第1句集『夏帽子』2010年刊(選、序文:茨木和生)
東京のさくら吉野のさくらかな
夜濯の紅き洗濯ばさみかな
学会の夜のホテルに泳ぎけり
正論を貫き通す涼しさよ
金魚にもある溜息のやうなもの
学問の自由泰山木の花
図書館のいつもの席に秋の暮
短日の三時四時五時六時かな
凍星やいづれ師恩に応へむと
クリスマスツリーの電気消す係
第2句集『砂の輝き』2014年刊(選、帯文:茨木和生、栞文:井上弘美)
水色のボールペン買ふ薄暑かな
中心に磐座のある虫の闇
髪を切るのは風の盆終へてから
月の美しさがわかる人とゐる
小春日や湖を買ふ夢を見て
羅を着て朝までを語りけり
人間も山椒魚も愉快なり
モネの色遣ひと思ふ夕焼雲
明け方の砂の輝き磯遊
女ざかり働きざかり晶子の忌
*『砂の輝き』(2014年;2013年春までの作を収録)以降の発表作は、整理してこのサイトに掲載しています。