第二句集『砂の輝き』以降の「運河」(浮標集;茨木和生選;2014年4月号~2014年12月号まで)掲載作を整理しました。
第67巻第4号(平成26年4月号)
目覚ましはかけずに眠る宝船
六人といふは賑やか屠蘇祝ふ
東の空濁りなき大旦
夜明けまで考へてゐる冬の雨
鮟鱇や面白しとは褒め言葉
第67巻第5号(平成26年5月号)
明日食ぶるシチューを煮込む日短
蕗の薹見つかるまでといふ散歩
潮の濃く匂ふ貝殻久女の忌
洗ひ場の魚が元気春隣
喪服着ていよいよ寒さ増しにけり
第67巻第6号(平成26年6月号)
つちふるや東京駅に待ち合はす
菜の花や海を臨める大学の
西行忌吉野の方に月ありて
ひらめきを形にすればクロッカス
結局は許してしまふ桜餅
第67巻第7号(平成26年7月号)
永き日の研究室に仮眠とる
姉と色違ひを選ぶ花衣
本を読む一日とする春の風邪
白魚の触れ合ふたびの光かな
花盛り大阪市立大学の
第67巻第8号(平成26年8月号)
葉桜や間近に天守閣仰ぎ
少し早めの母の日を祝ひけり
スーツ着て船遊びとは大胆と
校庭に寝転ぶ人もゐる薄暑
研究室用の夏蒲団を買へり
第67巻第9号(平成26年9月号)
靑嵐日差の動く能舞台
磐座の向かうより来る滝の音
月涼し最終電車待ちをれば
第67巻第10号(平成26年10月号)
ほうたるの思ひつめたる光かな
光生む遊びや水遊びといふは
同僚の出版祝ふ夏料理
線香花火日没を待ち切れず
山椒魚喜怒哀楽を失へり
第67巻第11号(平成26年11月号)
一日がかり研究室の虫干は
先生の若き日語る夏帽子
謹呈札香水を含ませてある
体育会系部員総出のの草むしり
船着場から夕焼を見てゐたり
第67巻第12号(平成26年12月号)
仏壇の干菓子てかてか秋灯
爽やかや一生懸命取り組めば
横顔のみなやはらかき良夜かな
秋高の思ひを握りしめにけり
栗ご飯しつかり食べろと母の言ふ