皆無軟体通信2023年
読書の泉2023年12月号
『古代日本の超技術 新装改訂版』 志村史夫著 講談社/ブルーバックス
・半導体技術者が、遺跡や歴史的建造物を技術的に分析し、解説してくれる。歴史と半導体の技術が一度に学べるお得な本。
『図解 気象学入門 改訂版』 古川武彦/大木勇人著 講談社/ブルーバックス
・雲はどうやってできるのか、なぜ空中に浮いているのか、きちんと説明しようとすると結構、難しい。本書を読めば、説明できるようになるかもしれない。
『続 窓ぎわのトットちゃん』 黒柳徹子著 講談社
・40年以上前のベストセラーの続編。ほとんどのエピソードに「戦争」の影を感じる。
・それでも、読後感が素晴らしいのは、トットちゃんと家族の「たくましさ」にあるのではないか。強く生きるのは難しいが、そうありたいと願う。
『ユダヤ人は、いつユダヤ人になったのか』 長谷川修一著 NHK出版
・イスラエルとハマスとの戦いが始まり、「そもそもユダヤ人とパレスチナって何?」という疑問に答えられない自分がいたので、危機感を感じて読んだ。
・キリスト教徒の言うところの「旧約」聖書を読め、と言うことは、よくわかった。
『サピエンス全史』 ユヴァル・ノア・ハラリ著/柴田裕之訳 河出書房新社・河出文庫
・「待望の文庫化」ということで、貧乏なヲヤヂは買うのである。
・本書の骨子は、すでにテレビやネットで紹介され過ぎており、読んでいて、その復習をしていた感は否めなかったものの、通して読むと、いろいろ考えさせられる。
・仏教に関する記述が多く、肯定的に表現されているのが興味深かった。次の人類には、仏教的思考が必須なのかもしれない。色即是空、空即是色。
読書の泉2023年11月号
『分水嶺の謎』 高橋雅紀著 技術評論社
・降った雨水は分水嶺を境にして別々の方向に流れていく。分水嶺の標識があるとか、谷中分水界とか片峠とか、知らないことがいかにたくさんあるか思い知らされる。
・本書は、国土地理院の地形図だけで、結構面白い旅ができることを明らかにしてくれる。
・本書の副題は「峠は海から生まれた」で、表紙で「謎」のネタバレをしてしまっているところが、とても興味深い。
『植物たちの不埒なたくらみ』 稲垣栄洋著 三笠書房/王様文庫
・野菜や果物は、人類の品種改良で今の形になったのではなく、植物が人類を操り、改良するように仕向けていたのかもしれない、という衝撃の事実が明らかになる本。
・人間の営みも、自然現象の一形態に過ぎないという視点で見れば、進化論でいう自然淘汰には、人為淘汰も含まれてしまう。視点の転換からいろいろ考えさせられる本。
・もっと深く知りたい人のための文献リストとかWebサイトのリストがあったら、更に興味深い本になったと思う。
読書の泉2023年10月号
『温かいテクノロジー』 林要著 ライツ社
・「人類の愛と手間を増やすロボット」LOVOTの開発に携わる著者が、人類の進化やドラえもんの作り方、AIとの協働など、多種多様な観点からテクノロジーについて論ずる。
・これからのエンジニアのあり方、育て方についても考えさせられる本。
『言語の本質』 今井むつみ・秋田喜美著 中央公論新社/中公新書
・オノマトペを入り口にして、そもそそも言語とは何かを考える。なぜ人類は、言語を作り、普及させることができたのか? 謎は深まるばかりだが、面白い。
・コンピュータ言語についても考えられたら、もっと面白い。
『電線の恋人』 石山蓮華著 平凡社
・筆者は、需要家に電力を届ける配電線を愛でる「電線愛好家」を称し、「タモリ倶楽部」にも出演している。電線の製造法や種類など専門知識の説明も興味深い。
・全編を通じてポジティブな電線愛表現に満ちた本。
読書の泉2023年09月号
『オカルト編集王』 三上丈晴著 Gakken
・日本一怪しい雑誌、「ムー」の編集長が裏の裏まで明かすという本。
・ムーは「知的エンターテインメント」と明言しており、「嘘かほんとかわからないが、なんか楽しい」というスタンスで触れるのがよろしいかと思われる。
『人口減少時代の農業と食』 窪田新之助/山口亮子著 筑摩書房/ちくま新書
・日本の農業が危ない。しかし、その危機を乗り越えようと努力する人々がいることを本書で知ると、勇気づけられる。
・日本の農業を応援しよう。
読書の泉2023年08月号
