月刊皆無軟体は、皆無軟体の活動をお知らせするサイトです。
電子工作や、ソフトウェアの使用感などをお知らせしていたのですが、今は書評しかありません。
・ひき逃げの加害者の自動車は、ほんの小さな塗料の破片から特定できる……これは、小学生の頃、学研の学習マンガで初めて知った衝撃的な事実だ。本書には、ひき逃げ車種の鑑定方法はもちろん、医学鑑定、個人識別、化学鑑定、プロファイリング、そしてDNA鑑定など、その原理と方法が簡潔にまとめられている。
・実際の事件をもとにしたエピソードは、なんとも生々しい。安全な生活というものは、貴重なのだな。
・なぜ、あの人の依頼は断れないのか? なぜ、要らないモノを買わされてしまうのか? こんな疑問も、本書を読めば、理由がわかる。
・論理よりも感情で動く(動かされる)人間の特質を巧みに利用して、人の行動をコントロールする数々の技術が、わかりやすい言葉で整理・分類されているのが面白い。
・本書の「印象操作」の章には、相手に好印象を与えるための話術が、具体的な例題とともにクイズ形式で解説されている。お互いが気分よく過ごせるか、険悪な雰囲気になるか、言葉ひとつひとつが重要なのだ。
・本書には、悪用されそうなコワイ技も説明されているが、「悪用している人は、すでにとっくの昔から悪用している」という厳しい現実も認めざるを得ない。
・本書は、アッラーを唯一神とするイスラームという宗教の成立と、イスラーム国家の成立や衰亡の歴史を簡単に眺めることができる書物である。年代でいえば、紀元7世紀から12世紀くらいまでのイスラームの歴史が書かれている。
・本書で書かれている時代では、イスラーム国家は最先進地域であった。十字軍の遠征なども、イスラームの目からの記述が徹底しているから、なんだか新しい発見があったように感じる。本書では、イスラームに対する「暴力と剣がちらつくなんかコワイ感じ」は、キリスト教聖職者がつくったものとしている。今も昔も、イメージは操作され、つくられるのだ。
・日本の思想を流れる三つの原理を「生命の思想」、「心の思想」、「地獄の思想」と分類し、日本人と仏教のかかわりを考える。
・日本が中国や西洋文化よりも優れていたもの、それは「フィクション文学」だという。本書では、「源氏物語」、「平家物語」、能、近松門左衛門、宮沢賢治の作品の中に、仏教の、特に地獄の思想を見出し、明解に論じている。
・キリスト教の聖書を、最初から最後まで読もうとすると、どうも迷路の中に入り込んだ気持ちになる。本書では、なぜ、聖書がよみづらいのか、その理由をくどいほどに考察している。そして、旧約・新約それぞれの聖書について、信仰のない者でも、迷わずに読み進めるガイドがあるところがおもしろい。
・美術、写真、新聞、放送、映画、漫画、アニメ。こららの文化部に共通の点は、世界に一つしかない作品を創ることを楽しむ(苦しむ?)ところだ。創ることを楽しむには、それなりの意欲と能力を持った少年少女たちが集う必要があるわけで、一つの高校で、これらすべての文化部がそろっていたなら、なかなか幸せな学校だと思う。
・本書は、とある高校のアニメーション研究部を舞台にした、正当派高校文化部ストーリーだ。とにかくアニメーションを作ることが好きでたまらない主人公と、彼女に影響されながら成長していく少年少女たちの姿がまぶしいくらいに描かれている。女子が一生懸命に頑張って、男子がサポートするという図式は、現代の高校生によくある図式だ。
・アニメの作り方教室として読んでも面白いぞ。作中で語られる伝説のアニメ「アクアス」とか、大人気ライトノベル「言霊少女」も気になる。
・職場は宇宙!のマンガといえば、「プラネテス」や「アステロイド・マイナーズ」などを読ませてもらった。それらの作品に比べると、本書は、さらに未来の話のような雰囲気がある。
・なんといっても、軌道上にある町工場が舞台なのだ。主人公は、その町工場で働く職人だ。ガンバレすごいぞ宇宙職人!と、エールをおくりたくなる作品だ。
