令和6年度 課題発見講座 E-DOT(2年5組での取り組み) 第3回 番外 カホン編
令和6年度 課題発見講座 E-DOT(2年5組での取り組み) 第3回 番外 カホン編
(写真1)
台湾の高校が、本校に来ることになりました。その際に台湾の学校から「日本の高校生の前でカホン(写真1)を演奏したい。戸手高校にありますか。」と問い合わせがありました。本校吹奏楽部に問い合わせましたが、ありませんでした。困っていたところ2年5組吹奏楽部(打楽器パート)の生徒が「カホンは、作ることができます。」と言ってきました。これも勉強、これも課題解決の一つと取り組むことにしました。
1
ここでの課題とは、来校前日までにカホンを完成させること。条件としては、本校木工室(写真2)及び音楽室にある廃材(写真3)を使うこと。
2
それぞれの製作工程で、PDCAサイクル(Plan(計画)、Do(実施・実行)、Check(点検・評価)、Act(処置・改善)を行います。
①行程、線引
製図、線を引く。縦50㎝×横30㎝を2枚、縦30㎝×横30㎝2枚の板を作ります。不定形の板から使用する形が切り出せるようにカット線を引きます。直線を引くには、数学、図形の知識が必要になります。この時、活躍するのが三角定規です(写真4)。垂直を取りながら三点固定で直線を引きます。
②行程、切り出し
直線は、電動のこぎりで切り出します(写真7)。問題は、まるをどう切るかです。糸鋸、糸のこ盤も木工カッターもありません。生徒が試行錯誤の結果考案したのが、電動ドリルを使用することです。電動ドリルで小さな穴を目標の円に沿って穴をあけます。それを繰り返すと(写真8)になりました。最後に電動ドリルの歯を斜めにしてまるを切り出しました(写真9)。
③行程、釘穴あけ
釘を打つ位置に穴をあけるポイントを書きます。受ける板の厚みは約1㎝です。厚みの中心、打つ板では端から5mmに線を引きます。また何㎝間隔に釘を打つか。50㎝、30㎝の倍数、数学です(写真11)。
(写真11)
(写真12)
④行程、組み立て
組み立てます。単なる物置であれば、釘を打つだけで良いですが、物置と楽器の違いは?という問いに生徒は、「音が漏れたら困る。音が変な反響してビビると困る。」と言いました。「ではどうする。」と問うと「綺麗につなぎたい。」とのことでした。結果、接合部は木工ボンドで埋めました(写真13)。さらにカホンの音に反響を付けるパーツを装着します。2枚の板の同じ部分に釘が打てるように計算してポイントを打ちます。位置が決まったら釘を打ちます。(写真14)(写真15)
⑤行程、仕上げ
カホンは、演奏者が上に座って演奏します。演奏者が、痛くないように接合部などの角をサンドペーパーで面取りします。傷隠しに黒スプレーを吹きます(写真16)。さらに生徒の発案で足を付けます。カホンを床にじかに置くと雑音が出る可能性があるのだそうです。素材が、もっと良いものであれば振動しないのですが、今回は木工室にあったベニヤを使用しているので足をつけるという工夫をしました。(写真17)
⑥行程、完成
全て組み立てスプレーを吹いて完成しました。予備にもう一台作りました。ナチュラルカラーのほうには、装飾として上に花のレリーフを配置しました。
カホン製作を通じて生徒は、それぞれの行程でどうすれば良いかPDCAサイクル(Plan(計画)、Do(実施・実行)、Check(点検・評価)、Act(処置・改善))を行いました。実物を扱う思考トレーニングの利点は、その場で結果が出ること、目に見えることです。
3 PDCAサイクルトレーニングにおいて実物を使用する利点
①結果をすぐに見ることができる。
②自分の五感を使用している。生徒自身が実感できる。
③他者に形あるものを提示できる。
⑤他者に説明するとき説得力がある。
4 使用
(実際にカホンを演奏する台湾の生徒)
交流当日、台湾の生徒は黒いカホンを選択しました。黒いカホンの方が使いやすく音が良かったそうです。ナチュラルカラーの方は、座面の装飾が扱いにくかったそうです。やはり道具を作成するときは、使用者の視点が欠かせないことを学びました。