『コスタ・コンコルディア』 林譲治著 早川書房/ハヤカワ文庫JA
・地球外考古学SF。『工作艦明石の孤独』の第3巻第8章に登場する、3000年前にワープアウトしてしまった宇宙船乗組員の末裔の話を軸とする。
・考古学の探究する面白さと、現代の社会にも通じる多様性需要の話など、さまざまな課題を提示してくれる。
『客観性の落とし穴』 村上靖彦著 筑摩書房/ちくまプリマー新書
・「客観的なデータ」からは。本当に必要な情報が抜け落ちているのではないか?客観的事実だけを頼りに判断しても良いものか?という疑問を考えさせられる。
『オーラリメイカー〔完全版〕』 春暮康一著 早川書房/ハヤカワ文庫JA
・知性を持つ、多種多様な生命体の描写に圧倒される。生命とは何か? 知性とは? 改めて考えさせられる。
・最初は、うっかり「オライリーメイカー」と読んでしまい、Makerムーブメントの話かと思ってしまった。
『YMO 1978-2043』 吉村栄一著 KADOKAWA
・本の題名にある1978年はイエロー・マジック・オーケストラの活動開始年、2043は、何かのインタビューからYMO解散の年とされた年らしい。
・アルバムごとに、まるで違う雰囲気で、新しい音楽世界を表現してきたYMOの歴史を辿ると、その意味も見えてくる。
読書の泉2023年07月号
『AIとSF』 日本SF作家クラブ編 早川書房/ハヤカワ文庫JA
・人工知能ブームである。人工知能といえばSF。本書は、人工知能テーマの短編集である。
・なぜか、仏教とAIのつながりを扱った作品が多いような気がした。禅問答のできるAIこそ究極のAIなのかもしれない。
・本書には、22人のSF作家が作品を寄せているが、残念ながら、作品を読んだり、書籍を買ったりした作家は、1/4にも満たない。ヲヤヂも、まだまだだな。
『半導体戦争』 クリス・ミラー著/千葉敏生訳 ダイヤモンド社
・アメリカ、ソ連、中国といった超大国の都合で、右往左往させられる半導体産業の歴史がわかる。
・歴史上有名な企業名は出てくるが、具体的な製品名が記述されていないので、そこをフォローした文献が欲しいところ。
『半導体産業のすべて』 菊地正典著 ダイヤモンド社
・日本の半導体が危ない!と最近喧しいが、どうすればいいかを冷静に長期的な視点で見ることができているのだろうか?
・本書を読んで、半導体の問題を考える基礎知識を身につけよう。
読書の泉2023年06月号
『円 劉慈欣短編集』 劉慈欣著 早川書房/ハヤカワ文庫SF
・『三体』の作者の初期作品短編集。あまりにも過酷な状況の物語が多い中、「円円のシャボン玉」だけは、『ふわふわの泉』みたいな技術開発ホラ話の味わいで、癒される。
『半導体有事』 湯之上隆著 文藝春秋/文春新書
・日本の半導体産業が危機的状態に陥って久しいが、最近では、台湾企業TSMCの工場誘致など巻き返しの動きが盛んだ。
・本書を読むと、半導体産業の復興には、製造技術だけでなく、原材料の調達から、販路の確保まで、戦略的な施策が必要であることがわかる。
読書の泉2023年05月号
『未踏の蒼穹』 ジェイムズ・P・ホーガン著/内田昌之訳 東京創元社/創元SF文庫
・「金星人」が人類滅亡後の地球上の遺跡を調査する中で、人類滅亡の経緯と「金星人」の真実を解き明かしていくSF。
・それはないだろうという大胆なアイデアを力技で読ませる著者一流の技が光る。
『ここまでできる自衛隊』 稲葉義泰著 秀和システム
・法令の条文、例示と図解で、自衛隊が法の範囲内でできることを解説した本。自衛隊について議論する前に、是非とも押さえておきたい基礎知識が身につくはず。
・映画「シン・ゴジラ」で、やたらと会議のシーンばかりが続くのも、本書を読むと腑に落ちる。
『古地図で楽しむ伊豆・箱根』 池谷初恵・大和田公一編著 風媒社
・古くから観光地として知られた、伊豆・箱根を古地図で訪れることができる本。
・カラーの地図が収録されており、美しさがよくわかるが、ぜひ実物を見たいとも思う。
『工学部ヒラノ教授と昭和のスーパーエンジニア』 今野浩著 青土社
・工学部は、人の役に立つ技術を開発する人材を育てるところだが、その中で研究や教育をしている人々には、なかなか光が当たらない。だから、「工学部の語り部」と帯にある、今野先生の存在感は重要だ。
・本書は、ヒラノ教授の恩師たる先生方のお話。すごい人はすごい。