・会計検査院のお役人と大阪のおっちゃんたちが対決だ!400年の長きにわたって、秘密裏に維持されてきた巨大組織の謎が今、明らかになる。
・なんともすばらしいホラ話である。好きだな。こういうの。
・中央対地方、男対女、体制対非体制……様々な対立がホラ話の中で際立ち、考えさせられる。
・「男はバカ、女はしたたか」ということも、うまく描写されていて、共感できる。
・仕事に時間をかけて一生懸命やっているのに、利益につながらない。そんな人を本書では「残念な人」と呼ぶ。
・コンサルティング業を経営する著者が、残念な仕事の仕方と、残念にならない自分の磨き方を伝授する。本書で取り上げられる事例は、どれも身近で分かりやすいものばかり。もっとも、安易に身近でわかりやすいものを求めすぎるのも残念なことなのかもしれない。
・本書の最終章には『「意識改革」はしなくていい』という項目があった。意識が変わったかどうか、客観的な評価はできない。客観的に見えるのは、行動である。だから、意識改革よりも行動改革を目標とするのだ、という論点はあまりにも明確なものだ。残念な私は、これに今まで気づくことができなかった。そうか、「意識改革」策がうまくいかないのは、こういうことだったのか。
・文系と理系を分ける、「効率重視」の教育システムに限界が見えている。これは、日本に特有の現象かと思ったら、英国にもそのような問題があったようだ。
・生命科学、脳科学、情報学の分野は、もはや文系・理系、両方の知見を持つ専門家を必要としている。
・本書は、どちらかといえば、文系の研究分野に理科系の方法論を適用することで、新たな研究分野が広がることを具体的な事例を挙げて説明している。理科系の分野に文科系の方法論は、適用できるのだろうか?
・福島の原子力発電所事故の前と後を比べれば、「放射能」と「放射線」の違いを理解している人は確実に増えたと思う。本書は1998年に単行本として世に出たモノだが、「放射能」の問題を含めて、科学技術の肝にあたる部分のわかりやすい解説がすばらしい。著者自身による味のあるタッチの解説イラストも素敵だ。写真を見るよりはるかにわかりやすい。
・現代の若者は、科学「離れ」、理科「離れ」をしているのではない。日本人は、いつの時代でも科学とは距離を置いていたのだ、という見方も納得させられる。確かに、政治家や官僚、そして世論の動向に大きな影響のあるマスメディア関係者には文系が多い。そもそも「文系」と「理系」に分けて科学的素養の乏しい知識人を育成している制度に問題があると思う。
・各章において、マスメディアや政府、政治家の科学的無知・無関心を糾弾する内容となっている。では、どうすればよいのか? まだ答えは出ていない。
・時は2038年、今よりもちょっと便利な装置が当たり前のように使われている社会。人工知能が搭載されたロボットが家庭用に市販され、なにもない空間に画面を投影できる技術が実用化されている。作品の端々に現れる未来社会の描写がすばらしい。
・地球外知性体とのファーストコンタクトがメインテーマの作品だが、どんなに未来になっても、人と人とのコミュニケーションは難しい、そんなメッセージも伝わってくる。友人、親子、兄弟といろいろな絆のあり方が丁寧に描写されている作品でもある。
・見開き2ページに一つの古今東西の「からくり」が小さなイラスト付きで紹介されている。その数122種類。
・随所に日本と西洋の科学や技術に対する思想の違いが論じられている。江戸時代の身分制度が現代の理科離れにつながると論じるあたり、なかなか興味深い。
・確かにヲヤヂも、機械装置やエネルギーを使って便利になったり、楽になることへの抵抗感というか罪悪感がある。この感覚が技術の発展を阻害したらしい。
・日本の技術の明日はどっちだ?
・電子計算機よりも遥かに進んだ陽電子頭脳を搭載し、人間のように、あるいは人間以上の能力を発揮するロボットたち。知性の劣る人間と知性の高いロボット、どちらに価値があるのか?あなたは「人間の方が大切に決まっている」と断言できるだろうか?
