腟外陰部カンジダ症は、『ちつがいいんぶかんじだしょう』と、読みます。
女性の場合、膣と外陰部の炎症を合併することが多く、婦人科領域の感染症の中では、比較的よく見られる疾患です。
一般的には、性器カンジダ症とか、膣カンジダ症と呼ばれます。
膣カンジダとは、カンジダ菌という真菌(カビの仲間)によって起こる膣炎です。
カンジダ菌は男女に関係なく、皮膚や口の中や腸にも存在する常在菌の一種です。
膣内の菌バランスが崩れてカンジダ菌が繁殖すると、膣カンジダを発症します。
膣カンジダにかかると、外陰部のかゆみとおりものの見た目や量に変化がおこり、時に外陰部の熱感・痛み・腫脹感も伴います。
おりものの性状は、膣カンジダ特有のおかゆ(カッテージチーズ)状や白く濁った酒かす状になります。
性器カンジダ症の詳細 & 性器カンジダ症の画像写真~治療しないで放置すると・・・
英語では、Vulvovaginal Candidiasis=VVCと書きます。
性器カンジダ症の治し方と使用薬を、日本性感染症学会及び、米国感染症学会のガイドラインを参照してご紹介します。
治療は、腟錠、軟膏、クリームを使用し、非妊時に準じて治療を行うが、経口錠は避ける。
治療中の注意事項
局所(病変部位)の清潔と安静を保つ
刺激性のある石鹸を使用しない
通気性の良い下着を使う
急性期の性交渉を避ける
治療薬の種類
外用薬
膣錠(ちつじょう)
膣座剤(ちつざざい)
軟膏(なんこう)
クリーム
内服薬
経口錠(けいこうじょう・飲み薬)
治癒の判定
痒みや異常帯下等の症状が消失した時点で治癒をします。
カンジダが完全に消滅した場合だけでなく、依然、少数が存在している場合も含めます。
治療薬には、イミダゾール系の抗菌薬を使います。
合併症がなく急性の外陰膣カンジダ症の場合
再発を繰り返す外陰膣カンジダ症の場合
妊娠中の外陰膣カンジダ症の場合
つまり、初めてカンジダ症にかかり、その際、他に病気を併発していない場合です。
連日治療の場合
週1回治療の場合
1.連日治療の場合
膣錠、膣座剤を6日間使用し、判断します。
効果がない場合、追加治療を検討します。
膣洗浄後、膣錠あるいは膣座剤を膣深部に挿入します。
治療薬には、イミダゾール系の抗菌薬を使います。
「アゾール系のトリアゾール*には、注射・内服のジフルカン(商品名)と
内服のイトリゾール(商品名)のみで、外用薬は全てイミダゾールです。」
使用の前には、入浴するか、ぬるま湯で患部を清潔に洗って下さい。
手指を石けんできれいに洗い、腟錠を指先で腟内の最も深いところに挿入してください。
挿入後、患部に触れた手指は石けんでよく洗ってください。
1日1回(できれば就寝前)、1錠を腟深部に挿入します。
6日間毎日続けて使用してください。
ただし、3日間使用しても症状の改善がみられないか、
6日間使用しても症状が消失しない場合は、医師の診療を受けて下さい。
クロトリマゾール(エンペシド膣錠)100mg ⇒1日1錠x6日間
硝酸ミコナゾール(フロリード膣座剤)100mg ⇒1日1錠x6日間
硝酸イコナゾール(バリナスチンV膣錠)100mg ⇒1日1錠x6日間
硝酸オキシコナゾール(オキナゾール膣錠)100mg ⇒1日1錠x6日間
2.週1回治療の場合
硝酸イコナゾール(バリナスチンV膣錠)300mg ⇒2錠x1日間
硝酸オキシコナゾール(オキナゾール膣錠)600mg ⇒1錠x1日間
連日治療のほうがやや優れています。
局所塗布剤の使用法・用量
連日治療・週1回治療のどちらの時も、患部に塗ります。
クロトリマゾール10mg/1g(エンペシドクリーム1%)⇒1日2~3回
硝酸ミコナゾール10mg/1g(フロリードクリーム1%)⇒1日2~3回
硝酸エコナゾール10mg/1g(パラベールクリーム1%)⇒1日2~3回
硝酸オキシコナゾール10mg/1g(オキナゾールクリーム1%)⇒1日2~3回
再発性のVVC(腟外陰部カンジダ症)とは、1年以内に症候性VVCが4回以上発生した場合と定義します。
再発を繰り返している場合は、何が原因なのか?を特定しなければなりません。
再発の原因として考えられること
抗生物質の使用
ステロイド剤の使用
エストロゲン・ゲスタゲン合剤の使用
ニトロイミダゾール剤
制癌剤
糖尿病
