2023年1019

ID定例ゼミ

日時:2023年1019日()13:00-13:40
会場:オンライン(Zoom)
参加者数:6名
発表者:石田百合子

テーマ:コンストラクショニズム
文献:
平野由貴,紅林秀司(2014)コンストラクショニズムに基づく学習の過程の検討,静岡大学教育実践総合センター紀要,22,29-37

第15回で取り上げたテーマは「コンストラクショニズム」です。初等中等教育でも「総合的な学習の時間」や教科学習において、PBL(Project-based Learning)や探究的な学びを取り入れた教育実践が増えています。これらの実践において、子どもたちが目指すゴールは、①生徒が自分たちの興味・関心のあることを調査し、発表を行う、②調査した結果を踏まえ、「ものづくり」を行う、③自分たちが作ったものを誰かに使ってもらうなど、授業によってさまざまです。特に「ものづくり」を伴う実践の場合、この学習プロセスにおいて、教員はどう関わり、支援したらよいかに興味があり、このテーマを扱いました。

コンストラクショニズムは、シーモア・パパート(Seymour Papert)が確立した、子どもの考え方や学び方を研究し、子どもの学びを手助けするツール開発の基礎となる理論で、ものづくり活動を学習の中心に置き、学習者が具体的にものづくりを行う中で、学習者自身の中にも知識を構築していく二重構築構造(平野・紅林 2014)をとります。シーモア・パパートは、「レゴマインドストーム」の開発者でもあり、「レゴマインドストーム」の開発の根底には、コンストラクショニズムの理論が用いられています。しかし日本では、「レゴマインドストーム」を用いた教育実践の報告は沢山あるものの、コンストラクショニズムについて言及したものは少なく、本論文の著者は、コンストラクショニズムに基づく学習過程が具体的に示された報告がないのが原因ではないかと指摘しています。

コンストラクショニズムの学習理論の四つの特徴として、(1)具体的なものづくり活動、(2)学習者の積極的な姿勢、(3)共同作業者の存在、(4)選択性や多様性を兼ね備えた学習対象が挙げられます。(4)については、学習者の学びに対するアプローチ(ものづくりにおける問題に遭遇したときの対処法)の違いと関連しています。問題に遭遇したときに、まず計画を立ててから行動する「プランニング型」、計画を立てる前にとりあえず行動する「ブリカレッジ型」、これらの中間のアプローチをとるタイプがあり、どのタイプであっても取り組める学習対象であることが大事であるとのことでした。

参加者とのディスカッションでは、自分がプランニング型、ブリカレッジ型、中間型のうち、ブリカレッジ型を取ることが多いことに気づいたというコメントや、二重構築構造について、ものを完成させるというゴール以外にどんな到達目標を想定しているかを知りたいといった意見が挙げられました。また、IDや学習科学で取り上げられている、PBL理論との比較も面白いのではないかとのアドバイスもいただきました。

(文責:石田百合子


詳細は勉強会のレジメをご参照ください。

231019_SIG-ID定例ゼミレジュメ(石田).pdf