・本書では、さらにロボットを製造する会社の世界支配への危惧・警鐘も聞こえてくる。現代におきかえて考えれば、巨大IT企業による情報支配が問題となっている。40年以上前に書かれたSFが怖いほど現代と重なる。
・テレビニュースは不偏不党の事実を伝えているのか?答えは否である。本書はその具体例をいくつか挙げ、さらにはテレビ報道の内容を正確にとらえるための見方を解説する。
・ドキュメンタリー番組というのは、制作者の仮説をもとに構成され、撮影・編集が行われる。取材途中で仮説の誤りが分かったとしても、その事実は報道されない。
・また、テレビは見映えがしないモノは報道したがらないことも注意が必要だ。テレビで放送されないからといって、それがとるに足らないものであるとは限らない。
・本書には、新聞記者の質の低下を危惧する記述もある。マスメディアが流す情報を正しく読み解く力をつけなければ、と再認識させられた。
・梶尾真治がタイムトラベルを描くと、とにかくせつない話になる、という印象が強かったが、本短編集でその思いを強くするとともに、「それだけではないな」と奥行きを感じることができた。
・日本SFの原点ともいえる「もしも・・・だったら」をとことんまで追求した、作品集。
・「7」とあるが、事実上は新シリーズの第1巻だ。
・苦難の旅を経て帰還した、ギアリー率いるアライアンス艦隊だが、今度は異星人の支配星域へ派遣される。人類の理解を超えた異星人の生体とふるまいの謎が徐々に明らかになる。
・超光速航行技術はあるが超光速通信技術がない人類と、超光速通信をもつ異星人との戦いに勝利するのはどちらだ?技術的な仮説実験も興味深い。
・自動車やコンピュータのような、壊れないように頑丈に作られた「硬いシステム」も、いつかは朽ち果て、機能を停止する。しかし、生命は、あえて壊れやすく作られた「柔らかいシステム」を採用し、常に再構成を繰り返しながら、システムとしての不滅性を実現した。これが「動的平衡」だ。
・本書では、DNAの本質を鋭く考察し、遺伝子のON/OFFのタイミングを司る、なにかが存在するというエピジェティックスについても、簡潔に説明している。
・実におもしろい。
・会計検査院のお役人と大阪のおっちゃんたちが対決だ!400年の長きにわたって、秘密裏に維持されてきた巨大組織の謎が今、明らかになる。
・なんともすばらしいホラ話である。好きだな。こういうの。
・中央対地方、男対女、体制対非体制……様々な対立がホラ話の中で際立ち、考えさせられる。
・「男はバカ、女はしたたか」ということも、うまく描写されていて、共感できる。
・心霊現象、予言、超能力・・・ 世の中には、これらを信じている人と信じない人のふたとおりしかいないと思っていたが、そうではなかったようだ。
・それは、「なぜ信じてしまうのか」に興味をもつ人の存在だ。この人たちは心理学的手法を使って、幽霊を見てしまうからくりを説明しようとする。
・結局のところ、その秘密は脳の働きにありそうだ。人は見たいものしか見ることができない。このページをご覧になっているあなたもそうでしょう?あ、こんな文章は見たくもなかったですか?
・地球上の生命は細胞からできている。様々な元素を細胞の外から取り込んでその形を保つ。そして細胞分裂によって増殖する。細胞は地球上の広範囲に分布するナノマシンだ。
・本書は、この細胞の不思議なはたらきを分かりやすくまとめたもの。
・肉眼では見えない微小な世界を、どのような実験や観測で解明していったか、その方法も知りたくなった。
・ピアツーピアネットワークで動画を共有するという、末端のインフラまで広帯域回線となった世界で展開される、夢と希望の物語。読むと元気が出ること請け合い。表紙が、そうとう痛い感じなので、ヲヤヂは買うのをためらわれる作品だが、最近はもうどうでもよくなってきたぞ。
・本書をあえて分類するならば、宇宙系ハードSFの短編集である。ハードSFのファンをうならせつつ、ボーカロイドとか、インターネットのサービスをこよなく愛する向きへの配慮も十分ある。本書の物語の鍵となるボーカロイドの名前が「小隅レイ」というのが、またSFファンをうならせる心遣いだ。
・とにかくサービス精神旺盛な、おもてなしのSF短編集だ。
・認知心理学は、コンピュータをツールとして駆使する心理学だ。アシモフの作品にはロボット心理学者というのが登場するが、認知心理学者は人間の知覚・記憶・言語・思考を研究する。
・人間の認知のモデル化の研究が進んで、完成度の高いモデルをコンピュータプログラムで実装すると、人間のような機械ができるのだろうか?
