令和6年度 課題発見講座 E-DOT(2年5組での取組) 番外 第9回
令和6年度 課題発見講座 E-DOT(2年5組での取組) 番外 第9回
目標設定と論の立て方(2年5組の取組より)
探究、課題研究では、「決まった正解はない」「正解のない問題に取り組む」などと言われます。課題、目標設定も無数にあると言われます。目標設定や学習の進め方について、それぞれ専門の先生方や実践をされている学校もあります。ここでは、2年5組生徒を指導するにあたって注意していることの一端について提示します。
1 望文生義(誤解)を避ける。
探究、課題研究における課題、目標設定、「決まった正解はない」「正解のない問題に取り組む」「正解は、無数にある」などは、課題、目標設定や正解が無数にあることを意味しています。しかし課題、目標設定や正解が無数にあることと論の立て方を混同してはいけないと考えます。野球のピッチングに例えます。課題、目標設定や正解が無数にあることは、キャッチャーを何人でも何処にでも置いてよいということに例えられます。しかし、課題を決め目標を設定し自分の仮説を立てたならそこに向かってボールを投げなければいけません。
他に例えると、犬を調べると決めたにもかかわらず、猫を調べたのでは何にもなりません。そこは、指導者が注意深く観察して、違う方向に行っていたら指摘して、生徒自身に気付かせ考えさせる必要があります。「決まった正解はない」「正解のない問題に取り組む」という言葉に惑わされて自由に課題、目標設定をすることと、目標に向かって筋の通った論(文章)を書くことを混同してはいけないと考えます。
2 先を見通す。
課題設定PDCAサイクル(Plan(計画)、Do(実施・実行)、Check(点検・評価)、Action(処置・改善)を行うにあたっても行き当たりばったりになってはいけません。生徒が、小論(文章)を書く時にいきなり原稿用紙に書き始める生徒がいます。これは、ピッチングに例えると、キャッチャーを見ずにボールを投げているのと同じです。サッカーでいえば、ゴールを見ずにシュートを打っていることになります。きちんと先を予測して、しっかり目標を見てから動かなければいけません。
3 論の立て方(構成)について
論の立て方(構成)について、よく起・承・転・結と言われます。小論や志望理由書は、文学小説ではありません。筆者は、転は必要ないと考えます。転が必要とする立場の方の中には、異なる意見や反対意見を転として扱われますが、論旨が変わるわけではありません。従って転は、必要ないと考えます。
起・承・結の文章は起から書きますが、考える順番としては①②③と考えます。
まず結を考え目当てを付けます。ここからPDCAサイクル(Plan(計画)、Do(実施・実行)、Check(点検・評価)、Action(処置・改善)と同じ要領で材料を集めていきます。筋が通るような話ができそうであれば起③を考えれば良い訳です。
これを頭の中で行うにはある程度トレーニングが必要ですから、生徒に指導するにあたっては、項目を書き出したカードを使うか、PCで項目整理を行っても良いと思います。
3年生を本番と考えると2年生では、とにかく書いて見る、いきなり書いて上手くいかないことを体験させることも必要と考えます。いきなり書いて上手くいかなかったときにどうすれば良いか考えさせれば良いと思います。
4 具体例について
具体例をあげます。例えば看護師になりたい生徒がいるとします。ここでは看護師になることが結論ですから結①は決まりです。どうやって結にもっていくか、例えば看護師を志望した契機が何なのか、どうして看護師になろうと思ったのか、こうした材料を集めます。「自分が、病気で入院していた時に看護師さんに優しくされてうれしかった。」「家族が、病院にいって看護師さんに世話をしてもらっている姿を見て、看護師さんがかっこ良く見えた。」「小学生の時、病気のおばあちゃんを看病した時に褒められてうれしかった。」などなど材料を集めます。具体的にあればあるほど良いです。
材料が集まったら整理します。最も簡単な整理の仕方は、時系列を追うことです。小さい頃から話を進めて高校生の現在までいけば良い訳です。
最後に起をどうするかですが、最も簡単な方法は結の繰り返しです。すなわち「私は、看護師を志望しています。何故ならば~」とすれば良い訳です。「私は、看護師を志望しています。何故ならば小学生の時、病気のおばあちゃんを看病した時に褒められてうれしくなりました。以来看護師を志望するようになりました。」となるわけです。あとは紙幅の都合に応じて「どんな看護師を目指しているか。」「自分のこういうところが看護師に向いている。」などの材料を加えれば良い訳です。進学志望理由書であれば、志望校の具体的な魅力を書けば良いです。原稿用紙何十枚であれば、節を立てて起・承・結を繰り返せば良い訳です。
5 まとめ
課題、目標設定をしたら目標に向かって筋の通った論(文章)を書くこと。考える順番は、結→承→起であること。起が難しいのであれば、結→承→結で良いこと。
課題研究で、PDCAサイクル(Plan(計画)、Do(実施・実行)、Check(点検・評価)、Action(処置・改善)を行い。それを論立てして文章化する。このトレーニングを2年生から行えば、3年生では、中身の充実や材料集めに時間をかけることができます。
2年生では、決して上手く書く必要はありません。こうしたPDCAサイクルや論立てを覚えることが重要です。