2022年11月15

ID定例ゼミ

日時:2022年11月15日()12:30-13:10
会場:オンライン(Zoom)
参加者数:
4
発表者:
甲斐晶子

紹介した論文:Shana K. Carpenter, StevenC. Pan & Andrew C. Butler (2022) The science of effective learning with spacing and retrieval practice. Nature Reviews Psychology 1, 496‒511.

第8回は「分散学習(spaced learning)と 検索(想起)練習(retrieval practice)の効果」についてのレビュー論文を扱いました。

分散学習とは学習機会を何度かに分けることであり、検索(想起)練習とは学習内容を記憶から取り出して使うことを指します。担当者は日本語教育に携わっており、これらの重要性を認識はしているものの最新の研究動向を追えてはおらず、知識のアップデートのため、こちらの題材を選びました。

本論文では両方略について概要、なぜ効果があるのか、何に効果があるのか、具体的にはどうすればいいのかが説明されています。後半では、それらの方略が(効果が見込まれるにもかかわらず)学習者に採用されにくい理由について分析を行い、メタ認知の観点から学習支援の方策を提案、また今後の研究指針が示されていました。

発表後の質疑応答では、最適な分散の間隔はないという点について関心が集まりました。領域や課題、学習者の検索能力や記憶保持力によって、最適な間隔や効果が異なるのは当然ですし、覚えた知識を別の文脈でも「使える」まで転移されたかについては測定する難しさもついてきます。他の要因の影響も排除しきれないため、理論の一般化を目指すよりは個々の学習者が自分にとって最適な間隔を探る経験を重ねるのがいいのかもしれません。

参加者の各領域での取り組みについても情報交換がなされ、理解がより深まりました。なお、「学習方略としては有効性が分かっていても学習者になかなか採用されない」という部分は、教育に携わる参加者全員の共感するところでありました。

(文責:甲斐晶子


詳細は勉強会のレジメをご参照ください。

221115_レジュメ(甲斐晶子).pdf