・マンガ『テルマエ・ロマエ』が映画にもなって、世の中なんだかローマブームである。
・本書と同様のタイトルの本が、巷にあふれている。本書は古代ローマ帝国について戦争よりも政治や経済、日常生活について興味深い内容が読み取れる。
・今後、『日本はなぜ滅んだか』なる書物が出版される日が来ないように、日々努力せねばなるまい。
・UFO、異星人、超能力、心霊現象、超科学について、「正しいマニア」になるためには正しい知識を身につけなければならない。原典にあたり、正しい情報ソースを選り分け、と、これはもはや「研究」といっても差し支えないであろう。
・本書は、そんな研究を楽しみたい向きには、最高の入門書となるだろう。
・「宇宙兄弟」がアニメ化されたり映画化されたり、金冠日食が日本で見られそうだったり、なにかと宇宙が話題になっている。書店でも宇宙関連書籍の品揃えが豊富だ。
・本書は、ペンシルロケットからHII型ロケットまで(未来のロケットとしてイプシロンにも言及している)の日本の宇宙開発の歴史と、宇宙飛行士の歴史がコンパクトにまとめられている。科学技術的な内容に重点をおいた構成で、日本の宇宙開発の課題である官僚機構の問題についてはほとんど触れられていない。
・8年前の本ではあるが、『国産ロケットはなぜ墮ちるのか』(松浦晋也著 日経BP社)とあわせて読むとおもしろいかもしれない。
・国際宇宙ステーションISSで日本人が長期間働くような時代となった。「職場は宇宙」がまさに現実のものとなっている。とはいえ、まだ宇宙空間は一般人の職場ではないが。 ・本書は、ISSのある低い軌道から、月、火星まで、現在の技術でも到達可能な「宇宙空間」で人間が暮らすための住居・設備について、解説した本である。 ・ちょっとリアルな宇宙SFを書こうと思ったら、ぜひ読んでおきたい本。
・主人公のマイルズは17歳、貴族にして国家を動かす首相の息子。しかし胎児のときにあびた毒ガスの影響で、骨が弱い。このため、士官学校の試験に失敗。将来を絶望しながら、母の故郷の星を訪れる。 ・そこで、とある事件に巻き込まれる、というか、首をつっこんだことから、人生が大きく動き始める。 ・明晰な頭脳・高い知性とハッタリで、あれよあれよという間に組織のトップに上り詰めるストーリーが痛快だ。
・自由にOSを入れ替えて遊んだり、好きなコンピュータ言語でアプリケーションソフトウェアを作ったり、こんなことができるのが「パーソナルコンピュータ」の醍醐味だろう。
・オンラインでしか利用できず、「端末」と化してしまったコンピュータを「パーソナル」なものに変えるべく、深井零がとった行動は……
・この短編「ぼくの、マシン」が、2002年の作品と知って驚き、『戦闘妖精・雪風 解析マニュアル』に所収ということで懐かしさも感じた。
・本書は、「言葉使い師」神林長平の共通テーマといえる「コミュニケーション」の本質、「フィクション」の役割などなど、問題提起をお楽しみあれ。
・遺伝子操作によって生み出された「クアッディ」は、脚の代わりに手がある。要するに手が4本あるのだ。これは、無重力環境で効率よく作業するために最適な形態だ。
・このクアッディーたちに溶接技術の教育をするために派遣されたレオのキャラクターが素晴らしい。エンジニアの仕事にこの上ない誇りと自信を持っている。そして、知識と技能で課題を解決する。実践力こそエンジニアの神髄だということがよくわかる。
・物語は、新しい技術の開発により、クアッディは価値を失う。そのとき、レオはどうする??? 知恵と根性で危機を乗り切り、「自由」を目指す姿が素敵だ。
・科学手品、アルコールロケット、宇宙、静電気、発電……とにかくいろいろな科学の話題を、「やわらかく」4コママンガにしてある。ルリコ先生が怖くてクールだ。
・2巻が待望される。
・本文のなかで何度か現れる言葉「働くことと生きることが同義語の人たち」が心に突き刺さる。町工場で働く職人たちは、まさにそういう人たちなのである。
・一方、日本には「働くことと稼ぐことだけが同義語」である人々が増えていると指摘する。これはアメリカ流の企業経営の思想なのだが、創業した会社を、稼ぎのために簡単に手放してしまうという、あの考え方である。・最近の我が国の不況や若年層の失業などの問題を解決するには、働くことと生きることが同義語になるような社会システムの再構築にあるのかもしれない。