性行為による感染
免疫抑制剤の使用
不適切な下着
洗浄剤の使用
まずは、再発の問題となるものの除去に努め、その後に、治療を始めます。
~米国感染症学会のガイドライン~
再発性VVCには、初期治療として外用または経口アゾール系薬を10〜14日間投与した後
フルコナゾールを週1回150 mgの用量で6ヵ月間の投与を推奨する
フルコナゾール~ジフルカン(ダイフルカン)とジェネリック医薬品
再発タイプの治療にフルコナゾールやイトラコナゾールでの治癒例が多数ある。
最近の経口剤による治療
外国においては、外陰・腟カンジダ症を再発を繰り返す例に対して、フルコナゾール、イトラコナゾールの経口錠による治療例が、多数報告されている。
しかし、日本では承認されていない。
また、フルコナゾール、イトラコナゾールは、妊婦では避けるべきであり、他剤との相互作用がある点にも注意する必要がある。
なお、他科領域においては、これら経口剤が普及するにつれ耐性菌出現の問題が生じている。
妊娠後36週以降、つまり、分娩が近づいている状態で、多量のカンジダ菌が見つかった場合は、胎児への産道感染、早産、未熟児出産の危険が増えます。
腟内にカンジダが陽性で、搔痒感、帯下の増量など症状があるときは治療を行う。
週以降で、すなわち分ṯが近づいている状況で、腟内に多量のカンジダを認めるときには、分ṯ時の産道感染を予防する意味で治療する。
カンジダによる羊水内感染や、産道感染により新生児の口腔粘膜が侵されると、鵞口ḫとなるが、これは致命的ではない。
早産未熟児のṯ出が予想されるときで、カンジダを妊婦腟内に認めるときには、特に治療に心がける。
ガイドライン 性器カンジダ症
抗生剤を使用する機会が多いので、カンジダによる羊水内感染や産道感染が起きる可能性が高いからである。
未満の早産未熟児では、感染に対する抵抗力が弱いので、児はカンジダによる重篤な全身感染症となることもある。
どうして膣カンジダになるのですか?
⇒ 膣カンジダは、菌バランスが崩れてしまったときや、抵抗力が弱まったときに症状を発症する疾患です。
抗生物質の使用、妊娠や糖尿病等による免疫力の低下、下着によるムレなどが原因として挙げられます。また最近では、過度のストレスや疲労、生活習慣の乱れなどからくる体の抵抗力の低下も要因のひとつとも言われています。
どのように治療するのですか?
⇒ 膣カンジダが疑われる場合、婦人科または産婦人科等を受診します。
検査の内容は、膣および外陰部の症状を調べ、膣鏡を入れておりもの性状を検査します。
検査の結果、膣カンジダと診断された場合には抗真菌薬の膣錠や膣坐剤、クリーム剤で治療します。
なぜ再発した人にしか使用できないのですか?
⇒ 初めて膣カンジダが疑われた場合、その症状が膣カンジダなのかどうか自己判断が出来ないため、婦人科または産婦人科等による確定診断が必要です。本剤を使用せず、必ず医師の診察を受けてください。なお、2度目からは同様の症状が出ますので、すぐに自己診断できると思われます。
どのくらいで効果が現れるのですか?
⇒ おりものやかゆみ等の自覚症状は、通常2~3日で軽快するとされています。症状が改善しても、菌が膣内に残っている場合が多いので、根気よく徹底した治療が必要となります。症状が改善したからといって治療を中断せず、症状がなくなっても6日間使用されることをお勧めします。
また6日間使用しても症状がよくならない場合は、他の病気がかくれている可能性がありますので、自己判断で使用を継続せず、医師の診察を受けてください。
膣錠を使用した翌日、薬が崩れたようなものが、おりものと一緒に出てきました。使用を続けてもいいですか?
⇒ 続けて大丈夫です。 膣錠は内服薬のように体内に吸収されて効果を発揮するのではなく、膣内でカンジダ菌に直接作用し、膣カンジダを治療します。膣錠が溶け崩れ、効果を発揮した後、おりものとともに体外に排泄されたものだと思われますので、心配いりません。なお膣錠は、膣内の最も深いところに正しく挿入してください。
膣錠、膣坐剤、クリーム剤は生理中でも使用できますか?
⇒ 生理中や治療中に生理になった場合は薬が流れ出てしまう可能性がありますので、使用しないでください。
糖尿病の場合は、なぜ使用してはいけないのですか?
