真菌にも細胞膜が存在します。
真菌に存在する細胞膜の成分は、主にエルゴステロールと呼ばれる物質で構成されています。
ポリエン系抗真菌薬と呼ばれる種類の薬は、真菌のエルゴステロールに結合する性質を有しています。
ヒトの細胞にはエルゴステロールが存在しないため、エルゴステロールの働きを阻害してしまえば、真菌だけに対して毒性を示すことができます。
ポリエン系抗真菌薬は、真菌の細胞膜に穴をあけ、破壊します。
そのため、真菌細胞内の物質が外に漏出するため、真菌を殺すことができます。
真菌症を治療するために用いられる薬として、アムホテリシンB(商品名:ファンギゾン)があります。
アムホテリシンBはポリエン系抗真菌薬と呼ばれる種類の薬になります。
アムホテリシンBは、真菌の細胞膜を構成するエルゴステロールに結合して、細胞膜を破壊し、真菌を殺菌します。
主にカンジダ症の治療に多用される薬ですが、内臓など体の奥深くに感染が起こる深在性真菌症にも強力な作用を示します。
深在性真菌症の治療薬としては、最も古い薬剤ですが、現在もなお最も優れた治療効果を持つ薬剤です。
このような特徴により、経口投与によって消化管の真菌症を治療したり、注射によって全身に発症している真菌症を改善させたりする薬がアムホテリシンB(商品名:ファンギゾン)です。
また、アムホテリシンBのみが有効と考えられる真菌種も幾つかあります。
アムホテリシンBの長所と短所
幅広い真菌に対して高い効果を示す薬ですが、腸からの吸収が悪いという特徴があります。
そのため、経口投与(口からの服用)によって、全身に感染している真菌症を治療することはできません。
この場合は注射による投与を行います。
経口投与によってアムホテリシンB(商品名:ファンギゾン)を使用する場合、腸からの吸収が関係ない消化管での真菌感染症を治療するときに使用されます。
例えば、「消化管におけるカンジダ異常増殖」等の治療に使われます。
その場合は、シロップ剤として服用します。
腸から吸収されないためか、経口投与による副作用は軽微です。
また、連続で経口投与しても薬の蓄積はありません。
リポソームアムホテリシンB
アムホテリシンBは、副作用が強烈である事でも有名です。
その為、充分な投与量や投与期間に至る前に辞めてしまうことも多く、その結果満足出来る治療効果が得られない場合もあります。
アムホテリシンBにはシロップの剤型もありますが、腸管からの吸収が殆どないため、その有用性や適応も限定されたものです。
アムホテリシンB をリポソーム製剤化し、毒性を大きく軽減し、同時に病巣内への移行性も高められた事によってその有効性を大いに高めると期待されている薬に、リポソームアムホテリシンBがあります。
ただし、軽減されたとは言っても、アムホテリシンB 特有の腎毒性や高カリウム血症、発熱などの副作用にはやはり注意が必要です。
欧米ではかなり以前から臨床応用されており、好中球減少時の発熱に対するエンピリック・セラピーとしての適応が注目されます。