・21世紀初頭の職業プログラマの常識を、おもしろおかしく綴った本。章末の用語集もなかなか面白い。
・プロフェッショナルなプログラマになるための、C言語コーディング法の解説も面白い。
・『Chapter 6 私の「コンピュータ」履歴書』は、ヲヤヂの履歴書とかなり重なっていて、とても懐かしい気分になった。もっとも、著者のLepton氏の方がちょっと先輩のようなのだけれども。
・職業としてプログラムを書くには、個人の技術力だけではダメで、チームワーク、営業センス、企画力等、とにかくいろいろな能力が必要となる。本書を読むことで、それが実例とともに、くっきりと浮かび上がる。
・最近流行の「できる人の仕事術」の本とは、まったく趣が違うが、本書をしっかり読み込めば、あなたも仕事のできる人になれるかもしれないと思えなくもない。
・地殻変動による海面上昇で絶滅の危機に瀕した人類は、自らの遺伝子を改造することで絶滅のリスクを減らすことを選んだ。
・現在から見れば、絶望的な環境にある未来社会で、国家権力同士の熾烈な覇権争いと、その末端で働く官僚の活躍が描かれている。
・遺伝子改造を施された「海上民」の描写が、とてつもなくエキゾチックで、「マン・アフター・マン( ドゥーガルディクスン著)」を彷彿とさせる。
・物語の後半では、さらに人類滅亡の危機が訪れ、もう勘弁してください!と叫びたくなってしまうほど。
・前半を読むと、分子生物学っておもしろそうだなぁ、と感じ、後半まで読み進むと、分子生物学者の仕事は大変だなぁ、自分は分子生物学者でなくてよかった、と思ってしまう本。
・分子生物学の研究成果が、どのような実験や観察によって得られたのか、その実験方法を含めてドラマチックに語られている。
・表題は「分けてもわからない」だが、本文では、「世界は分けないことにはわからない、しかし分けてもほんとうにわかったことにはならない」とある。「ほんとうにわかる」ことがわかるのも、結構難しいものだと思う。
・ローマ人というと、私だけかもしれないが、現代のローマ市民ではなく、古代ローマ帝国の国民を思い浮かべてしまう。
・その古代ローマ人への20の質問を通じて、リアルな古代ローマ帝国の政治・経済・社会を描き出すのが本書の面白いところだ。
・記録というものは、面白いことや変わったことを中心に残されることが多い。文学作品と歴史的な記録の区別が明確でない場合は、その傾向が強まるだろう。そのような偏向した記録の中から、リアルな状況を推測しようという試みは、知的好奇心をくすぐられる。
・本書は、大乗仏教の立場に立ちながら、小乗仏教の資料も駆使して、釈迦牟尼世尊の人間としての生き様を描く。とてもやさしい言葉で書かれていて、癒される。
・釈迦にまつわるお話には、生まれていきなり歩いたとか、「天上天下唯我独尊」と言ったとか、釈迦を人を超えた存在としてとらえているものがある一方で、説法によって多くの弟子、信者を獲得する地道な姿が描写されたものもある。ここには、大乗仏教と小乗仏教の違いがあるらしい。
・大乗仏教と小乗仏教の違いを経典に即して分かりやすく解説してくれる本があったら読みたいと思った。
・「教科書」とタイトルにあるように、iOSのアプリケーション作成について、手取り足取り教えてくれる。一般的な例題を詳しく解説した後、簡単な練習問題で確実に動作することを確認できる。すべての練習問題は、開発環境の使い方まで図入りで丁寧に説明されている。一つ一つの練習問題は独立しており、どの問題からでも試すことができるのも素晴らしい。
・残念ながら本校執筆時点での最新版はXcode 4.4なので、本書のとおりに入力できない部分がほんの少しある。しかし、この問題は本書のサポートウェブサイトを参照すれば解決できる。
・本書を読んだ後に、Objective-Cのもうすこし詳しい解説を読むと、もっといいかもしれない。
・ゲーム理論やデータの吟味の仕方など、入手した情報から、いかに意思決定を行うか、興味深い実例とともに解説されている。
・原理や設計だけわかっても、製品は作れない。ものづくりにかかわっている人間には当たり前のことだが、そうでない人たちには、どのくらい伝わっているのか。
・1997年初版の本書だが「日本にアメリカ式をもち込んだら、日本の企業はすべて並みの会社になってしまい、アメリカ企業の戦略にひとたまりもなく破れる」という言葉が、鋭く現代日本に突き刺さる。
