2022年5月18

ID定例ゼミ

日時:2022年5月18日(水)13:00-13:50
会場:オンライン(Zoom)
参加人数:7名

4テーマ進化心理学(Evolutionary psychology)
発表者:高橋暁子

第4回の題材は「進化心理学(Evolutionary psychology)」でした。進化心理学とは、「ヒトの脳の働き、すなわち心が進化の産物であることの認識にたった心理学」と定義されています(長谷川 2001)。進化心理学を基盤とした教育工学研究として、今回は「認知的負荷理論と教育工学」(Sweller 2020)をレビューしました。本論文は、認知的負荷理論を進化心理学の視点でとらえなおしたうえで、認知的負荷理論に基づく適切なeラーニングのガイダンスを提供することを目的としています。本論文によると、知識は「生物学的一次情報(人間の生存にとって重要で、無意識に獲得される情報)」と「生物学的二次情報(明確な指導や学習者の意識的な努力が必要)」に分割でき、認知的負荷理論はドメイン固有の二次情報の習得に重点を置いた理論であるとのことでした。論文後半では、認知的負荷理論によって生成された7つの原則の紹介がありました。たとえば、「内容に関係のない不要な情報を排除するとよい(冗長性効果)」などです。これらの原則は、メディア教育研究の知見として知られているものが多かったのですが、進化心理学の視点で再定義しているところが、本論文の特徴ではないかと思いました。ディスカッションでは「本論文だと問題解決能力なども一次情報に位置付けられているが、教育できないということか?」「問題解決能力のスコープやレベルが、現代と狩猟採集時代とでは異なるのでは?」など、興味深い議論ができました。

<参考文献>

長谷川眞理子(2001)進化心理学の展望.科学哲学34-2,11-23

John Sweller, Cognitive load theory and educational technology. Educational Technology Research and Development volume 68, pages1–16 (2020)

(文責:高橋暁子)

詳細は勉強会のレジメをご参照ください。

20220518_レジュメ(高橋暁子).pdf