなもので対応した結果です。分かりづらいですが、上側のマザーボードと組み合わせてみた際に電解コンデンサのてっぺんがすれすれでした。

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元々ここには同じものが2つ並んでしました。左側が交換前のもの、右側が耐圧が大きく背の高い電解コンデンサに交換後のものです。ノート型のPCに限った話では無いでしょうが、電解コンデンサを交換する時は、おいそれと大きな容量、耐圧に変えるのは考え物です。

40個所以上作業しましたが、唯一基板上に液漏れを目視できたのはこの画像の1個所だけでした。とはいえ、無事に見える電解コンデンサもNxの使用年数を考えれば蒸発による容量抜けという状況も大いにありうるので交換やむなしです。

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基板上には後付けのリード線も散見されます。出荷前に工場でなんらかの調整をされたものだと思われます。

画像のように、電解コンデンサの足にリード線がハンダ付けされているものはまだいいのですが、電解コンデンサ自体(白い箱タイプ)が後付けされているところが1か所だけありました。その場合、基板上に極性などがプリントされていないので注意が必要です。

こうして基板2枚の各表裏、計4面の電解コンデンサを張り替えました。

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最後に無水エタノールを染み込ませた綿棒でハンダのヤニで汚れたパターン付近をきれいにします。

基板全体の洗浄はする必要が無い程きれいだったので見送りました。前に分解清掃した時から10年以上経たちますが、驚くことに埃はほとんどありませんでした。まあ、起動回数も稼働時間もたかが知れていますが・・。それと実はこのPCには、送風ファンの類が一つもありませんので比較的に埃を寄せ付けにくいのでしょう。

以前、初めて分解した時の内部はもっと埃っぽかったという印象があります。電子機器ですからファンは無くとも多少の埃を呼びますが。父のオフィスでは絨毯の上にでも直置きして使っていたのかと疑いたくなります・・。

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それはともかく、正直なところもっと派手な液漏れを想像していたので拍子抜けしてしまいました。ただ、そのような状態ならばまともな動作もできていなかったでしょうし、何より私に修復できたかも分かりません。

ちなみに、画像の白い箱タイプの黄色い付着物は、液漏れではなく接着剤の跡です。

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仮組みして動作確認

あとは、私の何らかの不手際による問題が出ないことを祈るばかりです・・。

仮組みして電源を投入します。もの凄く緊張しましたが、起動してくれました。

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電池

ついでにバッテリ類も20年以上前のものなので何とかしなくてはなりません。バッテリと言ってもNx稼働用のバッテリパックではなく、内臓されている各種設定などの保存に使われるバッテリです。紛らわしいので以下、電池と表記します。

画像の電池はPanasonicのVL2320という2次電池で、内臓時計や98NOTEメニュー(いわゆるBIOSのメニュー)の設定を保存しておくためのものです。古くなった左側のものから配線を外して右側のネットショッピングで入手した新品のものに付け替え、ACアダプタを接続してしばらく充電しておきます。

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ノート型のPC-98にはもう一つ、レジューム用電池が内蔵されています。このレジュームの機能とは、昨今のPCでいうところのサスペンドに似たものです。ノート型のPC-98のオートパワーオフなどと組み合わせて使うことで省電力性を確保できます。

このレジューム用電池の入手性は著しく悪く、他のユーザの方々もかなり苦労されているようです。しかも古くなると液漏れしてPCを汚損してしまう危険性があるという少々厄介な電池でもあります。私の場合、どうしてもレジュームの機能を使わなければならないという場面は想定されないし、液漏れも怖いのでPCから外して保管しておくことにします。

ちなみにレジューム用電池、時計用電池、増設メモリはパネルを1枚外せば簡単にアクセスできる構造です。素晴らしい出来ですね。