・マスコミの報道に大きな問題があることが繰り返し記述されている。マスコミ報道は遅い、世論調査はどうにでも答えを操作できる、マスコミは日本のマイナスイメージばかりを強調する、マスコミは情報操作に踊らされているなどなど。
・100ミリシーベルトから10ミリシーベルトまでの低線量被ばくで、発がんのリスクが高まるかどうかは、よくわからない。リスクの高まる明確な根拠となるデータが存在しないからだ。飲酒や喫煙による発がんリスクの方が大きいとされている。
・チェルノブイリの事故では、強制移住による生活習慣の変化からくるストレスによって体調を崩した人の割合の方が、放射線による健康被害を受けた人よりも多いらしい。
・放射線を「適正に怖がる」ためには、なによりも線量の正確な測定が必要であることが分かる。正確な情報をどうやって入手するかが大きな課題である。
・1987年の初版の本である。本書でいう「宇宙のトイレ」は、アメリカのスカイラブのものをさす。
・国際宇宙ステーション(ISS)に日本人宇宙飛行士が長期滞在する時代になったが、すでに四半世紀以上前にアメリカは宇宙で暮らす実験をしていたのだと思うと、彼我の差を思い知らされる。
・最近出版されたISSでの暮らしを解説した本と一緒に読むと、技術の進歩した部分とそうでない部分を確かめることができて、刺激的に読める。
・日本史でも近代から現代は、学校ではあまり深く教えてくれない。西郷隆盛とか勝海舟とか坂本龍馬とか、人物名は知っているが、その人たちがどんな立場で、どんな考え方で行動していたのか、さっぱり分からない。
・本書では、日本を封建制度から、いきなり近代国家に変えてしまうという革命的な「明治」時代の始まりを、人物を語ることで浮き彫りにする。
・一つのことを説明しようとして、余談の茂みに深く入り込んでしまいがちだが、その寄り道がまた楽しい。
・予知能力者が未来の犯罪を予測、未然に犯罪を防ぐという制度が実現された社会。犯罪を抑止する立場の人間が、未来の犯罪者だと予知されたらどうする?複雑なストーリーで、頭がこんがらかること請け合い。
・本書は、同名の映画になった「マイノリティ・リポート」と映画「トータル・リコール」の原作となった「追憶売ります」も収録されている。SFならではのアイデアストーリーと、どんでん返しを楽しみたい。
・バッハと言えば、ヨハン・ゼバスチャン・バッハ。バッハの生き方を知ることで、作品の鑑賞にも深みが増す。
・バッハと言えばグレン・グールドが真っ先に思い浮かんでしまうヲヤヂだが、彼以外の奏者のバッハも聴いてみたくなる一冊。
・無料インターネットプロバイダー「ハイパーネット」を起業した著者がその隆盛と没落を淡々と記している。
・本書では、日本の経済界が「経済的合理性」を軽視していることが、繰り返し指摘されている。我が国では、「合理的」な判断よりも慣例や横並び思想、責任回避が重用視されているようだ。不景気から脱却するには、ここのところの変革が必要だろう。
・怪我や病気が原因で切断された腕や脚が痛む「幻肢」という現象や左半身が完全に麻痺しているのに、それを認めない(認めたくないのではなく)病態失認など、脳がつくりだす不可思議な現象が、その原理の究明への道筋とともに説明されている。仮説を立て、実験で確かめる。科学の基本がここにある。
・盲点の実験や錯視の実例など、脳のはたらきを試して実感できる内容も多く、サービス精神旺盛な本だ。
・衝撃的だったのは、視覚に障害があって見えていないはずなのに、手紙を郵便ポストに入れる動作ができるという事実だ。見ていることを意識していることばかりではなく、無意識に動いてしまっていることがあるらしい。疲れた靴屋を助ける小人さんは本当にいるかもしれないぞ。
・本書は、1980年代末から1990年初頭にかけて、コンピュータに侵入を繰り返すハッカーの記録。Apple][eをモデムに接続して通信するというと、牧歌的なイメージがあるが、本書にでてくるハッカーたちは、そんなところは微塵もない。
・まだ不正アクセスが法で規制されていない時代である。本書には検挙されたハッカーたちの裁判の様子まで記録されているが、なかなか難しい裁判であったことがわかる。
