読書の泉2024

読書の泉2024年04月号

『ブレーキング・デイ - 減速の日 - 』 アダム・オイエバンジ著/金子司訳 早川書房/ハヤカワ文庫SF

・全長25キロの世代宇宙船が、まもなく減速の日を迎える。目的の惑星に降り立つために。そんなタイミングで起きる、さまざまな事件を描く。

・何世代にもわたって宇宙船の中で暮らすことで、形づくられる社会や文化が面白い。同じ船団でも、船によって文化・風習・言葉遣いなどが微妙に異なってくる描写も素敵だ。


『地球46億年 物質大循環』 月村勝宏著 講談社/ブルーバックス

・地球を惑星規模の熱機関ととらえ、その中での化学反応を丁寧に解説している。

・巨大なシステムの挙動を小さな原子レベルの化学反応で説明できるところが素晴らしい

読書の泉2024年03月号

『おしごとそうだんセンター』 ヨシタケシンスケ著 集英社

・素敵な絵柄で、「おしごと」について考えさせられる本。とはいえ、リアルに職探しをしている人には、あんまり役に立たないかも。

・イラストは、妙にディテールが細かい部分と、物理的ににありえない部分が混在しているところが素敵。

・仕事って何?よくわかんなーいな青少年少女が読むとよろしいかも。


『息吹』 テッド・チャン著/大森望訳 早川書房/ハヤカワ文庫SF

・これこそSFと感じられる、短編・中編が収録された珠玉の一冊

・アラビアンナイト風タイムトラベルもの、意識を持った(ように感じられる)ソフトウェア・オブジェクトの取り扱い、全くの異世界で生きる人間ではない何かの話などなど、異世界でのセンスオブワンダーを堪能しましょう。


『ブッダという男』 清水 俊史 著 筑摩書房/ちくま新書

・仏教徒と思ってはいるが、葬式とか法事とかでしか実感できないのはどうかと思う、というような方は読むといいかも。

・ブッダその人の思想は、彼が生きてきた時代の在り方と分かち難く結びついてる。このことを実感できる。

・ただ、あまりにも昔のことなので、どうにも検証不可能なところが、もどかしいと感じるところ。

読書の泉2024年02月号

『考証要集』 大森洋平著 文芸春秋/文春文庫

・時代劇のセリフや動作に、その時代にはまだない形を採用してしまうと、すぐクレームが来るらしい。そんなクレームを未然に防ぐためのメモをもとに構成された本。

・雑学の宝庫のような内容だが、基本的に「メモ」なので、詳細は自分で調べた方がよろしいかと。


『世界はラテン語でできている』 ラテン語さん著 SBクリエイティブ/SB新書

・タイトルから、「この世界はラテン語でプログラミングされた仮想世界だった」…と陰謀論めいた内容を想像したが、読んでみたら、そういう無駄に衝撃的な話ではなく、色々な言葉がラテン語由来だよーと気付かされる本だった。

・e-mailの”Re:”`がラテン語の”In Re”(…について)に由来することが書いてあったので、RFC5322を見たら、本当に書いてあって、知らないことって、結構あるよな、と実感した。


『あっぱれ!日本の新発明』 ブルーバックス探検隊著/協力産業技術総合研究所 講談社/ブルーバックス

・既にEテレとか、ネットとか民放の特集番組などで取り上げられた内容だが、書籍で読むと安心感がある。あとで何回も読み返せるからだろうか。

読書の泉2024年01月号


『あなたの人生の物語』 テッド・チャン著/浅倉久志他訳 早川書房/ハヤカワ文庫SF

・「もし◯◯だったら」、「もし◯◯でなかったら」という問いから物語が紡がれるのがSFの原点だと思う。そういう意味で、本書に収録されている短編は、どれも原点に忠実なSFばかりだ。素晴らしい。


『新種発見!』 馬場友希、福田宏編著 山と渓谷社

・生物の新種の発見が、ニュースで話題になることは珍しくない。本書を読むと、「新種かもしれない」という生物を見つけてから、新種発見を認められる(「記載」というらしい)には、根気のいる作業が必要であることがわかった。


『古代世界の超技術 改訂新版』 志村史夫著 講談社/ブルーバックス

・ピラミッド、ストーンヘンジ、パルテノノン神殿、ローマン・コンクリート、メソアメリカ・アンデス文明といった、現代の技術でもなかなか実現困難な建造物の謎に迫る。

・研究者は、もっと職人(技能者、技術者)の話を聞いた方がいい、という主張は納得できる。


『チャールズ・M・シュルツと『ピーナッツ』の世界』 チャールズ・M・シュルツ美術館/ベンジャミン・L・クラーク、ナット・ガートラー著/谷川俊太郎、望月索 訳 河出書房新社

・チャールズ・M・シュルツ美術館の図録とも言える豪華な本。一人の作家がひたすら漫画を描き続けた足跡が、残された資料からはっきりとわかるのは素晴らしい。

『窓ぎわのトットちゃん』 黒柳徹子著 講談社/講談社文庫

・続編を読んだのだが、正編の内容がうろ覚えだったので、読み直した。

・トモエ学園の教育が、改めて素晴らしいと実感した。