本データ論文は、2021年に報告した研究論文「Effects of high‑pressure treatment on the structure and function of myofibrils」の補完資料として公開されたものであり、高圧力顕微鏡を用いて取得した動画データを中心に、加圧過程で筋原線維が示す微細な構造変化と運動機能の変容を克明に提示しています。水溶液は実質的に非圧縮性であるため、40–80 MPa 程度の静水圧を印加すると、試料全体に圧力が瞬時かつ均一に伝達されます。この圧力域ではタンパク質が不可逆的に崩壊することなく、親水・疎水残基と水分子の相互作用が変化してタンパク質間結合が緩み、脱重合などの可逆的構造変化が誘起されます。本データセットでは、弛緩溶液中・Rigor溶液中での 60 MPa および 80 MPa 加圧下における筋原線維の再編成、ならびに 0.1–50 MPa の範囲で観察されるサルコメア振動の周波数変調を、7 本の高速度動画(30 fps あるいは 1 fps)として提供しています。特に、40–50 MPa という比較的低い高圧環境でもサルコメア振動が持続し、圧力解除後には元の振動パターンが迅速に回復する様子は、筋収縮機構の可塑性と圧力感受性を理解するうえで貴重な可視証拠となっています。これらの生データは、高圧バイオサイエンス領域におけるタンパク質集合体の機能制御や、圧力を利用した新規バイオプロセス開発の基盤情報として活用が期待されます。
論文情報・引用
Seine A. Shintani. Changes in the structure and function of myofibrils during pressurization using a high-pressure microscope. J-STAGE Data,12(2):139 (2021).