・谷甲州のハッカーSF『ヴァレリア・ファイル2122年』が出版されたのが1987年頃で、本書のハッカーたちとレティやMKの雰囲気がよく似ているように感じた。とにかく、他のシステムを自由に操るときを至福の時と認識できるハッカーと言う人々は、常任の理解を超える存在ではある。
・ヲヤヂは高校生、大学生の頃「SFマガジン」を毎月読んでいた。その表紙は、センスオブワンダーを感じさせるすばらしい作品ばかりだった。作品には、必ず挿絵がついていて、挿絵が気に入ったものから読み始めたりしたものだ。抽象画や油絵からマンガ風のものまで、様々なタッチの挿絵が、SFの世界に潤いを与えていたものと思う。
・本書は、昭和30年代から平成の初めまでに活躍した(今も活躍している)挿絵画家のプロフィールや作品の特徴をコンパクトにまとめたもの。
・改めて古い文庫本の表紙を見て、画家の名前を確認してみたくなった。
・世界のソニーを創った森田昭夫氏の語録とその解説本である。論語の解説本のような体裁が面白い。ビジネスマンにとっては、孔子よりも偉大なのかもしれない。
・ヲヤヂは、長年ソニー製品にあこがれ続けてきた。でも、自分で購入したのは、ポータブルラジオと安物のモノラルラジカセくらいだなぁ。あっ、SONYのMSX2を買ったような気がするぞ。
・精神病というととっても暗い、もう人生終わりだぁというイメージがあるが、心を病むことは誰にでも起こりうることだ。特別な病気ではない。
・精神障害とは…精神科で行っている治療とは…精神科医になるには…といった疑問に答えてくれる本だ。
・心身症について解説した後で、「高学歴者が研究者として大成しない傾向がある理由」などと本題と関係なさそうな話(でも結構面白くて共感できる)が載っていたりするふしぎな本だ。
・人間は運転する生き物である。本書を読めば、それが実感できる。また、運転ができる人は、選ばれた人たちでもある。運転者たちの技量向上への真摯な姿勢に心うたれる。
・本書には「胃カメラ」とか「スキージャンプ」とか、これが運転なのか?と首を傾げたくなるものも説明されているが、それらにもやはり運転の魂が入っていることに気づかされる。
・「リング」と呼ばれる高速情報ネットワークが、地球全体をつなぐ高度情報化社会が実現した近未来の日本社会が舞台。遺跡から発見された謎の粘土板、脳にコンピュータを埋め込まれたネズミの原因不明の死亡など、序盤から読者を惹きつける謎のてんこ盛りだ。
・ウェアラブル・コンピュータの普及、人間の能力を遥かに超える人工知能、テロで破壊された原子力発電所からの放射能汚染による日本列島分断、街中いたるところに存在する監視カメラ、定説にとらわれず、歴史を自由に解釈するグループの台頭……などなど、フィクションとして片付けられないようなリアルな社会の描写が恐ろしい。本書の刊行は2003年10月だ。2003年といえば、皆無軟体では、次のようなスペックのPCを自作している。
CPU Intel Pentium 4 2.40B GHz (FSB 533MHz)
M/B Gigabite GA8-PE667pro (chipset Intel 845PE)
Memory Samsung PC2700 DDR 512MBx2
HDD IBM Deskstar (AVV2070) 120GB
Video GeForce4 Ti 4200 128MB
DVD-R IO DATA DVR-ABP4 (x4 write)
・Pentium 4 とDDRメモリの速さに感動したことが昨日のことのように思い出される。ちなみに、PalmOS搭載のVisor, PowerMacG4 Cube, ThinkPad X20, s30なども使っていた記憶がある。
・ヲヤヂは数年間浜松に暮らしたことがあり、いつかはホンダのクルマを買おうと思っていたものだ。
・そのホンダの発展には、技術の本田宗一郎と経営の藤沢武夫の絶妙のコンビネーションが必要であったことが、本書を読むととてもよくわかる。技術者と経営者のコンビネーションといえば、ソニーの井深大と盛田昭夫が真っ先に思い浮かぶ。そんなコンビがホンダにもあったのだ。
・他社のモノマネを嫌い、独自のモノづくりに邁進する姿は、なんともカッコいいではないか。
