1938民家風の一住宅

(『住宅』1938年?月号)

民家風の一住宅 絵と文 山口文象

日本文化の複雑性は私共の住宅形式の上にも、世界無比の多様性を付賦与してゐます。純和風のもの――茶室風、民家風そして御殿風と云ったものがこれに含まれます――純洋風のもの、それに加へてこれらの折衷されたものなどがあります。

そこで建築主は何時もこれらの與へられた澤山の住宅形式からどれを選ぶべきかと云ふ問題に問題に逢着しなければなりません。

茶室風の家では余りにその生活が形式化されてゐて約束が多過ぎ、おほらかな自由性に缺けるところがあります。御殿風の絢爛さは窮屈に過ぎます。そして洋式や折衷式では、生理的、精神的憩ひの上から遺憾な点が多い様です。

そこで民家的手法の上に立脚し、現代的に生活形式化された家をW氏は要求されれのでした。民家風のアトモスフェアを失はずに、しかむ凡ゆる住居的課題が合理的に處理しやうとしたのです。結果如何にしばらく措くとして初めの意圖はこヽにありました。