皆無軟体の動きを月刊でお知らせします。
ここ数年、読書の記録帳になっておりますが。
・統計的因果推論の入門書。相関関係と因果関係の区別がつかないあなたには必読の書。
・アメリカや北欧など海外での調査・研究事例がわかりやすく紹介されている。本書を読む限り、日本の研究例が少ないような気がする。日本で統計的因果推論が流行らないのはなぜだろう?
・コーヒーの植物としての系統から、豆の組織、化学的組成といった生物学的考察と、豆の焙煎や抽出方法の物理的考察が豊富に盛り込まれた本。
・日本人の世界に稀に見るコーヒー愛も垣間見え、新しい発見がたくさんある。
・10cm立方の小型衛星”CubeSat”の開発プロジェクトの進め方を、実録を織り交ぜてわかりやすく解説した本。衛星開発ばかりでなく、チームで開発するあらゆるモノづくりに適用できそうなヒントが満載だ。
・自前の小型のロケットで、自前の超小型衛星を打ち上げられるよになったら、新しい時代の幕開けになりそうだ。とはいえ、悪用する輩も出ると思うと、喜んでばかりはいられない。
・太陽嵐に伴う大規模コロナ質量放出(CME)により、地球上で通電中の大電力変圧器に異常な誘導電流が流れて全壊し、全世界規模の停電が数年間続いたら……。本書は、そんな設定のシミュレーション小説。
・読み始めてから、堺屋太一の「油断!」を思い出した。この作品は石油が中東から輸入できなくなるフィクションだったが、相当な衝撃を受けた覚えがある。本書も、電力発送電配電システムの壊滅という限定された状況設定であるにも関わらず、その社会的影響は甚大であることが分かる。
・停電した世界でも、電気工事士の仕事は無くならず、かえって忙しくなるというエピソードが面白い。本書では、太陽光発電設備などの小規模発電が活発になるという筋書きなのだ。技術力のある電気屋を大事にしよう。
・「月刊」ローダンNEOの6号。もはやほとんどローダンが登場しない。その代わり、「プシ能力」を持つミュータントたちの活躍と凄まじい過去が語られる。「ミュータントは辛いよ。」
・本書で「最初に言ったのは誰だったか知らないが」と断られた上で登場する有名な言葉がある。「たっぷり時間がありさえすれば、タイプライターをでたらめに打ち続けるサルだってシェイクスピアの全作品を余さず書くことができる」が、それだ。突然変異による進化を肯定する人からも否定する人からもよく引用される。
・本書の場合、それをコンピュータでシミュレーションした例が紹介されている。1回1回はデタラメな変化でも、より適した変化を起こしたものだけを選抜し、さらに変化させるメカニズムがあれば、意味のあるものに変わっていくことがよくわかる。
・原著は1986年に出版されている。まだまだコンピュータが手軽に使える時代ではなかったと思うが、随所にコンピュータサイエンスの知識が出てくるのに驚嘆させられる。
・占いとかUFOとかマイナスイオンとか…とかくこの世は疑似科学であふれている。これらの疑似科学を第1種から3種に分類し、その問題点と対処法を論じている。
・「科学的に正しい」という意味の限界をしっかり理解するには、それなりの科学的訓練が必要だ。覚悟したい。
・キリスト教の聖書は1冊で全巻揃うのに、なぜ仏教のお経は無限とも思える巻数があるのか? ヲヤヂは、こんな素朴な疑問を持っていたが、本書を読むと、その答えが少しわかった気がする。
・日本人の感覚では、聖書もコーランも仏教のお経も同じようにありがたいものだという思いがある。本書では、それら書物の宗教上の位置づけが微妙に異なることを明快に示してくれる。
・著者も書いていることだが、本書はあくまでも宗教入門書である。さらなる学びの世界への手引書として活用したい。
・生物は壊れながら生きている。「動的平衡」という概念は、偶然にも競争に勝った種のつながりが進化であるというダーウィンの進化論と同じように、普遍的なのではないか。