⇒ 一般的に糖尿病は、免疫力を低下させるため、膣カンジダを頻繁に繰り返す可能性や、複合感染の可能性も考えられます。医師の治療を受けられることをお勧めします。
60歳以上は、なぜ使ってはいけないのですか?
⇒ 60歳以上の方は、体力や免疫力が低下している人が多く、頻繁に症状を繰り返したり、複合感染する場合も多くなります。また思わぬ重篤な疾病が隠れている可能性も考えられますので、医師の治療を受けてください。
授乳していますが、使用できますか?
⇒ 授乳婦及び乳児に影響を与えた報告はなく、通常膣粘膜からの薬の吸収はほとんどありませんが、傷等が患部にある場合は吸収されることも考えられます。念のために、医師又は薬剤師に相談してください。
錠剤又は膣坐剤とクリーム剤がありますが、併用してもいいですか?
⇒ おりもの等の膣症状がなく外陰部の発疹を伴うかゆみが現れた場合は、外陰部でカンジダ菌が増殖している可能性がありますので、クリーム剤をご使用ください。
この場合、クリーム剤単独でも治療可能ですが、膣内にも原因菌が増殖している可能性があるため、膣錠又は膣坐剤との併用をお勧めします。
膣錠(膣坐剤)を使用していますが、かゆみがひどいので、外陰部にステロイド剤やかゆみ止めクリームを併用してもいいですか?
⇒ 外陰部にカンジタ治療薬以外の外皮用薬を使用すると、カンジダ症状を悪化させたり、治療を遅らせる可能性がありますので、使用しないでください。
治療には「オキナゾール」などの腟錠が基本となり、外陰のカンジダに対しては「ニゾラール」などの外用剤を併用します。
腟錠は600mgの1回投与のものと100mgの7回投与のものがあります。
前者では1度挿入すると1週間効果があるため、便利です。
外用剤、塗り薬ですが、抗真菌剤であればどの薬でもほとんど効果があります。
真菌にはあまり薬剤耐性がありません。
水虫(白癬菌)に対するものと同じです。
ニゾラールの優れている点は、抗真菌の薬効成分が1日1回で済むこと、これは1日2回塗らなければならないのと比べるとはるかに使いやすいです。また薬効成分以外の基材にかゆみを抑える成分が含まれていることです。これらの利点によって、使っている患者さんからの評判もいいと思いますし、薬のコンプライアンス(受け入れやすさ、使いやすさ)がとても良いと思います。かゆみがあるときには1日1回以上使っても差し支えありません。
さて、ほとんど9割くらいの方はこの治療法、腟錠1回挿入、外用剤1週間継続で完治しますが、1回の治療では治りきらない、完全にすっきりしないこともあります。この場合、だめ押しでもう一度同じ方法を行ないます。
女性
自覚症状は、外陰や腟の搔痒感と帯下の増量であるが、ときに外陰や腟のḐ熱感、痛み、性交痛、排尿障害を訴える。
他覚症状としては、外陰部において、軽度の浮腫、軽度の発赤、白色帯下の付着、搔痒のためのひっかき傷などが認められ、腟において、酒粕状、粥状、ヨーグルト状の白色腟内容がみられ、これは腟壁、頸部に塊状に付着する。
ただし、これらの症状は他の外陰・腟疾患でもみられることがあり、外陰腟カンジダ症に特異的な所見ではない。
なお、糖尿病に合併した例やステロイド剤投与例などでは、腟よりも外陰部、股部の炎症が強く、湿疹様の所見を呈す。
男 性
性器にカンジダを保有していても、男性の場合は、症状を呈すことは少ない。
症状を呈する場合の多くは、包茎、糖尿病、ステロイド剤投与例、消耗性疾患例である。
主な病型は亀頭炎であり、自覚的には搔痒感、違和感を訴える。まれに尿道炎を起こすことがある。他覚的には、冠状溝周辺、亀頭に発赤、紅色丘疹、小水疱、びらん、浸軟、白苔をみる。
局所への軟膏、クリームの塗布
再発で多いのは、包茎、糖尿病、ステロイド剤使用が誘因している。
自己腸管内のカンジダ除菌
腟錠、腟坐薬などを用いた治療により、腟内カンジダが一時消失しても、自己腸管に存在するカンジダが外陰部を経て腟内へ侵入するという経路により、新たに腟に感染することが再発の原因であるという点を重視する説がある。
これに関しては、肯定的意見、否定的意見など種々の報告があるが、再発を繰り返す例においては、試行するのも一つの方法である。
これには、アムホテリシン の経口剤が使用される。
アムホテリシン (ハリゾン錠)
なお、本剤は消化管より吸収されないので、腟や外陰皮膚に薬剤は移行せず、腟や外陰皮膚に存在するカンジダに対する効果はないとされる。