・翻訳版は、『世界で一番美しい元素図鑑』というタイトルがついているが、原著のタイトルには「世界で一番美しい」というロマンチックな文言はない。直訳すれば「宇宙に存在する既知原子の視覚的探求」と、かなりハードな雰囲気のあるタイトルだ。 米国と日本の文化の違いを端的に表していると思う。 Amazon.co.jpで買ったが、翻訳版よりも安価だった。
・ほとんどあらゆる元素について、それが含まれているモノの写真を盛り込んだ、見応えのある図鑑だ。さすがに、超ウラン元素のようなモノは、現物の写真がないのだけれども。
・1日1元素読むだけでも、長期間楽しめるお得な本でもある。パッと開いたページの元素で、今日の運勢を占うのも面白そうだ。
・ナポレオンがロシア侵攻で敗退したのは、ボタンを錫で作っていたからだ……とする、なかなか興味深い逸話から始まる。真偽のほどは定かではないが、それを検証するのは本書の仕事ではない。
・本書を読むと、タイトルにあるとおり、世界史を変えた、人類の生き方を変えた様々な化学物質の素顔が分かる。しっかり化学式や構造式も掲載されているので、化学物質の性質と構造が密接に結びついていることがはっきりとわかる。横書きだったら完璧だったのにな。
・「『職場は宇宙』のSF」といえば、名著『プラネテス』があるわけだが、本書も同じような雰囲気の味わえる作品だ。本書は宇宙エレベータを保守管理するプロフェッショナル、「メンテナンスマン」(女性もいるから「マン」はまずいような気もするが)の物語だ。
・メンテナンスマンの職場は地上から3万6千キロメートル上空(宇宙だが)の静止軌道ステーションだ。小天体やデブリの衝突など宇宙特有の危険で主人公たちが絶体絶命の危機に陥ったり、テロリストが破壊工作を謀ったり、エンターテインメント小説として必要十分な事件が満載だ。ヲヤヂとしては、宇宙の職場の日常をもっとゆるく描いて欲しかった気もする。続編に期待したい。
・本書の各短編の題名は、有名なSF小説からとられている。これもなかなか趣がある。
・本書の主人公は、本を読めない特異体質ながら、物語を聴くのが好き。一方、書名にもあるビブリア古書堂の店長は、美人で図書への造詣が深い。本のことを語り始めたらとまらない。そんな二人の登場人物のバランスが絶妙だ。
・この二人がワトソン君とホームズのようなやりとりをすると、難事件が解決してしまうのだ。なんとも痛快なお話ではないですか。
・本作品の核となるのは古書店である。大学や研究所がないような田舎にはない類いの店舗である。ヲヤヂも学生の頃はよく古書店に通って、安い文庫のSF本を買い求めたものだ。価値のある希少本などは手に入れることはできなかったのだが。
・「アダムがイブを作ったのではない。イブがアダムを作り出したのである。」なんとも刺激的な文章がそこかしこに輝きを放つ。
・生命の基本形態はメスであり、オスは遺伝子撹拌のために機能するにすぎないという考え方は、ヲヤヂも理解していた。そんな認識のもとで本書を読むと、その事実が具体例を伴って鮮明に浮かび上がってくる。
・著者一流の研究者哀史も堪能できる。これを読んでも研究者になりたい人、あなたは本物です。
・超高速情報処理が可能なシステムで、超高性能な人工知能をもった住民が住む社会をシミュレーションしたら……、数学の証明が世界を滅ぼすとしたら……、とてつもなくハードな設定の中で、ハードな物語が進行する。
・こういう作品がもっと面白く感じられるようになるほど、頭が良くなりたい。
・タイトルがいい。本書によれば「ゴジラ」「ガメラ」「ガンダム」「バルキリー」…男子は濁音系を好むという。そうかもしれない。もっとも、ウインドウズは濁音を含み、マッキントシュは濁音を含まないが、ヲヤヂはマッキントッシュの方が好きだな。
・本書の中心をなすクオリアという概念は、なかなか興味深い。しかし、どこまで普遍性があるのか、少々疑問ではある。私が感じていることと、あなたが感じていることは、どれほど共通点があるのか?それをどうやって評価するのか?計測できたりするものなのか?
・「理科離れ」と言われて久しいが、これまでも多くの日本人は、科学的な思考様式に「接近」したことなどないのではないかと思う。離れる以前の問題ではないか。
・文系と理系を分離して手っ取り早く知識を吸収させようというシステムが問題の根幹にあると考えられるので、本書のような歴史的に科学技術のストーリーを読める書物がたくさんあればよい。