・後半では、生物学と芸術との関係が論じられている。何だか共通点が見つかると、とてもエキサイティングだ。
・料理を題材にした作品は数あれど、本書は「食料合成機」を使用することが前提のひと味も二味も違ったグルメ小説。料理人は素材にこだわるが、宇宙藻とかそういうものにこだわる所がSFだ。
・SFガジェットが多数登場する、実にSFらしいSF。深刻な部分がまるでない、ほら話を楽しもう。
・月刊ローダンneo第7号。本書では、久しぶりにローダンとブルが動く!どんどん危機的な状態になっていくような気がするぞ。
・仕事に必要な能力というと「コミュニケーション力」とか「人間力」などがよく言われる。それらの力を身につけるにはどうすればいいのか、その方法が曖昧でよくわからない。これからの教育は、もっと具体的な職業スキルを身に付けさせなくてはならないというのが、本書の主張の一つ。
・試験で高得点を取るだけの訓練をしていたのでは、仕事ができる能力は身につかない。これは当たり前のことだが、現実には検定や試験が闇雲に増殖している。
・うーむ、どうしたらいいのか。
・1981年初版の「理科系の作文技術」の「さわり」をマンガで紹介する本。本書の物語はIT系企業の新入社員と文章にうるさい上司を中心に進行する。原作となった中公新書のアカデミックな雰囲気もよかったが、本書の「お仕事マンガ」としての味わいもなかなか良い。
・とはいえ、理科系の仕事の場合、文章を書く前に、研究や開発の成果を出さなければならないので、なかなか文章作成術までは思いが到らないというところが悩ましい。
・月面都市の未来を左右する大事件の顛末。主人公は「ポーター」という、まぁ、密輸業者の女性。彼女を取り巻く人々が一癖も二癖もあって、なかなか魅力的だ。
・月面都市が経済的に成立するには、どんな産業が必要か?などと考えたとき、一つの解答が本書になるだろう。
・ヒーローとミュータントと宇宙人が大集結した。本巻で第1シーズン完結だが、物語はここから始まる。
・丸暗記とドリルによる反復練習の学習を続けると、AIが苦手とする意味理解のようなタスクが苦手な人間が出来上がる。本書は、恐るべき未来を予言する。 すでに未来ではないかもしれないが。
・AIを相棒として協働できる姿が、ヲヤヂの理想なのだが、そんな働き方のできる人材を育てるにはどうすればいいのか。なかなか重い課題である。難しい文章を漫画で表現する訓練などが、よろしいかもしれない。
・太平洋戦争がいかに無謀で無残な戦争であったかを、作戦立案者の立場ではなく、作戦を遂行する兵士の視点を重視してまとめ上げた本。
・戦争は、立派な作戦だけでは勝てない。生産、流通や医療などの要素を軽視した国による戦争は、いたずらに国民を不幸にするだけだということがよくわかる。これらの要素は、平時においても国民の幸せを実現するために必要な要素である。
・異星人の高度な技術遺産により、人類が太陽系に手軽に進出できるようになった世界で、中小企業の社員が奮闘する。肩の力を抜いて楽しめるSFとしての道具が揃っている。
・登場人物の思いと行動が一致していて、自分の役割に忠実なところが、安心して楽しめる大きな要因だろう。
・ニュートン力学、熱力学などがどのような経緯でつくられていったのか、その間違いや葛藤まで言及して説明している。
・本書を読んで強く感じることは、間違いをほどよく認める組織が、長期的には成功する。間違いの根本原理を知り、正しく恐れることが大切だ。
・人工知能搭載の恒星間宇宙船(AI探査機)が3Dプリンタで自己複製を繰り返しながら、いくつもの星系で活躍するお話。
・人工知能の元となった人物がSFオタクで、複製されるAI探査機の名前が、スタートレック由来をはじめとするSFファンなら思わずニヤリとする名前ばかり。
・物語の内容に加えて、表紙が素晴らしい。思わず表紙買いする一冊。
・地球に降り注ぐ流星を撃ち落とすために改造された「スナイパー」とその整備工の恋。クールで切ないお話。