『音楽は自由にする』 坂本龍一著 新潮社/新潮文庫
・坂本龍一の自伝。すごい人はすごい。
『工作艦明石の孤独 1-4』 林譲治著 早母書房/ハヤカワ文庫JA
・ワープ航法で地球圏から遠く離れた星系に人類が植民した世界で、突然ワープ航法が使えなくなるという事態が発生。そこに地球外生命体とのコンタクトもからまるヤヤコシイお話も、4巻で完結。
・技術や社会の描写がなんとも緻密で興味深い作品である。
読書の泉2023年04月号
『無情の月』 メアリ・ロビネット・コワル著/大谷真弓訳 早川書房/ハヤカワ文庫SF
・1950年台に宇宙開発が飛躍的に進んでいたら…という想定の歴史改変SF
・20世紀少年少女が雑誌や図鑑で夢見た月面基地が、そこにある、という感覚がとても良い。
『誰も語らなかったニッポンの防衛産業』 桜林美佐著 潮書房光人新車/産経NF文庫
・防衛費増額の是非が議論されている中、読んでおきたい一冊。
『自分だけのボードゲームを作ろう』 Jessse Terrance Daniels 著/金井哲夫訳 オライリー・ジャパン
・今では「ゲーム」といえば、コンピュータとディスプレイを使ったゲームになってしまったが、昔は基本的にボードゲームやカードゲームといった、いわゆるテーブルゲームしかなかった。
・古今東西のゲームを分析して、その要素を解き明かし、新しいボードゲームの作り方まで知ることができる、楽しい本。
読書の泉2023年03月号
『バイオスフィア不動産』 周籐蓮著 早川書房/ハヤカワ文庫JA
・家から一歩も出なくても快適な自給自足生活ができるバイオスフィアIII型建築。究極の引きこもり生活が実現できる。
・そんな建築物にほとんど全ての人類が引き篭もってしまった世界で、その建築物の住人たちのクレームに対応するサイボーグと人の物語。
『誰のためのデザイン? 増補・改訂版』 D.A.ノーマン著/岡本明他訳 新曜社
・使いにくい製品や、やたらと不具合が生じる製品は、みんなデザインが悪いのだ!という本。素敵なモノづくりのスタートはデザインにあり。
・20年近く前に図書館で借りて読み、衝撃を受けた本。その後入手困難になってしまったので、増補・改訂版が手に取れるのは、とても嬉しい。
読書の泉2023年02月号
『世界は単位と公式でできている』 福江純著 日本能率協会マネジメントセンター
・単位を見ると、公式がわかる。公式を見ると単位がわかる。
・実際の数値例を挙げて計算してみせるところが、なかなかいい。
『帝国日本のプロパガンダ』 貴志俊彦著 中央公論新社/中公新書
・日清戦争から太平洋戦争まで、大日本帝国がいかに国民の戦争熱を煽ったかが、数々の資料でよくわかる。
・世界がその当時と似てきた今だからこそ読みたい一冊。
『工作艦明石の孤独3』 林譲治著 早川書房/ハヤカワ文庫JA
・ワープについて、とことん拘ってみた作品の3巻目。
・宇宙で、科学と技術を駆使したモノづくりのエピソードが興味深い。
・地球外知的生命とのコンタクトも絡んで、これぞSFだ。
読書の泉2023年01月号
『三体0 球状閃電』 劉慈欣著/大森のぞみ、光吉桜、ワン・チャイ訳 早川書房
・宇宙での人類と地球外生命との冷徹な戦いを描いた『三体』3部作の前日譚。
・『三体』で天才物理学者として活躍する丁儀と『三体』には写真だけ出てくる林雲が登場する。超兵器の開発ストーリーは『三体』と大きく重なるものを感じる。
『NUDGE 実践 行動経済学 完全版』 リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン著/遠藤真美訳 日経BP社
・ちょっとした「しかけ」で、人々を導く”NUDGE”( ナッジ)の本。2008年に出版されたものを追補した完全版だという。
『数学から創るジェネラティブアート』 巴山竜来著 技術評論社
・螺旋やタイルの模様は、数学的に定義できる。だから、プログラムで自動的に生成することもできる。その様々な例を、詳しい解説とともに知ることができる。
・Processingというプログラミング環境を使って、比較的簡単にプログラムを実行できるのが面白い。ただ、書籍には全てのコードが掲載されているわけではないので、出版社のサポートページからダウンロードしたソースコードと合わせて使いたい。